Like a fairy tale 66





が帰投するとメカニックがシンの事を聞いてくる。

それを含めてか、艦長からも呼び出しがあった。

「シンは?彼はどこに行ったか分からない?」

入室早々聞かれた。

「ステラを、静かなところへ送りに行きました。今回の作戦にエクステンデッドの捕獲等は無かったと記憶しておりますので」

「また、MSを無断で使用したということになるでしょ?」

「...司令部に報告しても、きっとまた不問に処すっていう回答が来ますよ。それに、司令部としてはもう『エクステンデッドは逃亡の末に死亡した』という扱いにしていると聞いておりますが?」

の言葉に艦長は睨んだ。

「シンはもう暫くしたら帰ってきます。彼には、戦う敵が出来てしまったようですから」

の言葉に盛大な溜息を吐いて艦長は退出を促した。

ドアの前で足を止めて艦長を振り返る。

「今度は、どんな命令が下るのでしょうかね。そろそろ、アークエンジェルかフリーダムを落とすようなことを言われると思うのですが...」

「さあ、私には分からないわ。あなたも、適当なことを言ってないでもう下がりなさい。ああ、忘れていたわ」

艦長は言葉を区切った。

「お疲れ様。ゆっくり休めるようだったら休んで」

「ありがとうございます」

は敬礼を向けて部屋を後にした。


休むように、と言われたがはノルンのコックピットに居た。

先の戦闘でこの子には相当負担をかけた。

スピード重視にしたかったからなるべく装備は軽いものを、と思ったのだが。逆にあんな爆発の中を潜り抜けるには軽装過ぎた。

あっちこっちでガタが来ている。

メカニックたちもノルンの本格的な整備は久しぶりで少々戸惑っているようだ。

暫くして、シンが帰投してきた。

声を掛けてくるメカニックに一言も言葉を発せずにドックを後にした。

はその様子をモニタで見ていたが、深い溜息をつくことになる。

シンのその表情は復讐を誓った人間のそれだった。

見たことがある。傷を貰って、ずっと憎悪を抱いていた人物が身近に居たから。

「馬鹿ね。復讐しても何も生まれない」

先の戦争で多くの人間が学んだことだっただろうに。

は呟いてモニタのスイッチを切った。



シンは帰ってからずっとフリーダムの研究を行っていた。

「シン」と同室のレイが声を掛けてくる。

「何」とそっけない声でモニタから目を話さずにシンは返した。

「気づいていたら余計なお世話だと思うが」と断りを入れて話を続けた。

はあのパイロットを殺そうとはしていなかったのではないか、と。

それに対してシンは反発する。

しかし、レイは続けた。

の射撃の腕はお前も知っているだろう?実戦でもその腕は落ちない」

「そ、そりゃ。いい加減たくさん見てきたし。知ってるよ。けど、それが何でさっきの!」

「だから、それに繋がるんだ。あのMSはコックピットが見えていたはずだ。本気で止めようと思えばあのコックピットの開いた隙間からパイロットを狙えばそれで話は簡単に終わる」

シンは息を呑んだ。確かに、は最後までサーベルを手にしていた。

「けど、オレが止めなかったらコックピットに向かって行ってたし」

「コックピットのすぐ傍には、回路が密集している箇所があるはずだ。そこを破壊すればあるいは止まるかもしれない」

シンは目を見開いたままレイを見上げた。

「きっと、彼女は最後までシンの気持ちを汲んでいたのではないか?色々小言を言っているのはお前を心配しての事だろう。アスランに対してもそれなりにキツイ事を言っているようだしな」

確かに、ステラの亡骸を抱いているときに彼女は北の湖の事を教えてくれた。ステラをザフトに渡せとは言わなかった。

そして、ノルンならあるいはそういう戦い方が出来るかもしれない。

に、謝っておいたらどうだ?それに、彼女の力を借りた方が効率が良い」

何が、とは言わないがシンはレイの言いたいことが分かった。

「けど、フリーダムを討つのはオレだ。だってフリーダムには敵わないし。アレが落ちていないのがその証拠だろう?」

「彼女は、フリーダムと戦っていないからな」

静かに言うレイにシンはどういうことか問う。

「彼女は、フリーダムとは1度も交戦していない。まあ、ずっとミネルバの護衛をしていたから前で戦っているフリーダムと戦うことはなかっただけだろうが。今回も、攻撃してこなかったからも攻撃しなかった。おそらく、機体の性能で差は出ると思うがの腕はあのフリーダムのパイロットと並ぶくらいはあるだろう。だから、彼女にシュミレーションに付き合ってもらえればより実戦に近い感覚を得られると思うぞ、オレは」

レイの言葉にシンは俯く。

「謝るのが苦手なのだろうが、考えておいて損は無いと思う。仲間同士、やりやすいに越したことはないだろう?は、頼りになる」

返事のないシンにレイはもう何も言わない。

シンももう分かったようだ。

頭の中で謝る言葉を探す。

ノルンを落とそうとした。にとってあの機体はどれだけ思い入れのあるもか分からない。

けど、凄く大切にしているのは知っている。

彼女のノルンのコックピットに一度座らせてもらったことがある。そのとき、ノルンの話をしていたは凄く大切にしているんだな、って分かったくらいだ。

なのに、自分はステラの事が心配で。彼女が殺されてはいけないとノルンを落とそうともした。

「あとで、のところに行ってくるよ」

シンは呟きレイは「ああ」と返した。









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桜風
09.5.4


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