Like a fairy tale 63





一度岩陰に隠れて修理と補給待ちという状況になっていた。ジブラルタルまであと少しというこの距離でのそれは、もどかしさを覚える。


ドックでは大破、中破したMSが全部で3機。

無事なのは換装できるためにパーツのあるインパルスと、殆ど傷を負っていないノルンの2機だけだ。

「ガイア、搬送しなきゃ誰かが乗れたでしょうにね」

は呟きながらノルンのコックピットの中に篭ってデータの整理を行っていた。

今回のことは、アスランもかなり参ったようで自室に篭りっきりだ。


「え、じゃあ。今回もシンとが?」

「そ。シンはオーブ艦隊を、はミネルバを守ってくれてて。シンなんて最近凄いのよ。『ミネルバ、ソードシルエット!』とかガンガン言ってくるの。もうエースって感じ。で淡々とミサイルを迎撃してくれてて。居なかったら、この艦ももっと大変なことになってるかもしれないもん。もう、沈んでるかもしれない」

レストルームでメイリンがヨウラン、ヴィーノと話し込んでいた。

2人は最近良く耳にするシンの活躍に驚きを見せている。

「シンのインパルスはともかく。のノルンは1回中破して以来殆どメカニックが整備している姿を見たこと無いんだよな。まあ、装備の換装はよくしてるけど。一番手のかかってない機体だよ、ノルンって」

ヨウランの言葉にメイリンは感心する。確かに、被弾している様子はあまり目にしない。

「メイリン!」

レストルームにやって来たのはルナマリアだ。被弾して怪我をした姉の見舞いにも来ないで、と文句を言うが、メイリンはずっとオンだったために行けなかったと話す。

「もう良いわよ。それより、アスランは?どうしてるか知らない?」

「どうって?」

とメイリンが聞き返す。

ルナマリアは先に負傷していたため、セイバーのあの状態を知らなかった。だから、気になったそうだ。

「部屋でくらーく悩んでると思うけど?怪我はないようだから特にね。あなたのその怪我はもう良いの?」

ルナマリアが振り返るとが立っていた。

「私は、まあ大丈夫ですけど。何ですか、その言い草」

憮然と抗議する。

「部屋、覗いて来てごらん。たぶん、電気もつけずにベッドに腰掛けて俯いているわ」

「見てきたように言いますね」

「見なくても想像つくの。考えるだけでは出ない答えをぐるぐる頭の中で考えて無限ループ。見てるとイライラするだろうから、私は見たくないけど。私、イザークみたいに優しくないから『しっかりしろ!』とかって怒る気にもなれないし」

の言葉にルナマリアが溜息を吐く。

「惚気?旦那さんが優しいとか言うなんて」

「イザークはアスランのライバルなの。きっと、お互い認めないけどね。だから、アスランが腐っているとイザークは嫌なのよ。きっと私よりも大好きなのよ、イザークはアスランのことが」

そう言って肩を竦め、当初の目的のドリンクを購入して部屋を後にする。

入り口でシンと会う。

「お疲れ」

「ああ、うん。居ると楽だね」

「不思議ね、よく言われるの」

軽く返してはまたドックへと向かった。


「大丈夫?」

レストルームの中に居るルナマリアに声を掛けてシンもドリンクを購入する。

アスランはどうしてるかと聞かれてシンも彼は部屋で落ち込んでいるのではないかという。

「あんま強くないよね、あの人。なーんでアレでFAITHなんだか。のほうがよっぽど強いよ。状況把握も早いから頼りになるし。...昔は強かったってやつ?アスランって」

そう言いながらシンもレストルームを後にした。

ルナマリアは不思議そうにシンの背中を見送っていた。



ノルンのデータの整理に少し疲れて外の空気が吸いたくなる。

「あれ、シン?」

「あの人。本当に強かったの?!」

半分怒鳴られる形で問われた。

「あの人...?」

「アスラン!何で、あんなに!!」

そう言って答えを待たずにシンは遠ざかって行った。


甲板に出てみると人影がある。さっきのシンの言葉はここに来た後だからなのかもしれない。

「あら、予想外。訂正してきたほうが良いのかしら?」

アスランは不意に掛けられた声に驚いて振り返る。

「...私が敵だったとして。今だったらあなたの命容易く頂けるわね。魂はもう抜けてるみたいだし」

の言葉にアスランが眉を顰める。

「決めた?もう大丈夫?それとも、まだ悩み足りない??」

の言葉が何を指しているのか分かったアスランは俯いて唇を噛む。

「あなたは、何のためにその軍服を選んだの?どうして、“アスラン・ザラ”を選んだの?“アレックス・ディノ”としてオーブの代表だけを守る道ではなく、何かと戦うその服を選んだのは何故?」

の言葉にアスランは顔を逸らす。

「あまり悩まないことよ。MSに乗っている時は特に。あなたはFAITHだから艦長の命令に従う必要は無い。けど、あなたがこの艦のパイロットでMSに乗っているなら撃つべきものはもう決まっているはずだけど?アークエンジェルも敵艦とみなした。だったら、そのMSであるフリーダムとストライクルージュも敵。違うのかしら?」

にとって、何が敵だ」

「以前地球に降りたとき、オーブに向かっているときに大サービスで答えたはずよ。私の描く未来を壊そうとするもの。そして、今のところ、アークエンジェルは微妙な位置なの。撃たなくて良いならそれに越したことは無いけど、命令が下れば撃つわ。もう決めたの」

まっすぐアスランの目を見ては言いきった。

あの艦のクルーの事は知っている。顔見知りや、言葉を交わした者も居る。

それでも撃つと、迷わないと決めた。

のその視線が痛くて、アスランは視線を逸らす。

「早くあなたも決めなさい。そうのんびり構えてられないのよ」

艦に戻りながら振り返らずは呟く。とても脆く、危うい心を抱えている仲間に向かって。









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桜風
09.4.27


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