Like a fairy tale 28





皆が予想したとおり、地球側とプラント側の緊張は一気に高まった。

掌を返したような声明を連合が発表をしたのだ。

言いがかりにも近いその要求と声明にプラント側も応じる構えは全くない。

レストルームの大型モニタでその声明についての映像を見ていたは息を吐く。


―――始まる...


呆然とするクルーたちの居るレストルームを後にして、ノルンの調整へと向かった。

今度は重力下での戦いとなる。




プラントでは議会が紛糾していた。

このまま対話を続けると主張している議員と、すでに地球軍は部隊を展開しているというため、こちらも軍を動かすべきだという議員の意見が衝突している。

それを収めるために議長は声を上げるが、やはり血のバレンタインの恐怖がまだ心に残っているため、こちらも防衛策を講じるということになった。

しかし、それでも飽くまでも対話による解決に尽力するということで話をまとめる。


ジュール隊にも防衛の命令が下される。

軍本部で地球側の主張を見ていたのでこうなることは何となく予想できていた。

空母のゴンドワナで今回の陣形、作戦等の会議を開くこととなり、ディアッカと共に出頭することになった。

「地球側、ユニウスセブンの映像持ってたらしいな」

ディアッカが言う。

「...ああ」

冴えない表情のイザークが、生返事をした。

「また、始まるのかな」

独り言のようにディアッカが呟く。

イザークは隣を歩くディアッカに視線だけ向けて何も応えなかった。

その呟きは疑問ではなく、自分に覚悟を決めるように言い聞かせている類の言葉のように聞こえたから。

ブリッジで行われるブリーフィングを済ませて、イザークは宛がわれた部屋に落ち着いた。

ディアッカの先ほどの呟きが頭を回る。

有事に備えて、と自分たちは此処に居る。

が、その有事はすぐそこまで来ている。


そして、それからそう時間を置かずに艦内でアラートが響き渡った。

イザークはドックに向かう。

この戦域の指揮はゴンドワナにあるため、イザークも出撃することになっていた。





不意に胸騒ぎを覚えては目を覚まし、ノルンのコックピットに収まっていた。

そして、モニタでチャンネルを合わせてテレビ放送を探す。

『非常に重大且つ残念な事態をお伝えせねばなりません』

そんな事を言っている。

「始まった...」

は呟く。

何の感情も含んでいないその声は、ただ現状を口にしたものだった。

けれど、誰も聞いていないノルンのコックピットの中でその言葉は重々しく感じ、はそのまま天を仰いだ。

きっとジュール隊も国防の任についているはずだ。

今すぐに核を出してくるどうか分からない。

けど、プラントを『排除』するといっている地球軍がのんびり構えているとは思えない。

そして、ザフトの技術革新は目覚しいものだが、きっと地球軍の技術革新だって侮れない。

守りたいものは全て宇宙に置いてきている。今のの手が届かないところにある。それが安全だと思っていた。

この状況に物凄く、不安を覚えた。

「イザーク」

自分の呟いたその名前を耳にしては膝を抱える。

「ママ...イザークを、ノルンを守って」

祈りのその言葉は、誰の耳にも届かない。




地球軍を迎撃中のMS部隊に、ゴンドワナから通信がある。

極軌道からの地球軍の別働隊。それらは核を持っているというものだ。

「核機動隊?!極軌道からだと!!」

驚きにイザークは叫んだ。

「じゃあ、こいつらは。全て囮かよ!!」

周囲にいる多くの地球軍MSを見渡してディアッカが毒づく。

イザークを初め、戦闘を展開していたMSはエンジンを全開にして最高速度でその別働隊へ向かっていった。

プラントには、娘が居る。母が居る。そして、の父も居る。友人も、その家族も。

たくさん、たくさん人が住んで生きている。

それを撃たせるわけにはいかない。

先の戦争ではがそれを止めた。アスランと、キラが力を貸してくれた。

今、彼女たちは宇宙に居ない。

だから、自分が守らなければならないんだ。

放たれた核ミサイルに向けて砲撃を開始するが、それも届かない。

「間に合わない!何でこんなときにシルバーレイが居ないんだ!!」

誰かが通信回路を開いたままそう叫んだ。

ふざけるな。間に合わないで済むか!!

イザークは砲撃を続けながら核ミサイルを追いかける。

しかし、どんなに追いかけてもミサイルとの距離は縮まらず、それらはプラントへと迫っていく。

ディアッカは呆然とした。

が、そのとき、大きな光が宇宙を奔る。

核ミサイルがその光により撃ち落されていく。

「何だ...いったい何が...」

イザークは呆然と呟いた。何となく、ジェネシスの放つ光に似ている気がする。

ただ、今分かることはプラントに核は落とされずに済んだということだ。



息を吐きながら名前を口にする。

今、物凄く彼女をこの腕で抱きしめたい。

それが適わないイザークは拳を強く握り締めた。









Next


桜風
09.2.2


ブラウザを閉じてお戻りください