Like a fairy tale 64





アラートが鳴り、目が覚める。

珍しくまともに寝ておこうと思った矢先のそれには眉を顰めた。

髪を梳きながらベッドに座る。正直、寝起きは良くない方だ。

昔はイザークに寝癖について酷く注意を受けたことを思い出しながら手櫛で髪を適当に梳く。

「何?」

廊下を走るクルーに声を掛けてみた。

「わかりません」

は仕方ないとばかりに、上着を着てブリーフィングルームに詰めることにした。

戦闘ではなさそうだが、今この艦で使えるMSといえばインパルスとノルンだけだ。

ノルンは特に他人任せに出来ない機体でもある。

ブリーフィングルームからドックを覗く。

「あれ、コアスプレンダーがない。もう出たの?」

未だに寝ぼけ眼でそう呟いていた。

「艦長、今の状況が把握できません」

ブリッジに通信を入れてみた。

「エクステンデッドが医務室から居なくなったのよ」

苛立たしげに艦長から応答がある。

「コアスプレンダーもないですよ」

「そうよ!シンが医務室に来て運び出したの」

なるほど、と納得した。

「追いかけますか?」

「...いいえ、今ノルンが居なくなったら有事の際にこの艦は無防備になるわ。待機していてちょうだい」

少し悩んだようで間を空けて返ってきた言葉に「了解しました」と返した。

通信を切った後、欠伸をする。

「眠い...」

アラートが戦闘を告げない限りの頭は中々覚醒しそうにない。

「今度は予備の機体、載せておいたほうが良いんじゃないかな」

呟きながら一応、パイロットスーツに着替えておこうと考えて更衣室へと向かった。



暫くして帰投したインパルスからシンが降りてくる。

彼は大人しく逮捕された。

それを見届けてはパイロットスーツを脱ぎに更衣室へと向かった。

一度来た連絡で今回の件はシンとレイの2人による犯行だということを聞いている。

「まあ、一人でするには、まず無理よね...」

思い出しては呟いた。

戻ると連行されているシンとすれ違う。

はそれを一瞥しただけで声は掛けない。

自室に帰って寝ることにした。




ザフトの港で補給を受けていると司令部から艦長に暗号電文が届いた。

シンたちの処遇についてだろうと予想される。

しかしその内容は今回の件について一切不問に処すというものだった。

レストルームに居るとシンとレイが入ってくる。

ヴィーノは彼の処遇についてとても喜んでいた。

アスランがシンに向き直るとシンもアスランに声を掛ける。

その不遜な態度にに小さく鼻で笑った。

「ねえ、シン」

「何。説教?今はちょっと聞きたくないんだけど。ていうか、この処分がザフトの答えだろ?オレ、何も悪いことはしてないってね」

の言葉にさえそんな事を言う。

「聞きなさい」

いつもの飄々とした声ではなく、硬く冷たい声だ。

以前一度だけ聞いたその声に、シンも構える。

「聞いた話だけど。ステラって言ったっけ?彼女を返したとき、相手はもう彼女を戦争には使わないって約束をしたらしいわね?」

「そうだよ!」

に負けまいと言葉を強める。

「けど、ね。約束を破るから、戦争があるってのはちゃんと頭に入ってる?」

の言葉にシンは言葉を失くした。

「でも、それでも...あいつは、ネオは約束したんだ!」

「うん、私だって言えるよ。今すぐノルンに乗るのはやめるよって。で?実際そうなると思う?残念ながら、私がノルンに乗らないと誰もノルンには乗れないし、戦力も落ちるでしょ?それってこの艦にとってどういうことかは分かるわね?」

シンは視線を逸らせた。

「昔、言われた言葉よ。『さまざまな人間の思惑が絡み合うのが戦争だ。何と戦わねばならぬのか、見誤るなよ』。見誤ったら、そこで死ぬのよ」

はそう言って振り返ってアスランの目を見た。

「ま、私が言いたいことはそれだけ。また戦場で彼女に会ったとして、引き金が引けなくなったらあなたが墜ちるのよ。それは、頭に入れておきなさい。生きたいなら、ね。悪いけど、私は彼女がパイロットでも撃つわ。そのことに文句は言わないでね」

そう言ってはその部屋を後にした。

の言葉にシンはきつく唇を噛む。

「ステラは、殺させない」

の出て行ったそのドアを睨みながらシンは低く唸った。









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桜風
09.4.27


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