Like a fairy tale 65





艦が発進した。

艦隊司令部からの命を受けてベルリンへと向かう。

無差別殺戮をしている連合と戦うためだと聞いた。パイロットスーツに着替えてブリーフィングルームに着くとパイロット全員が揃っていた。

と、言ってもパイロットスーツに着替えているのはシンだけだ。あとは、怪我をしていたり機体が間に合わなかった。


ブリーフィングルームのモニタで現状を確認する。

味方が殆ど残っていないようだ。

「どう?」

「不利なんて可愛い表現できないくらいの状況かしら?前線司令部は落ちてるわね、きっと」

モニタを見ていたにシンが声を掛けてきて、彼女は肩を竦めてそう応えた。

「の、割には気楽そうだけど?」

「何でだろうね。それもよく言われるのよ。今回、私もミネルバから離れるわ」

の言葉にシンが驚く。

いつもが艦を守っていた。だから安心していたといっても過言ではなかった。

オーブ沖で戦ったときみたいに艦が危険にさらされるのか...?

シンの表情を見ては苦笑した。

「あのね、この船。戦艦よ?大丈夫。まだ進水式を迎えてないんだから、それを迎える前に落ちれないでしょ?」

の言葉にシンが目を瞬かせる。

「する気?進水式」

「しないと気持ち悪くない?フライングし続けて」

「アンタ、変だな」

「それもよく言われる。何でかな?」

の言葉にシンは応えず肩を竦めてそこから離れて先ほど副長から受け取った敵のデータを頭に入れていた。

もそのデータを見ていた。

受け取って一度目を通してすぐにメカニックに装備の変更を願い出た。

一応、その換装をしてくれているようだ。


コンディションレッドが発令された。

ドックに降りようとしたら艦長からの通信が入る。

名前を呼ばれてシンとはモニタに近づいた。

「情勢は思ったよりも混乱しているわ。既に前線の友軍とは連絡が取れず、敵軍とは今フリーダムとアークエンジェルが戦っているわ」

「そんな!」と声を上げるシンに対しては一瞬視線を向け

「以前の戦闘ではあれを敵艦とみなすと仰いましたが。今回もアレは敵艦で落とさなければならない目標ですか?」

が問う。

!」とアスランが名前を呼ぶが、彼女は相手にしない。

「...彼らの思惑はわからないけど。敵を間違えないで」

艦長の言葉には頷いた。

今、止めなければならないのは連合のほうだ。

フリーダムは一応、それを止めようとしているようだから今は敵ではない。はそう判断したし、艦長が伝えたかったのもきっとそれで合っている。

「戦力が苦しいのは承知しているけど。本艦は何としてもアレを止めなければなりません。司令部はあなたに期待しているわ、シン。お願いね」

「艦長、今回はミネルバの防衛には付かず、ノルンも前に出ます」

「ええ、お願い。私は、あなたにも期待しているの」

「...はい」

艦長との通信が切れた。

「はい、見詰め合ってる時間なんて無いよ。シン、降りるよ」

アスランを睨んでいたシンを促してはエレベータのドアを開けた。

シンは鼻を鳴らしてエレベータへと向かってくる。

「アスラン、あんまり苛めないの」

が呟くように言った。

「別に、苛めてなんかないじゃん」

シンは返してエレベータを降りた。



ノルンは発進し、スラスターを全開にして先行した。

「でかけりゃ良いってもんじゃないでしょうに」

呟いてビームサーベルを抜いた。当たらない弾を使うほど余裕があるわけじゃない。

「フリーダムと共闘できたら楽なのかもね...」

はそのまま目の前の巨大なMSの懐へと向かっていった。

距離を詰めて砲門を確実に壊していく。ヒットアンドアウェイだ。

「左手側から切り崩すから」とシンに通信を入れてその通り、MSの左半分の砲門をつぶしていった。

「左よりも背中のほうが問題だ」とシンに指摘されて仕方なくその背中にある複数の砲門へと向かってサーベルを向けて駆けた。

砲撃を潜り抜けてひとつ、またひとつつぶしていく。エネルギーを充填しているものから潰していっているため、ノルンにも勿論被害は及ぶ。

シンはノルンへの注意を逸らすように敵パイロットを翻弄していた。

ウィンダムから攻撃されたシンの動きが突然悪くなる。

「シン!止まらないで。的になる気!?」

が通信を入れる。しかしそれに反応は無い。艦長もシンの動きが突然止まったことで確認の通信を入れるがその反応も無い。

仕方ない、とばかりにノルンが前に回ってMSと対峙する。

「やめろ!」

シンから通信が入る。

「は?」とが返すと

「それには、ステラが乗ってるんだ!」

と悲痛にも似た叫びが入った。

それでもは剣を引かない。

「言ったでしょ。文句は言わないで、って」

が向かっていくとシンからの砲撃がある。

はそれを全てかわしてそのままMSに向かっていった。

それを止めようとシンがノルンにサーベルを向けて駆けてくる。

「やめろーーーーー!!!」

インパルスがスラスターを切りつける瞬間に、ノルンは急旋回をして上空へと避けた。

「艦長。インパルス、落としますよ。邪魔です」

体勢を立て直したが静かにブリッジに通信を入れた。

「待ちなさい、。シン、何をしているの!」

「司令部が持ち上げるから勘違いするんですよ。って上層部に具申していただけます?」

はブリッジに向けていた通信を切って敵MSへと向かう。

少し大人しくなっていたMSに向かっていったが突如暴れだしたそれが正面のビーム砲にエネルギーを充填させる。

ノルンでは間に合わない、と思った瞬間それを止めたのはフリーダムだった。

敵MSは仰向けに倒れていった。

上空にはノルンがあり、その更に上空にはフリーダムの姿があった。

インパルスはあの巨大MSの元へと降りていく。

は振り仰いだ。

フリーダムはそのまま帰投していった。


ノルンもインパルスの傍に降り立った。

既に彼女は事切れた様子だ。

振り返ったシンがを睨む。

「だから、約束なんて当てにできないって言ったでしょ?連合は何のために彼女のような存在を作ってきたと思っているの?...少し北に行ったら湖がある。結構深いの。そこに彼女を葬ってあげたら?態々湖の中を漁ろうとまでは思わないでしょ。どっちも。やっと静かなところに行けるのよ、彼女」

そう声をかけてノルンへと向かうの背中にシンの慟哭が届いた。









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桜風
09.4.27


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