Like a fairy tale 30





あの核攻撃から地球軍は沈黙をも守っている。

開戦はしたものの、その直後にこう着状態だ。

ノルンの整備に時間を掛けていたも食堂へと向かった。

そろそろ、オーブが地球軍の圧力に耐え切れなくなる頃だ。だから、ちゃんと食事を摂って体力を作っておかなければ。

きっと此処を出るときは、周りは敵軍だらけなのだろうから。


食堂の入り口に差し掛かったところで、艦長と副長の姿が目に入り、足を止めて敬礼を向ける。

「貴女もこれから?」

艦長に声を掛けられて「はい」と答えた。

「じゃあ、一緒にどうかしら?あなたの意見も聞きたいわ」

向こうからやってくる2人の会話、というか副長の言葉で何についての会話かは何となく察することが出来ていた。

「今のところ、私は艦長と同じ意見です。が、命令とあらば出撃しますよ。これを着ている限り、どういう状況でも」

胸に手を当てて言うの言葉に副長はグッと詰まった。

「会話、聞こえていたの?」

先に食堂に来ていたルナマリア、メイリン、シンが敬礼を向けてくる。は彼女たちの上官ではないから自分に向けられたものではないけれど、無視するのも何だか気持ち悪いので返しておいた。

「副長の声だけ、聞こえていました。副長の仰ることも分からなくはないのですが。今はまだ補給を受けられるのですから受けておいたほうがいいと思います。そう長くはここに居られないでしょうし」

椅子を引きながら応える。

「あの核攻撃の第一波をかわされて、地球軍は呆然としているところなのでしょう?カーペンタリアへの攻撃隊も、包囲したまま動けないみたいじゃない」

それは、知らなかったなとは心の中で呟く。

「だからこそ、ですね」

副長の言葉をさえぎって

「今、本艦が下手に動いたら変な刺激になりかねないわ。火種になりたいの、あなた」

と艦長が言う。

は、先ほど『そう長くここには居られない』と言っていたけど、どうしてそう思うのかしら?」

「オーブは地球軍につくでしょうから。艦長もそうお考えではないのですか?副長もそう思われているから、出航をと具申されているのだと思いますが?」

その言葉にシンが椅子を蹴って立ち上がる。

「何で!オーブの理念は...!」

はゆっくりシンに顔を向ける。

「この間、あなたが言ったんでしょう?オーブは理念を守るその先で誰が死ぬのか考えたのか、と。今度は、考えるでしょうね。地球軍は宣戦布告と同時にプラントに向かって核を撃ってきた。これって滅茶苦茶よね。けど、言い換えれば、今の地球軍はそれをすることに何の抵抗もないってことだし、その姿勢をオーブに向けることも出来るって解釈できない?」

の言葉にシンは言葉をなくす。

「これが、戦争よ。アカデミーで習わなかった?」

はそう言ってシンから視線をはずした。






アスランがホテルに居ると部屋に来訪を告げるブザーが鳴り響く。

何度も鳴るブザーを聞きながらアスランはドアへと向かった。

「イザーク!」

ドアを開けた途端、目に入った人物によって締め上げられる。

混乱するアスランを気にせず彼、イザーク・ジュールは「きさまー!」と構わずアスランの胸倉を掴みながら部屋の中に入っていった。

一緒に居たディアッカものんびりとそれに続く。

「いったいこれはどういうことだ!」

「ちょっと待ておい!」

アスランは胸倉を掴んでいるイザークの腕を振りほどいて睨む。

「何だって言うんだ、いきなり!」

「それはこっちのセリフだ、アスラン!俺たちは今、無茶苦茶忙しいってのに、評議会に呼び出されて何かと思って来てみれば。貴様の護衛監視だと?」

アスランは目を丸くした。

「何でこの俺がそんな仕事のために、前線から呼び出されんにゃならん」

不服いっぱいの表情のイザークは続けてそういった。

「護衛監視...?」

アスランが呟くと

「外出を希望してんだろう、お前」

とディアッカが声を掛ける。

今更ながらディアッカの存在に気づいたアスランは彼の名前を口にした。

ディアッカは「おひさし」と返して

「けど、まあ。こんな時期だから。いっくら友好国の人間でも勝手にプラント内をウロウロ出来ないんだろう?」

と続けた。

「あ、ああ。それは、聞いている。誰か同行者がつくとは。...けど、それが、お前!?」

「そうだ!」と言って鼻を鳴らしたのはイザーク。

アスランは振り返ってディアッカを見れば、彼は笑って肩を竦ませた。


「あ、そうだ。イザーク」

思い出した。

まさか、こんなところでイザークに会えるとは思っていなかったが、丁度いい。知っているかもしれないが、一応教えておこう。

「何だ!」

アスランが何を言っても不機嫌面を崩さないイザークに内心溜息を吐きたくなる。

が、気を取り直してアスランが続けた。

、ちゃんと無事に地球に降下したぞ。怪我もないし、元気だった」

その言葉にイザークは反応した。アスランの顔をじっと眺める。

「な、何だよ」

じっと見られて居心地悪いアスランが少し怯んだ様子で言った。

「いや、そうか。...ありがとう、教えてくれて」

目を細めてイザークがそう言う。

ディアッカは体をのけぞらせた。アスランも数歩下がる。

何だ、気持ち悪いぞ!?

アスランにイザークが素直に礼を言うなんて中々ないことだ。

というか、ディアッカにはそんなものを目撃した記憶がない。

「何だ、貴様ら。その反応は!俺がアスランに礼を言ったらそんなに変か!!」

「や、まあ。何だか、な?」

とディアッカがアスランに水を向けてアスランは「え、あ...いや」と返事にならない声を出していた。

再び不機嫌面になったイザークは、鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

今度に会ったら話してみよう。こんな奇跡を目の当たりにした自慢話だ。

ディアッカはそう思いながら、2人を外に出るように促した。

そんなに時間があるわけではないのだ。









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桜風
09.2.9


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