| アスランが艦内を歩いていると銃声が聞こえる。 向かってみると的に向かってレイとルナマリア。そしてオペレータの子が射撃の練習をしていた。 訓練規定だ。 懐かしく思い、思わず足を踏み入れ、眺める。 振り返ったルナマリアがアスランに気づく。 「訓練規定か」 アスランの問いに「ええ、どうせなら外のほうが気持ちいいって」と肯定した。 「でも、調子悪いわ」と肩を竦ませるルナマリアにアスランは微笑む。 そしてそのまま眺め続けているアスランをルナマリアが誘った。 アスランが断ったが、 「本当は私たちみんな、あなたのことを良く知っているわ」 と続ける。 「元ザフトレッド。クルーゼ隊。戦争中盤では最強と言われたストライクを撃ち、そのあと、国防委員会直属特務隊FAITH所属。ジャスティスのパイロットの、アスラン・ザラでしょ?」 自信満々にそういわれた。 アスランは目を伏せる。 「お父さんのことは知りませんけど。その人は、私たちの間じゃヤキンデューエ戦のことも含めて英雄だわ。シルバーレイと並んでね」 「ええ?ああ、いや」 「けど、シルバーレイってもっとこう。孤高の人って感じかと思ってた。近寄りがたいとか、そういう感じ。けど、全然そんなの感じさせないの。不思議な人ですよね」 ルナマリアの言葉にアスランは思わず噴出す。 「そう、かも知れないな。人を平気で蹴っ飛ばす。ないことないこと言いふらすと宣言してみたり。どちらかといえば、面白いんじゃないか」 そう言ってアスランは目を細める。 シルバーレイと呼ばれても、そう呼ばれる前からの彼女と全然変わらない。 ユニウスセブンでの戦闘時には彼女の動きや判断に戦慄を覚えたりもしたが、イザークと結婚した後だというのになんら変わった様子はなかった。 「射撃の腕前も、かなりのものと聞いてますけど?」 そう言ってルナマリアが近づき、拳銃を差し出す。アスランが躊躇っていると 「お手本。実は私、あんまり上手くないんです」 と続けた。 アスランは小さく笑い、それを受け取った。 そして、的に向かって銃を撃つ。 次々に出てくる的の真ん中に当てるアスランにルナマリアは感嘆の声を上げる。同じ銃を撃っているのに、なぜ?と。 「銃のせいじゃない。君はトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖がある。だから、着弾が散ってしまうんだ」 そう説明してカガリの視線に気づき、 「こんなことばかり得意でもどうしようもないけどな。でも、射撃だったらのほうが腕はいい。彼女に指導をしてもらったらどうだ?ただ、本人は腕が落ちたって嘆いたいたけどな」 とルナマリアに銃を返す。 「そんなこと、ありませんよ。射撃は敵から自分や仲間を守るのには必要です」 ルナマリアの言葉に演習場を出ようとしたアスランは足を止める。 「敵って、誰だよ...」 そう言ってアスランは再び歩き出す。 が、入り口に居たシンに「ミネルバは、オーブに向かうそうですね」と声を掛けられて足を止めた。 「あなたもまた、戻るんですか。オーブへ」 「ああ」 「何でです?そこで、何をしているんです。あなたは」 アスランはその問いに答えることなく足を進めて演習場を後にした。 は目を覚ますと物凄いことになっている自分に溜息を吐いた。 「も、もう一度シャワーを浴びたら何とかなるかな...」 鏡を見ながらそう呟き、再びシャワーを浴びてブローをして演習場へと向かった。 演習場の少し手前でアスランに会う。 「あれ、カガリさんは?」 「ああ、今行くところだ」 「...気にしないことよ」 がポンとアスランの肩を叩いた。 「」 呼び止められて振り返る。 「オレは、何をしているんだ...?」 突然の問いには目を丸くした。 だが、アスランの質問に苦笑しながら答える。 「守りたい人が居て。だから、その傍に居るんでしょう?違う?」 「だが、オレにできることは本当に、少ない」 そう言って俯くアスランには溜息を吐いた。 「どれだけ欲張りなの。出来ることがあるならそれで良いじゃない。確かに、あのユニウスセブンを落としたのは一部のコーディネーターだけど、コーディネーターはコーディネーターよ。できるだけのことをしたから、ってのは言い訳にもならない。それも分かる。けど、そうやって情勢に振り回されていたらやりたいことや目指していたもの。全部見失うわよ」 の言葉にアスランが顔を上げる。 「アスランは、昔から頭で理解してから行動を起こそうとする。だから、きっと色々苦しんでるのよ。周りがなんて言っても別に良いじゃない。私なんて、敵機のコックピット狙わないのをイザークに散々怒鳴り散らされたわよ。けど、今でもそれは変えない。それが、私だもの。というか、今回のは以前の私に輪を掛けていたんだけどね」 アスランは驚いた。が、今回のユニウスセブンの戦いを思い出してみた。 確かに、はコックピットを狙っていない。 「あなたは誰?アレックス・ディノ?上等よ。オーブの代表を守るために傍に居たいならそれで良いでしょ?何をそんなにたくさん欲しがっているの?」 「だったら。は“敵”って、何だと思う?」 「は?」 今度はさすがにも声を上げてしまう。 「オレは、射撃は得意だし、MSにも乗れる。けど、それらは敵が居てこその力だろう?」 「ほんっとうにドツボに嵌ってるわね。無駄に考えを巡らせると暗くなるだけよ」 呆れたようにが言い放つ。 「特別に教えてあげるわ。私の敵は、私の描く未来を壊そうとする人たちのことよ。私はね、アスラン。どうしようもない自己中心的な精神の下に生きているの。そして、その精神に従って行動しているのよ。私は敵が居るから戦うことを選んだんじゃないの。守りたいから戦っているの。その差は本当に分かりにくいと思うし、もしかしたら同じかも知れないわね。けど、私は私の姿勢を崩すつもりは、残念ながら皆無ね。だから、イザークがただいま壮絶に苦労しているのよ」 そう言ってウィンクをした。 イザークがを心配してハラハラしている姿ならザフトに居たときから見ている。 だから、そのイザークを思い出してアスランは噴出してしまった。 「イザークって、何で後悔してないのかしら?何度か聞いてみたの。『後悔してるでしょ?』って。そしたら『するか、バカ。あまり変なことを聞くな』っていう返事しかないのよね。これは是非とも“宇宙の七不思議”に登録してほしいわね」 今回の件でも心配させている自覚のあるがふと、そう零した。 「の言葉を借りれば。きっと、イザークの守りたい未来になくてはならないからじゃないか。の存在が」 アスランの言葉にはグッと詰まる。 何で普通に恥ずかしいことを口にして微笑んでいるんだ...? 「ま、まあ。そんな感じよ。答えになっていないと思うけど、ヒントくらいになってたら嬉しいわ」 そう言っては慌ててアスランから離れて演習場へと向かう。 「すごく、楽になったよ」 アスランは小さく笑ってそう呟き、カガリの元へと向かった。 |
桜風
09.1.26
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