Like a fairy tale 50





翌朝、が目を覚ますと隣にはイザークの姿がなかった。

はあ、と溜息を吐く。

居ないのは分かっていたけど、やはり残念だ。

時計を見ると、思ったよりも早い時間だと言うことに気が付き、は適当に服を着替えて階下に降りた。間に合うかもしれない。

の思ったとおり、ちょうどイザークが出かけるところだった。

「イザーク!」

「走るな!」

思わず足が止まった。

ゆっくり、でも早く足を動かしてイザークの元へと向かう。

「家のものには自分から話すんだろう?」

イザークの言葉には頷いた。

ということは、まだイザークはみんなに言っていないということだ。

「俺も、これからなるべく帰ってくるようにするから」

は頷きかけて首を振った。イザークは眉を上げる。

「だって、帰ってきたり行ったりって大変でしょう?昨日は我侭を聞いてくれてありがとう」

イザークは数回頷いたが、

「まあ、無理しない程度には帰ってくる」

と帰宅を前向きに検討している状況だ。

はそれを受けて頷いた。

「行ってくる」との額にキスをしてイザークはアプリリウスへと向かった。



その日のうちに連絡を入れなければならないところには連絡を入れた。

エザリアはから連絡を受けてすぐにジュール邸に向かった。

監視役が何事かと問いただしたが、その監視役に向かって怒鳴りつけ「ついていらっしゃい!」と言い放ったそうだ。

言われた監視役も、そのエザリアの気迫に押されて思わず彼女の荷物もちをしてしまったほどだ。


やってきたエザリアはすぐにに向かって「ありがとう」といい、抱きしめた。

突然の抱擁には固まる。

「エザリア様」と顔馴染みのメイドに声をかけられてのそんな反応に気づき、慌てて腕を緩めた。

「イザークは、知っているの?」

「はい。昨晩、無理を押して帰って来てもらいました」

「そう...」と安心した表情を浮かべた。

「ところで、男の子?女の子?遺伝子のほうは?名前はもう決めているの?」

突然の質問には目を丸くする。

「エザリア様。お茶でも飲みながらお話されてはいかがですか。ここはホールです」

出迎えられたそのままでエザリアは話を始めたのだ。

確かに、ここでは落ち着かないと納得して勝手知りたる応接室へと向かった。


応接室で落ち着いて話をする。

何はともあれ。とても喜ばしいことだ。

「カイン殿には?」

「今朝、エザリア様に連絡をお入れした後に連絡を入れました」

「今日は、いらっしゃらないのかしら...」

少し残念そうに言うエザリアに「よく分かりません」とは返していた。

今日は泊るというエザリアの言葉にメイドたちはその支度を始めた。勿論、監視役の部屋も用意することになっている。

「ごめんなさいね」とエザリアに謝られてはどう返したものかと悩んだ。


その日の晩もイザークは帰ってきた。

そして、カインもやってきた。

家族4人で食卓を囲む。

「ね、女の子でしょう?」

ウキウキとエザリアが言う。

「どうでしょう...」

は首をかしげながらそう応えた。

「そうですね、母上。女の子だと俺も思います」

イザークの言葉には「え!?」と思わず声を洩らす。

「何故、2人とも女の子をそんなに熱望なさっているんですか」

と少し呆れたようにカインが問いかける。

「そう仰るカイン殿は、どちらがいいのですか?」

エザリアが問う。

「私は、どちらでも。元気な子が生まれてくれればそれで十分ではないですか」

カインの言葉にエザリアは頷き、

「そうですね。という訳で、多数決の結果、女の子ね」

と締めた。

さすがに、食事の世話のために同席していたメイドも驚いたように目を丸くしている。勿論『多数決』と言われたも驚きだ。

「ここで民主主義に則られても、のお腹の子は困ってしまいますよ」

苦笑しながらカインがエザリアをそう宥める。

さん。その子が大きくなったら3人でお買い物をしましょうね」

エザリアの中では、何が何でも女の子決定のようでそんなことまで言い出した。

「そう..ですね」

はどこか困った表情を浮かべながらもエザリアの言葉に頷いた。

カインはそんな娘をどこか慰めるような瞳を向けて気を取り直したように食事を続けた。

そこに居る誰もが心が温かくなる食卓だった。









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桜風
09.3.23


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