Like a fairy tale 34





コンディションレッドが発令された。

ブリーフィングルームのエレベータへ向かう。

「レッドって、何で...!」

そういうシンに「知らないわよ、何で私に聞くのよ」とルナマリアが憮然と返してを見る。

「地球軍に待ち伏せでもされてたんじゃないの?」

が事もなさげに言う。

「待ち伏せって!だって、オーブはまだ同盟を締結してないんじゃなかったのか!」

「...締結するって決めたんだし。締結前にこの艦を差し出したら、オーブ側は優遇された内容の条約締結が出来るんじゃないの?政治のことはあんまり知らないけど」

が言う。

「何で!」

「オーブの首脳陣全員を絞めて吐かせたら?私はオーブの為政者でもないし、国民でもないし、オーブという国の安全を考えて生きてるわけじゃないから知らないわよ。けど、言ったでしょ?これが戦争よ。あなたはそれを選んだのでしょ?」

はそう言ってシンのパイロットスーツを指差す。

エレベータのドアが開き、はノルンに向かっていった。



艦長が艦内放送で現状をアナウンスする。

「空母4、ですか。うわー、それは過剰接待でしょ」

はそう言いながらノルンの計器類を確認する。


「シンには、発進後あまり船から離れるなと言って。レイとルナは甲板から上空のMSを狙撃。には、申し訳ないけどシルバーレイの活躍を期待する、と」

ブリッジでメイリンに艦長が指示を出す。

それを聞いたは「了解」と返して通信を切った。

「大気圏内で『シルバーレイ』はないと思うんだけど...」

深く息を吐いて気分を切り替える。

こんなところで落とされて堪るか。の価値を高めておかなければならないのだから。



指示通り、シンは艦から離れず上空のMSを落としてく。

また、レイとルナマリアも甲板からの迎撃を続けていた。

「艦長、どこからお暇します?」

「左よ」

「了解。では、左の艦を沈めてきます」

はそう言ってエンジンを全開にした。

やはり重力下ではノルンは遅い。

自分に銃口を向けてくるMSの推進部分をピンポイントで撃ち落しながらは巡洋艦に向かっていった。

巡洋艦の砲門にライフルを向けてトリガーをひく。

船本体には海水面ギリギリのところを掠る様にライフルを撃っていく。

そうすれば沈むまでに多少時間があると思う。

艦自体を破壊するよりは、多少逃げ出す猶予はあるはずだ。

ミネルバに向かうミサイルも落としながらこの動きを行っているため、何発か撃ち損じたミサイルがミネルバに直撃する。

向かってくるMSを落としながらは左の艦隊を沈めていくが、こちらが左から突破するのが地球軍には分かっているようで

艦隊も左に寄ってきた。

集中して沈めすぎたか...

は舌打ちをした。


その中で旗艦からMAが出てきた。

あんなの見たことがない。きっと新型だ。

「でも、可愛くない」

「あれに取り付かれたらお終いだわ。、タンホイザーであのMAを含めて左の艦隊をなぎ払う。射線から離れて」

艦長の言葉に従ってはその射線から離れ、その間は上空のMSを落としていくことにした。

タンホイザーが発射された。

MAも含めて消え去ると思われたが、そうはならなかった。

数隻爆破したが、あのMAの後方に控えていた艦は全て無事だった。

「ビームが効かない...フォビドゥンと似てるわね。なら、直接攻撃しかないよね。ノルンの実弾ミサイルは少ないから期待できないし」

そう呟いてがブリッジに通信を送る。

「艦長、あのMAとの接近戦に出ます。その間のノルンの援護は期待しないでください」

近づけるかどうかも怪しいものなのだから、と心の中で続けてはエンジンを全開にして飛行しながらビームサーベルを抜く。


シンもそのMAに向かっていった。

「シン、囮になれる?」

「無茶言うなよ!」

「じゃあ、あなたがあの機体を落とす?ノルンが囮になってあげるわよ」

の言葉にシンが沈黙する。

「分かった。あなたは艦に戻ってその守備に就きなさい」

はそう言ってそのまま新型MAに向かっていった。

その最中、オーブからの領海侵犯の警告がコックピットに響く。

「早く片をつけないと、帰る船がなくなってしまうわね」

真正面から敵機MAとノルンがお互いが近づく。

ノルンのエネルギー残量が心許ない。

これで片をつけなきゃ、落とされる。

MAからの砲撃を下方に向かってかわしてそのまま急上昇と共にMAの推進部を破壊して機体をそのまま海に叩きつけた。

暫くして海から大きな水柱が立つ。

MAの機体に傷をつけたため、きっと海水の圧力に機体が耐えられなくなって潰れ、爆発したのだろう。

「ああ、殺した...」

呟くの声に何の感情も込められていない。ただが立っている現状を口にしただけだった。

コックピットを狙って一思いに殺してあげたほうが良かったのだろうかと思いながら、はそのまま旗艦に向かう。

「ミネルバ、オーブの領海から脱出できますね」

はブリッジにそう通信を入れた。

他のMSと交戦していたシンの動きがおかしい。

「だから、エネルギーの残量には気をつけて戦えって言ったのに」

は呟き、自分の計器を見る。

ギリギリだ。人のことは言えない。

あの旗艦を沈めたらきっと動けなくなる。どうやって回収してもらおうか...

そんなことを考えていると、インパルスは艦から直接デュートリオンビームを射出させてエネルギーのチャージを行った。便利なものだ。

そして、その後のシンの動きは、あのストライクのパイロットの動きを彷彿とさせるものとなった。突然動きが良くなる彼に何度も翻弄された。イザークが。

「同じ、なの...?」

は地球軍の旗艦の弾薬庫にサーベルを突きつけながらそう呟いた。

シンは次々に地球軍艦を沈めていく。

何とか浮力の働いている状態の旗艦の上で通信を送る。

「ブリッジ、聞こえますか」

、よくやってくれたわ」

「...エネルギーがそろそろ切れます。飛行してそちらに帰ることが出来ないかもしれないので、近くに艦を寄せていただくと非常に助かります。跳んで行きますので」

まだ残骸として鉄の塊が海に浮いている。

その上を跳んでミネルバに着艦しようと思っているのだ。

「シンを迎えによこすわ。さっきインパルスのエネルギーはチャージしたし。あの出力なら何とかノルンも持って帰れると思うの」

「お待ちしております」

撤退していく地球軍艦隊を視界の端に映しながらは遠くを見つめていた。









Next


桜風
09.2.16


ブラウザを閉じてお戻りください