Like a fairy tale 32





戦没者墓地に着いてかつての仲間の墓標に花を捧げて敬礼を向ける。


「...積極的自衛権の行使?」

ザフトの今の流れを聞いてアスランが呆然と呟く。

「やはり、ザフトも動くのか」

アスランの言葉に、イザークが腕を組んで俯く。

仕方がないだろう、と。核まで撃たれて動かないわけにはいかない、と。

俯くアスランにディアッカが口を開く。

「第一波攻撃のときも、迎撃に出たけどな。オレたちは。やつら、間違いなくアレでプラントを壊滅させる気だったと思うぜ」

遠くで鎮魂の鐘が鳴り響く。

俯き、言葉を失っているアスランの背に、イザークが声を掛けた。アスランはこんなところで何をやっているのか、と。

イザークの問いに、アスランは顔をそらせた。

「オーブは、どう動く!?」

「...まだ、分からない」

アスランの返答を歯がゆく思う。力があるのに、何もしない。何も出来ないところに居る彼の姿が。

「戻って来い、アスラン」

彼がオーブでその力を発揮できるなら、それでいいと思っていた。

だが、アスランは、何も出来ていない。

先ほどの『分からない』がそれを示している。

だから、イザークはそう言った。

「事情は色々あるだろうが、俺が何とかしてやる。だから、プラントに戻って来い。お前は」

イザークの言葉にも決心がつかない。

そんなアスランにイザークは自分の事を話す。

あの、自分が復隊するきっかけになった軍事法廷の事を。デュランダル議長の言葉を。

「だから、俺は今も軍服を着ている。それしか出来ないが、それでも何か出来るだろう。プラントや死んでいった仲間たち。そして、家族のために...だからお前も何かしろ。それほどの力、ただ無駄にする気か。きっと、も同じなんだ」

イザークは俯いた。彼女は最後まで理由を言わなかった。それを聞けばイザークも納得出来たかも知れないのに...

「守るために、軍服を着ていると言っていた。彼女は」

アスランが呟く。

ミネルバの廊下で話したの言葉が頭に蘇る。

「あいつは、自分に出来ることを自分がすると言った。それは、可笑しなことではないと。信条は、今も変わっていない、と」

ユニウスセブンでの彼女との通信を思い出す。

はそう言っていた。とても危険な状況で微笑んでいた。

彼女の言葉に何も言い返せなかった自分が、何も出来ない自分が歯がゆかった。





イザークたちと別れてステーションに向かう車の中でラスティが電話をしていた。

「どうです?」

「まあ、何とか間に合うと思うよ。向こうも待ってくれるしな」

そう言って肩を竦ませた。

「...けど、本当に良かったんですかね」

ニコルの言葉にラスティが首を傾げる。

「何が?」

「イザークたちに、の事を話さなくて。ノルンちゃんの事だって...」

ラスティは「ははは」と笑う。

「んー、まあ。イザークがそれを知って上手く立ち回れるかってのは微妙でしょ?けど、アスランが戻ってくるとはな。こりゃ、大誤算だ」

外の景色を眺めながらラスティが呟いた。

「けど、オーブの使節として来てるんでしょ?だったら...」

「オレ、イザークとアスランはそっくりさんだと思うんだけど」

ラスティの言葉に反論できない。

「え、でも...」と言葉を探すが、結局良い言葉が見つからない。も言っていた。あの2人は似たもの同士だ、と。

「まー、このままで良いんじゃないか?ザフトの中にも何人か居るから情報はそっちから来るし」

「そう、ですかね。けど真相を知ったら、イザークは物凄く怒るんじゃないですか」

「ああ、大丈夫。怒られるのはだけだから」

そう言ってニコリと微笑むラスティに

「何でそんなに楽しそうなんですか?」

とニコルが眉間にしわを寄せて聞いた。

「イザークの短気っぷりにとうとうが愛想を尽かすとかそんな展開熱望中」

ニヤニヤ笑いながら言うラスティに

「そんなことくらいで愛想を尽かすなら、そもそも結婚なんてものはしていなかったと思いますよ。それに、もうの事は諦めたんでしょう?何でまだそういうことを言うんですか?」

「まあ、クセって言うか。何となく“お約束”って感じしない?」

「そろそろ潮時ですよ」

「かもなー」と言いながらラスティは歌を口ずさむ。

それは、昔ラクス・クラインが歌っていた曲。

「昨日のラクス・クラインって」とラスティが言うと

「僕たちの知っている、あの歌姫ではないですよ」

とニコルがいやにはっきり言った。

雰囲気を見てラスティも別人だと疑っていたが、此処まではっきり言われると気になる。

「理由、聞いてもいい?」

「声が違います。僕の耳、侮らないでくださいね」

ニコッと微笑むニコルにラスティは肩を竦ませて「それは失礼」と笑いながら応えた。


ステーションに着き、ドアに手を掛ける。

「ジョンさんによろしくお伝えください。きっとの単独降下のこと、心配していると思います」

「んー、了解。っつっても、あの人自身は心配してないだろう。まあ、カインさんとかには伝えてくれるだろうけど」

「いいえ、最後の切り札でしょ。彼にとっても彼女は。無事で居てもらわないと困ると思いますよ」

そう言って微笑んでるニコルに、何だか腹黒いものを感じる。

「じゃ」と声を掛けてラスティはステーション内へと入っていった。

それを見送ったニコルはアクセルを踏んで車を走らせる。ニコルは正真正銘、仕事の打ち合わせがあるのだから、遅刻は出来ない。









Next


桜風
09.2.9


ブラウザを閉じてお戻りください