Like a fairy tale 48





ホテルで休むように議長に言われ、艦長もそうさせてもらうようにと添える。

アスランが自分が艦に戻ると言ったが、レイがそれを遮って自分が戻るという。

だが、「私が戻る。レイも此処で休めば良いよ」とも口を挟んだ。

「しかし...」とレイが反論しようとするが

「ノルンの調整、今のうちにしっかりしておきたいの。警戒態勢中だと気分的にも落ち着かないから、出来るなら、今の休暇中に納得のいくものにしておきたいのよ。で、2人も戻る必要はないでしょ?だから、私が戻ります」

「いや、しかし」

アスランも何か言いたそうだ。

は立ち止まり、アスランとレイを指差した。

「年上の言うことは聞きなさい!たまには、ね」

はそう言って議長と艦長に敬礼を向けてその場を後にした。

アスランは呆然とを見送り、レイも目をぱちくりとしていた。

その様子に艦長は噴出し

「まあ、そういうことみたいよ。2人とも、今日はこちらで休ませていただきなさい」

アスランとレイは顔を見合わせて「はい」と頷いた。



コックピットの中で先ほどデュランダルから受け取った写真を改めて眺める。

目を細めてその顔をそっとなぞった。

髪の色は自分と同じ。

だけど、髪質はイザークのそれと同じで感心するくらいのサラサラ。


なんとなく、懐かしくなる。

そんなに昔ではないのに、とても不思議だ。





ジュール邸で生活をするようになって数ヶ月。

イザークは忙しくて殆ど家に帰ることはなかった。

それでも、なるべく帰宅するように努めていた。慣れない家でが寂しい思いをしないように。

そんな生活を送っていたある日、は自身の体の変調に気づく。

誰かに相談してみようかとも思ったが、何となく言い出せないでいた。

仕方なく、一人で病院に行くことにした。

普段頑丈なは病院に行くのは物凄く苦手だし少々怖い。

が、家で悶々としているのもいやだった。

渋々行った病院で、医師の診察を受けたあと、何となく予想できた一言を聞いた。

あまりに無反応のに医師は面白くないようだった。

診断結果を受けて安心したは帰宅した。


行き先を告げずに出たため、家の者たちには怒られた。

とりあえず、心配を掛けてしまったことに対して謝罪をして自室に戻る。

イザークにメールを送っておいた。

電話、とも思ったが、時間が取れないかもしれないし、仕事中だから迷惑だろう。

そんな思いでメールにした。

今日は帰れないのか、と。

最近は特に忙しいらしく、イザークは評議会の執務室に泊ることが多い。

だから、予定を聞いてみることにした。

最初に報告したい相手はイザークだ。

暫くしてイザークから電話が入る。

『どうした?』

帰ってこれないのか、とが珍しいことを聞いたため気になったようだ。メールの返事ですむものを態々時間をとって電話をしてきた。

「メールのとおり。帰って来れる...?」

の返事にイザークは首を傾げた。

声の様子が、いつもと少しだけ違う気がする。

本当は今日も泊りを考えていたのだが、帰ることにした。

にそう告げると嬉しそうな声が返ってくる。

本当に妙だ。



イザークが帰宅した時間はすでに日付が変わっていた。

まあ、遅くなるだろうと思っていたが。さすがにその予想を超えた時間だ。

家に帰るとしんと静まっている。

イザークは自分が遅く帰宅する予定でも家の者は起きておかないようにと言っている。

本当にいつ帰るか分からないし、帰れないかもしれないから。

上着を脱ぎながらリビングに向かう。

ソファに座るの背中を見つけた。



声をかけた。

自分の気配に気づいていないようで、それは物凄く珍しい。

イザークが背後からの顔を覗き込むと彼女は静かに寝息を立てていた。

イザークは溜息をつく。

が帰ってくるようにと言っていたら帰ってきたというのに。

と、言ってもこの時間。起きていないことに文句を言うのも酷だろう。のひざの上には太い書物が載っていた。

読みながら寝てしまったようだ。

それを手にしたイザークは少なからず驚いた。

それは医学の専門書。

一瞬、の体調不良かとも考えたが、顔色を見る限りは元気そうだ。

だったら、の祖父の体調でも悪くなったのかと思う。

だから、は自分を呼び戻したのか?

明日の朝、聞いてみようと思いながらその厚い本を傍のテーブルに置いた。

のひざの裏に手を差し込む。

起こすのも可愛そうだから自分が部屋まで運ぶことにした。

を持ち上げたらその瞳が薄く開く。

「イザーク?」

「そのまま寝てろ。部屋まで連れて帰ってやる」

イザークの言葉に頷いたが再び瞳を閉じた。が、すぐにパッチリ開ける。

「イザーク!?」

今、やっと起きたらしい。

降ろして、とが言うものだから、イザークはそっと彼女をソファに座らせた。

「あれ、イザークいつ帰ってきたの?私寝てた?」

「たった今帰ってきた。寝てたな」

「ごめん」といいながら髪を指で梳いた。寝起きののクセだ。

「どうした、帰ってこいだなんて。何かあったのか?」

以前、ディアッカに言われたことを思い出す。

が家に居たらイザークも安心だろう?いろんな意味で家を守れるからな』

実際、は家事全般出来るし、物理的に家を攻撃されても守れる。それだけの力はある。とりあえず、今の生活では家事全般が出来るというのは特に必要のないアビリティだが、長所ではある。

ただ、彼女の苦手なものといえば『社交界』というものだが、今はあまりそういう機会はないし、少しずつ母のお陰で慣れてきているようだ。まあ、『慣れてきた』というよりも『諦めてきた』という感じだが...

だから、家を空けていても殆ど心配することはない。

心配することはないが、まあ、自分としても面白くないと思うときもある。今は仕方ないと言い聞かせているが。

そんな中でののメールには驚いた。

だから、無理を押して帰宅することにした。

明日の朝はまた早くアプリリウスに行かないといけない。

「イザークも座って」

はそう言って自分のすぐ隣とぽんぽんと叩いた。

上着を傍においてイザークはの隣に静かに腰掛ける。

「それ、何で読んでいたんだ?」

テーブルの上に置いた医学専門書に目を向けてイザークが問う。

「うん、あのね」とはそれに手を伸ばして自分のひざの上に置いて索引を見てページを開き始める。

の先代当主のお加減が悪いのか?」

イザークの言葉には首を振る。

少しだけ安心した。

しかし、そうなるとのこの行動に合点がいかない。

がページを捲る手を止めた。

そしてイザークのひざの上に本を置く。

「ここ」と言って指差した箇所を見てイザークは目を見開いて固まった。

はそのイザークの表情を見て自然と口角が上がる。

思ったとおりの反応で楽しい。

「ま、待て。、落ち着け」

「イザークがね」

「『妊娠』とあるぞ?」

イザークの言葉にが深く頷く。

「誰が...?」と呟くイザーク。

「私」とあっさり答える

再びイザークは固まって動かない。

ああ、これは次の反応までが長いな、と判断したはコーヒーでも飲もうと立ち上がり、キッチンへと向かった。









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桜風
09.3.23


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