Like a fairy tale 57





地球軍が退却したため、ミネルバもマルマラ海のポートタルキウス基地へと退却する。

タンホイザーを撃たれ、また地球連合軍から受けた損傷は大きくその修理が行われている。

帰港してから自室に篭っていたは艦長に許可をもらって艦を後にした。

向かった先は、基地内の病院だ。

教えられた部屋に行ってドアをノックする。

返事を待ってそのドアを開けた。

「元気そうね」

「ご挨拶だな。これのどこが元気だよ」

あの戦闘で負った傷が痛々しい。

「けど、ニコルよりも軽傷よ。すぐに良くなるわ」

昔、自分が目にした仲間の負った傷に比べれば全然元気だ。病院に運ばれて1日でこうやって軽口を叩けるようになったのだから。

「で、ホントのところ。どれくらいで完治するって?」

「さあ?けど、今日の午後本国に帰される。あっちのほうが医療機器が充実してるからな」

「そうね」とは笑った。

「他の奴らは?アスランとか、さ」

見舞いに来たのはだけだ。何となく、他のメンバーが気になった。

「みんな、多かれ少なかれ傷を負ったの。ノルンと私が一番元気よ」

「そっか...」とハイネは俯いた。

「ね、本国に帰るんだったお願いがあるんだけど」

「“帰される”の!」

「この際、そんな違いはどうでもいいわ」

の言葉にハイネは肩を竦ませて、顔をしかめる。体を動かすと傷が痛む。

「で、何?お願いってさ」

「これ」とが差し出したのは2枚の封筒。

1枚には『ヴァン・ホーキンス様』と書いてあり、もう1枚には『イザーク・ジュール様』と書いてあった。

「イザークは、ともかく。ホーキンス隊長にも?」

「たぶん、ホーキンス隊長と交流のある人がお見舞いに来ると思うの。だから、その人に預けて」

「...いいけど。イザークは、オレからで良いの?捨てない??」

「確かに、知らない人から来た手紙には興味を示さないと思うけど。捨てないと思う。いつか、その封は開けて中身を見るわ」

そう言ってが寂しそうに俯いた。

「ま、命の恩人の頼みごととあらば、ってね。いいぜ」

ハイネの返答には深く頭を下げて「ありがとう」と礼を言った。



その日の午後、ハイネはプラントへと戻っていった。

それをアスランを除くパイロットが見送る。アスランはFAITHの権限で独自に行動をしているそうだ。

「何か、死んだ人間を見送ってるって顔してるぜ」

ハイネがそう軽口を叩くと皆は慌てた。

ただ、だけが

「あと一歩でそうなるところだったけどね」

と笑って返し、3人は驚いた表情を浮かべて彼女を見る。

そんなに「はいはい、ありがとう」とハイネは声をかけてそのままシャトルへと運ばれた。




ハイネが軍本部の病院で大人しくしているとドアをノックする音がした。

ドクターの巡回の時間にしてはまだ早い。

返事をするとドアを開けて入ってきたのはミゲルだった。

「おー、どうしたよ」

「それ、こっちのセリフ。強奪した機体にやられそうになったんだって?」

「...その前に負傷はしてたけどな」

その言葉にミゲルは目を丸くした。

ハイネともあろう人が、地球軍からの攻撃で簡単に機体を破損するとは思えない。

「フリーダム、って覚えてるか?」

ハイネの言葉にミゲルが先ほどよりも驚いた表情を浮かべた。

「ま、つまりはそういうこと。伝説のフリーダムにやられた」

は?」

「無事だよ。オレを助けてくれたのは、だ」

ミゲルは安堵の息をつき、「良かった」と零した。

「ああ、そうだ。お前ってまだホーキンス隊長と連絡を取り合ってたりするか?」

ハイネのその言葉に一瞬ミゲルは構えた。

「...どうした?」

こわばったミゲルの纏う空気にハイネが首をかしげる。

「いや、何でも。どうして?」

「ああ、から預かり物。何でもホーキンス隊長と交流のある人に渡してくれって手紙を預かってるんだ。だから、聞いたんだけど」

ハイネの言葉にミゲルは安心したように笑った。

「なるほど。本当は隊長が見舞いに来たいって言ってたんだけど。あの人今はザフトじゃないから本部に入れないだろ?オレが代わりに行けって言われてさ。『の近況を聞いて来い!』とかって。相変わらずだよ、あの人も」

そうミゲルは言ったが、ハイネは途端に真剣な眼差しを向ける。

「ホーキンス隊長が突然引退された理由、お前は知ってるんだろう?」

ミゲルは一瞬視線を逸らせた。

「オレは、何もいえない。退院したら会ってみたら良いだろ、ハイネ自身が。隊長との連絡はオレが取るから」

何かあるな、と思いつつも慎重な態度を見せているミゲルをこれ以上追求しようとは思わなかった。

「分かった。じゃあ、退院できるようになったらお前に連絡入れるわ。あ、あともう1個頼まれてくれ」

そう言ってから預かったもう1枚の封筒を差し出した。

「これ、オレの名前で送ってやってくれる?」

ミゲルは受け取った封筒の宛名を見た。イザーク宛だ。

「自分で出せば良いのに」

「検閲。嫌がってるからな。まあ、普通は嫌だろうけど。オレだったら、検閲される可能性が低いだろう?」

飽くまで“可能性”の話だ。

「わかった。本部のほうに出しとくわ。じゃあ、また来る」

「ああ。頼むな、その2つ」

ミゲルは軽く手を上げて部屋を後にした。









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桜風
09.4.13


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