Like a fairy tale 51





「よー、いいか」

コックピットの外から声が聞こえてハッチを開ける。

顔を覗かせてきたのは、ハイネだった。

「久しぶり。って、これはさっきも言いましたよね」

「敬語はよせって。ちょっとくらい手を止めてオレの話に付き合おうとか思わない?」

そういうハイネには笑い

「何をご馳走していただけますか?」

と返しながらコックピットから出てきた。

「これが、伝説の機体。ノルンか...」

見上げながらハイネが呟く。

「ご覧になったことあるでしょう?ヤキンのときとか」

「あのときは、ボロボロだっただろう?」

言われてみれば、と納得した。

がジェネシスから何とか脱出して漂流しているところをホーキンス隊の面々に保護された。

そのときのノルンはもう色んな箇所が破損しており、原形をとどめていない。

スクラップとしてそのままデブリの仲間扱いされてもおかしくなかった機体をイザークに言って一緒に連れて帰ってもらった。



「お前さ、何で戻ってきたの。子供居るのに。さっき、まだ1歳だって言ってただろ?」

そう言ってハイネは缶コーヒーを渡してきた。

場所はレストルームに移した。

「ま、ね。色々と諸事情による出戻りですよ」

はプルグリップをあげて缶に口をつける。

「諸事情、ね...ホーキンス隊長も突然引退だしな」

「でも、ハイネはもうFAITHなんだから隊長が引退しても関係ないでしょ?」

「ばーか。ホーキンス隊長の下に居なくても、オレはあの人を尊敬しているし、あの人の助けになれるように偉くなったんだよ。なのに...てか、何で勲章を断るわけ?お前もさ」

先ほどの議長との会話を聞いて色々と聞きたいことが出てきたようだ。

困ったなぁ、とは溜息をつく。

「欲しいって思ったことが一度もないからよ」

「何で?力があれば出来ることもたくさん出てくるだろう?」

今のに自由はない。だから、そんなものはただの飾りだ。

「まあ、褒章って褒められるって事でしょう?当たり前に自分がすることを、誰かが勝手にその基準で評価して。そういうのって何か嫌なのよ。褒められるために、何かをしているような錯覚に陥りそうで」

の言葉にハイネが唸る。

「まあ、ホーキンス隊長も変わってたし。その隊長が気に入っているんだからお前も変わってるんだろうな」

そう言ってハイネは自分の持つ缶コーヒーを飲んだ。

「ミゲルは、元気?」

「んー?ああ、アイツな。元気元気。たまに飯食いに行ってたんだぜ。っていっても。今はそんなゆっくり出来ないしな」

肩を竦ませるハイネに「元気だったならいいや」とは笑う。

「...イザークから連絡とか来るのか?」

の薬指に光るものを眺めながらハイネが言う。

「1回、来たね。それだけだよ」

「ひゃー、冷たいな」とハイネが言う。

「自分から連絡取らないの?」

「取らないよ。だって、私は一般兵だから検閲に掛けられるでしょ?隊長格以上に検閲はないっていうけど。それだって怪しいんでしょ?」

の言葉に「まあな」とハイネは肩を竦める。特にこの戦争時だからそれは厳しいものになっているはずだ。


暫くお互いの近況を話していて不意にハイネが真顔になる。

「で、ホーキンス隊長は何で辞めたんだ?」

今までの長い話はフェイントか、とは苦笑した。

「本人にお聞きしてみたら?とりあえず、ホーキンス隊長は私の父と年齢的にはそう変わらないわよ?」

と返す。

が、ハイネはの言葉に頷かない。

「自分で調べてみたら?何か有るにしてもないにしても。それで自分が調べた上での結果なら納得いくんじゃないの?...オススメはしないけど」

の言葉に「ふぅん」と返してハイネは視線を逸らした。

「ま、時間があったらやってみるわ。けど、オレって当分ミネルバ所属になる予定らしいから。ちょっと色々と面倒くさそうだけどな」

そう言ってハイネはレストルームを後にした。

「3人目のFAITH...」

はうんざりと呟く。

議長はこの艦をどうしたいのだろうか...

自分に対する監視にしては、ちょっと厳重過ぎないだろうか。娘を人質にしていても尚、まだ不安が残っているのだろうか。

「めんどくさ...」

は呟きその手の缶コーヒーを一気飲みして缶をダストボックスに放った。









Next


桜風
09.3.30


ブラウザを閉じてお戻りください