Like a fairy tale 15





突然向かっていた気配にイザークは驚きつつも振り返りそれを迎え撃とうと銃を構えた。

そして、その視界に入った人物に一瞬躊躇う。

引き金を引くが、その躊躇ったせいでに余裕が生まれたためにイザークの放った銃弾を避ける。

頬に銃弾を掠めつつも、は引き金を引いたが、銃弾が放たれなかった。

こんなときに弾詰まり?!

一度体勢を立て直すかとも考えたが、その場合は余裕が生まれるイザークの方に分が有ると判じたはそのまま突っ込んだ。

突然の姿を見た先ほどは照準が定まっていなかったが、今ならいける。

の銃は弾詰まりを起こして使えなくなっているのだから。

イザークは落ち着いて引き金を引いた。

が、はそれに向かって今手にしている銃を投げて体勢をさらに低くしてイザークに向かって突進していく。

利き手を後ろに回した。そのまま素早くナイフを取り出してに飛び掛り、イザークを押し倒しながらそのまま喉元にナイフを突きつけた。

「えーと、この場合はどうしたらいいんだろう...」

が呟く。

ナイフの場合は刺したほうがいいのだろうか、切ったほうがいいのだろうか。どちらならゴーグルは戦闘不能と判断するのだろう。

逡巡した後、はラスティから回収した銃を取り出して「ごめんね」と言ってそのまま額のプロテクターの上に銃弾を放った。

至近距離からの銃弾を受けたイザークは痛さのあまりに涙目になる。

「やっぱ、痛いよね」

「当然だ!」

怒鳴られたはそのままの姿勢で一度肩の力を抜く。

「いつまで俺の上に乗っているつもりだ」

視界が真っ暗になったためゴーグルを外しながらイザークが忌々しげにに問う。

「予備弾、まだ使ってない?」

イザークの上に乗ったままが聞くと

「お前は死人に声を掛けるのか」

とイザークが不機嫌に返す。

「じゃあ、」と言ってはイザークの持ち物を漁って予備の弾倉を取り出した。

今持っている銃の弾倉を取り出し、残弾数を確認する。ついでにイザークの銃も回収しておいた。

何処に行こう、と考えながら周囲を見渡した。

「瓦礫エリアだろう」

イザークがポツリと言った。

「今日びの死体はご親切にもアドバイスをくれるのねー」

先ほどのお返しだと言わんばかりにが呟く。

「やかましい。、アスランをやったか?」

「まだ。イザークもアスランとはやってないって事か。じゃあ、ラスボスはアスランかな?」

そう言ってイザークに乗っていたは立ち上がった。

一度周囲を見渡して気配を探る。

「んじゃ、気をつけて」

「寧ろお前がな」

イザークの言葉に軽く手を挙げては瓦礫エリアへと向かった。



瓦礫エリアに着いたが、人の気配がしない。

お互い隠れていても埒が明かない。

は一応身を隠し、先ほど何度かここで行った戦闘を思い出しながらこのエリアの地形を頭に描く。

自分だったら、何処に身を潜ませるかを粗方考えて飛び出した。

パシュン、と地面で銃弾が弾ける。

その銃痕を見て狙撃主の位置を想定しても銃弾を放った。

藍色の髪が見えた。アスランだ。

居場所をつかんだは良いが、どうしたものか。

正直、アスランの居る場所の方が若干高い場所なため、自分の動きは向こうに見える。逆に向こうが動いても分かりにくいというのが現状でこちらの方が不利だ。

は頭を振った。

悩んでいても仕方ないし、出ていかなければアスランの性格から言って、ジワジワと攻めてきそうだ。

待っていてもいい方に転ぶ事はありえない。

なら...

は隠れていた瓦礫から飛び出した。




「オイオイ、玉砕覚悟か?」

モニタを見ていたラスティが呟く。

演習場から戻ってきたイザークを目にしてディアッカが片手を上げた。

不機嫌な表情でイザークはディアッカたちの傍にやって来る。

「何を見てるんだ?」

VSアスランの緊迫した戦闘状況」

ラスティが言うとイザークもそのモニタを覗き込む。

「今んとこ、アスランのが優位だな。待ち伏せしていたようなものだし」

ディアッカの状況説明を聞きながらモニタを眺めている。

飛び出したにアスランが銃弾を放っていた。

のすぐ傍でコンクリートの欠片が跳ねている。

モニタの映像からが消え、アスランの姿も見えない。

「あっれ。どこかに映ってない?」

ラスティが声を掛けてみるが

「居ませんね。どのカメラの死角にも入ったみたいですよ」

ニコルが応じる。

「えー...」と不満の声を上げてラスティは機嫌を悪くした。

「どっちが勝つと思う?」

不意にディアッカに声を掛けられてイザークは顔を上げる。

「さあ、な」

イザークのいつもどおりの返答にディアッカはつまらなさそうに肩を竦めた。



は殆ど身を隠すことなくアスランとの距離を縮める。

距離を縮めるたびに身を隠していたのでは結局その間にアスランに距離を取られてしまう。

今のところ、こちらの方が後手に回っているのだから、せめてもう少し距離を詰めておきたい。

アスランの動きを把握できる程度まで距離を縮めたは一度瓦礫の陰に身を隠す。

何度かアスランの放った銃弾は掠ったが、ゴーグルが視界を奪っていないならそれはまだやっても良いということだ。実際、この程度で銃が撃てなくなるわけでもなければナイフが使えなくなるわけでもない。

だが、あまり時間をかけたくないというのが現状。

行くか...

が飛び出した。

それを受けて、もう逃げていても仕方がないと判断したのかアスランも出てきた。

お互い駆けながら銃を放つ。

一度身を隠した。はアスランの放った弾の数を指折り数える。

そして、自分のものはあと2発。

此処まで距離を詰めるのに弾数を使いすぎた。背中に手を回す。ナイフはまだ1本ある。

はアスランが身を潜めているであろう瓦礫の上方を見た。

結構脆い感じの建物を背にしている。

...避けてね。

そう思いながら崩れそうな箇所を狙って撃った。

正確な狙撃により建物の一部が崩れ落ちてくる。

アスランが飛び出しはそのまま最後の一発を撃ってアスランに向かって駆けた。

砂煙の上がる中、とアスランは動きを止めた。

のナイフはアスランの喉元に当てられており、アスランの拳銃の銃口は掌で塞いでが握っている。

たとえ、これが実弾での掌を貫通してもそこにはの体はなく、左の掌の負傷というだけで済む。

「アスラン、ごめんね」

そう言って喉のプロテクターの上からアスランの喉を切りつけた。


『パンッ』という音と共に煙火が上がった。

は握っていたアスランの銃から手を離してその場に座り込む。

「キツイ...」

呟くに対してアスランは「負けたよ」と言って手を差し伸べる。

その手に手伝ってもらい、は立ち上がって集合場所へと向かった。



「やはり、だな」

教官がモニタの傍にあった画面を見て呟く。

そこにはクラス全員の名前があり、ゴーグルが使えなくなったら消える仕組みになっている。つまり、生存者のみが表示される仕組みになっていた。


そして、最後までその名前が消えなかったのはだった。








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桜風
08.1.7


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