Like a fairy tale 26





オーブにカガリを送り届けたミネルバは、その感謝の意を表すとして、モルゲンレーテによる装甲の修理が行われることになった。

クルーたちにも交代ではあったが休暇が与えられる。


は一度下艦した。

外の空気を吸い込む。海が近いから潮のいい香りが漂っている。

周囲を見渡し、苦笑した。

以前、アークエンジェルの行方の捜索のために潜入捜査をしたが、そのときは此処まで来れず、結局アークエンジェルの所在の確認が出来なかった。

それなのに、今はすんなり通される。

「あら、」と声が聞こえて振り返ると見知った人物が立っていた。

「ああ、こんにちは。えーと、」

“マリュー・ラミアス”という名前を言おうとしたら彼女はそれを制すように「マリア・ベルネスです」と自己紹介する。

本名とは違う名前が、今の彼女の名前だという。

「こんにちは、ベネルスさん」

そう言って差し出された手を握る。

「さっき、向こうからあなたの姿が見えたときにはびっくりしたわ。まだ、ザフトに居たのね」

「出戻りです。...そういえば、お友達はお元気ですか?えーと...」

今度こそ名前が出ない。

もしかしたら聞いていないかもしれない。

「ナタル、のことかしら?あなたが助けてくれた」

「そう!その人です。どうですか、お加減は」

はマリュー指をさして慌ててその手を引っ込める。

そんなの様子にマリューはクスクス笑い、

「ええ、元気よ。足が少し不自由だけど、それでも中々どうして。生き生きしているわ」

と応えてくれた。

その言葉には思わず口元を緩める。

「ありがとう、さん。本当に...」

「いいえ、あの時も言いましたよ」

そう言って首を振っていたがその動きを止めて何かを考え込む。

「ナタルさん、と仰いましたよね。彼女とお話させていただくことは出来ますか?私はこの艦で行動しているので、艦がここにあるうちはずっとオーブに滞在することになるのですが...たぶん、明日くらいには上陸許可が出ると思うんです」

「先に、内容を伺ってもいいかしら?」

少し警戒したような硬い声で聞かれる。

「以前、“ドミニオン”でしたか。あの船に乗られていたときのことをお聞きしたいんです。あの艦に所属していたMSパイロットのことを」

は強奪された機体と交戦しているうちに何となく過去に戦ったことのある地球軍のガンダムのことを思い出していた。

地球軍はブルーコスモスに支配されていた。だから、パイロットにコーディネーターを使っていたとは思えない。例外的に、アスランの友人のキラ・ヤマトが居たが、彼は正規の軍人ではなかったとも聞いている。

マリューは少し悩んだ。

「実は、ナタルは軍人家系の生まれで。それで、家に帰ったらまた軍に志願しなければならなくなると思われたの。それで、MIAとなるようにして彼女の生存は地球軍には知られていないものなのよね。だから、あまり公に出来ないことだし、彼女自身はずっとその軍人家系としての振る舞いや心得が染み付いているから、地球軍のことを話してくれるかは...」

軍人家系の面倒くささはも良く知っているつもりだ。

「断られたらそれで構いません。連絡を取ることは、出来ませんか?」

「そうね。彼女もあなたにお礼を言いたかったと以前零していたし。あなたの望む情報が得られるかは分からないけど、連絡を取ってみるわ。明日、正午にまた此処に出てきてくれるかしら?明日の午後に会えないか話してみるわ。早いほうが良いでしょ?」

艦内に入れないマリューにそう言われては頷き、自分の本名を口にしておいた。



「知り合いなの?」

不意に声を掛けられた。

少し驚いて振り返ると艦長だ。

「いいえ。彼女はモルゲンレーテの技術主任だと伺ったので。ちょっとマニアックに整備の話をしてみたんです」

「整備の?」

不思議そうに艦長が眉根を寄せる。

「はい。私も多少はMSの整備が出来ますし。少し熱くなってしまいました」

がMSの整備が出来るとまでは知らなかったグラディスは驚いた表情を浮かべる。

「そう」

「艦長、上陸許可って下りますかね?」

「上陸したいの?」

「揺れない地を歩きたくなりましたもので...」

「ま、明日その通達を出せると思うわ」

艦長の言葉には頷いた。




翌日、時間通りにが休暇を取る格好で待ち合わせ場所に向かう。

ルナマリアにショッピングに誘われたが、断った。誰かと行くショッピングは苦手だし、約束がある。

マリューが既に立っていた。

「すみません」

「大丈夫よ、時間前。さすが軍人さんね」

「寝過ごすことが多々ありますけど」

の言葉にマリューは目を丸くして、笑った。

「ナタルとは連絡が取れたわ。会いたいそうよ。ただ、あなたの質問に答えてくれるかまでは、約束できないわ」

「十分です。どこに行けば...」

「これが地図。このカフェで待っていて。あと、彼女には付き添いが居ると思うけど、気分を害さないでちょうだい」

マリューの言葉には頷いて頭を下げた。


はエレカで約束の場所となっているカフェテリアに向かった。

周囲を見渡すが、それらしい人は居ない。

コーヒーでも飲みながら待っていようと注文をした。

ナタルが自分を見つけられないと困るので外のオープンテラスに座ることにした。

暫くして、

・ジュールさんですか」

と声を掛けられた。

ザフトの人間はを“”というし、オーブで昔のを知る者もきっと“ジュール”では呼ばない。だから、マリューにジュールの方を彼女に教えるようにお願いしていた。

がその声に顔を向ける。

車椅子に乗っている女性とその付き添いなのか男性が立っていた。

「ナタルさんですか?」

の問いに彼女が頷く。

は立ち上がり、挨拶をしようとしたが、彼女は車椅子で、立ったまま挨拶をするのは失礼だと思い膝をついた。

その行動に2人は驚く。

・ジュールです。態々お越しいただいて、ありがとうございます」

「い、いや。立ってください。大丈夫です、慣れています」

慌ててを立つように促すナタルは本当にあたふたしていた。

後ろに立っていた男性もびっくりした表情を浮かべたままだ。

「では、失礼して」とは立ち上がった。

「私に、聞きたいことがあるとマリアから聞きました」

彼女の言葉にが頷く。

「申し訳ありませんが、車の中でお話させていただいてもよろしいですか?」

他人に聞かれないほうがいい内容だ。

それについては前以てマリューに聞いているようでナタルは快諾し、の乗ってきたエレカに3人で向かった。









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桜風
09.1.26


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