Like a fairy tale 33





オーブに停泊中のミネルバに秘匿回線による通信が入った。

それはそろそろオーブが地球軍に着くから、そうなる前に脱出しろというメッセージだ。

何度も繰り返されているその通信に艦長が返す。

あなたは何者で、この通信はどういうことなのかと問う。

彼の返答は先ほどの通信どおりで『言ったとおりだ』ということだ。

だが艦長は、そんな匿名の情報を正規軍が信じるはずがないだろうと返した。

そんな彼女の言葉に彼が言う。

これは、アンドリュー・バルトフェルドからの伝言だと。そして、シルバーレイが乗っているなら彼女の意見でも参考に聞いてみたらどうだとも言った。

『ともかく警告はした。降下が始まれば大西洋連邦との同盟の締結は押し切られるだろう。アスハ代表も頑張ってはいるがな。留まることを選ぶのならそれも良い。あとは君の判断だ、艦長。幸運を祈る』

そう言って通信は切れた。

「艦長」

呼び出すように指示していたがそこに立っていた。

「あなたの意見でも聞いたらどうかと、彼が言うから。どう思う?」

最後、少ししか聞いていなかっただったが、声でそれが誰からかは判断できた。

一度目を瞑り

「出航を具申します。せっかく直してもらった艦をスクラップにはしたくありませんから。進水式もまだですしね」

グラディスの顔をまっすぐに見てそう言った。

そして、心の中でバルトフェルドに礼を言う。これが本当にタイムリミットなのだろう。

艦長はその言葉に返事をせず、彼女に退出を促した。


すぐにカーペンタリアへの通信を試みるも、レーザーでの通信ですら届かないようになっている。

情報が、入ってこない。

「いいわ。命令なきままだけど。ミネルバ、明朝出航します。全艦に通達。出れば、遠からず戦闘になるわ。気を引き締めるようにね」

艦長はそう指示をした。


夜、がノルンのコックピットに収まっていると通信が入ってきた。

どこからのものか分からない。

『よー、元気か』

聞こえてきた声に苦笑する。

「何でうちの子の通信回線に入ってこられるんですか」

『まあ、企業秘密ってやつだよ。しかし元気そうだな。君の復隊を聞いて物凄く驚いているのだがね』

「ベルネスさんから聞いたのですか?それとも、独自の情報網で?」

『前者のほうだな。君が戻るなんて思ってもいなかったからね。戦場が恋しくなったのかい?』

向こうは完璧楽しんでいる。

「いいえ、全く全然これっぽっちも。そういうあなたはどうなんですか。バルトフェルド隊長のお友達さん?」

の言葉に彼が愉快に笑う。

『うん、そうか。変わらないな、君は。出航、するんだろう?』

「ええ、明朝。遅いとは思っているんですけどね。あ、お見送りはいいです。恥ずかしいので」

そんなの言葉に返ってきたのは『気をつけてね』というマリューの声だった。

「一緒に住んでいるんですか?」というの驚いた声に『ええ、共同生活よ。まだ他にも居るわ』とマリューが笑いながら返す。

ちょっと、びっくりした...

『じゃあな。君の無事を祈るよ、・ジュール。イザークにもよろしくな』『頑張ってね』という2人の言葉には敬礼をしながら「ありがとうございます」と返して通信を切った。



コンディションイエローが発令された。

定刻どおりに出航するため、パイロットはブリーフィングルームに集合というアナウンスが流れる。

ブリーフィングルームに向かう途中、カガリを目にした。

彼女はを目にした途端、少し表情を曇らせる。

そして、の背後からやってきたのはシンたちだ。

シンはカガリの姿を見つけるとまた噛み付く。

あの時オーブを攻めた地球軍と今度は同盟か、と。

カガリは視線を逸らせて口を噤む。

「シン」とが咎めるように名前を呼ぶ。

しかし、シンは止まらない。

どこまで身勝手なんだ、と。敵に回るって言うんだったら今度は自分が滅ぼすと言い放つ。

「シン、いい加減にしなさい」

が冷たく言う。シンはグッと口を噤み、そのままカガリに肩をぶつけてブリーフィングルームへと向かった。ルナマリアとレイもそれに続く。

はカガリに向き直り、「あなたも」と言う。

カガリは驚いたようにを見た。

「全世界があなたの行いを賞賛するとは限らない。簡単に揺らがないでください。為政者が決めたことがその国全ての人に何らかの影響を与えるのは、もう私が言うまでもないでしょう?国を背負うというのが、きっとそういうことです。それが怖いなら、他の誰かに渡せばいい。それも、あなたが選べる道のひとつでしょう。
道は“誰かが”ではなく、“自分が”決めるものです。でないと、何かが起こったときに誰かのせいにしてしまいます。そんな自分、嫌でしょ?」

はそう言ってカガリに敬礼を向けた。

「これからのオーブという国の発展とカガリ様の更なるご活躍をお祈りします」

彼女はカガリに背を向けてブリーフィングルームへと向かった。


艦が出航する。

ブリーフィングルームでは一人目を瞑って俯いていた。

そろそろ、こちらでも戦争が始まる。









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桜風
09.2.16


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