| ハイネが自宅療養していると誰かがやってきた。 面倒くさいと思いつつも出るとドアの前には懐かしい顔があった。 「ホーキンス隊長!?」 「よー、死に損ない」 軽く手を上げてそう言ったホーキンスにハイネは半眼になって抗議をする。 「もうちょっと労わってくださいよ」 「生きてるやつだから、そういう言い方してんだよ。さすがに死んだやつの墓の前でこんなことは言わない」 ホーキンスの言葉にハイネは肩を竦めた。 「どうぞ」と中へ入るように促す。 「ヤローに花を、なんて嫌だったんだがな。フレイが『お見舞いには花束でしょ!』ってうるさくて。まあ、お前も気持ち悪いかもしれんが、受け取れ」 そう言って持ってきた見舞いの花束を渡した。 ホーキンスの養女の事はハイネも知っており「フレイにお礼を言っておいてください」と返しながら受け取る。 それを適当にテーブルの上に置いて、キッチンでコーヒーを淹れ始めた。 「そういえば、ちゃんとミゲルのヤローは届けました?」 ホーキンスが首を傾げた。何のことだろう?? 「からの手紙。まさか、まだ隊長の手に渡っていないとか?」 「ああ、アレな。届いた届いた」 頷きながらホーキンスが応える。 ミゲルから預かったとジョンから受け取った。 中には、最近のノルンの写真が入っていた。 メモのような手紙に「議長からのもらい物です。預かっておいてください」とあり、自分の見たこと、そして議長の話したことも書いてあった。“ロゴス”の事だ。 あまり雲行きは良くないな、とカインとも話した。 「そういや、お前。に助けられたらしいな。ったく...ミゲルと言い、ハイネと言い。の世話になって生き延びてやがる」 「前の戦争の終結時にあいつの隊の面倒を見たんですから、そのお礼を受け取ったまでです」 少し居心地が悪くてハイネが言う。 ホーキンスは笑った。 「釣りが来るぞ、それだと」 「分かってますよ」 ふてくされながらコーヒーを持ってくる。 「で、ミゲルから聞いたぞ。オレに話があるそうだな」 ホーキンスが本題に入る。 内容も一応聞いている。 「ええ。ミゲルは知っているようでしたが。何故、除隊されたんです?」 「...お前、FAITHだよな?」 応えずに質問が返ってきた。 ハイネは頷く。 「FAITHの意味は?」 「議長、というか、議会からの信任。そして、それに応える存在」 ハイネの言葉にホーキンスが頷いた。 「は、それを断った」 「は!?他の勲章を断ったのは知ってますけど。FAITHも!?」 「オレが除隊した理由もそこにある」 FAITHは議会からの信任で、それに応える存在。 はそれを断り、ホーキンスの除隊もそれに関係しているといった。 「お前さ、議長の護衛で地球に降りたんだろう?」 「え?ええ、まあ...」 「じゃあ、議長が話したことも聞いたか?」 「え?...戦争の終わりとかそういうのですか?」 がホーキンスにあてた手紙にでも書いてあったのだろうか。ハイネは躊躇いがちに頷いた。 「もうひとつ。議長がの娘の写真を何故持ち歩いていたと思う?」 「そりゃ、とイザークが復隊して。ノルンの事を心配してはいけないということで議長が近況を教えるって約束してたんでしょ?」 「何で、態々プラントのトップ自らそんな事をする必要がある?ノルンの近況だったら検閲はあるけど、カインが知らせればそれで済むだろう?じゃあ、何故態々あの狸自らがにそれを届ける必要がある?」 此処まで言われたらハイネにだって意味は分かる。 「まさか...!」 「が勲章を断るのは、あいつの小さな反抗だよ。それくらいなら可愛いものだと狸オヤジも許しているんだろう。勿論、ノルンが自分の手の内にあると思っているからな」 ハイネは信じられないという目をホーキンスに向けた。 「ま、今回のの復隊と、オレの除隊のからくりはこれだ。信じるかどうかはお前の判断しだいだ。ただ、オレがこの話をしたのは、お前を信用しているからだ」 「オレは、何をしたら良いですか?」 ハイネが唸るように呟いた。 「無理にとは言わん。できれば、今の話を胸のうちに仕舞っておいてくれたらそれで良い」 「オレは、何ができますか」 ハイネがまた言う。今度はしっかりとした声でホーキンスの目を射抜くかのような瞳を向けた。 「下手したら殺されるんだぞ?」 「長いものに巻かれろってのは、オレの生き方じゃありませんよ。それに、ミゲルのヤローも手伝ってるんでしょう?ミゲルにできなくてオレにできることがあるはずです」 ホーキンスは「ありがとう」と頭を下げた。 「オレは、あなたの役に立ちたくて偉くなったんです。それなのに、居なくなって...でも、偉くなった甲斐がありました。役に立てる」 「味方は限りなく少ない。けど、皆心強いやつらばかりだ」 「...もしかして、ラスティもですか?」 思い浮かべた後輩。 今は除隊して別の世界で生きている。 「おー、ご名答。あと、他にもな。オレも意外と慕われてたんだなー」 「...本当に“意外と”ですよね」 ハイネの言葉にホーキンスは軽く睨みつけて笑い出す。 ハイネも笑った。 「じゃ、オレは帰るわ。しっかり体を直せよ」 「あ。あの、オレから隊長への連絡は...」 「じきに分かる。ああ、そういえば本物のラクス・クラインがプラントに上がってきているそうだ」 ハイネは驚いた 「本物..ですか?」 「ああ。議長が連れていたのは偽者だ」 ハイネの瞳が揺れる。そんなの全然気づかなかった。 容姿も、声も。あのラクス・クラインだった。アスランだってそういう振る舞いをしていた。 「アスランは、もうとっくにラクス・クラインとの婚約は白紙になっている。それに、声が違うんだと。ニコルが言っていたらしいから、まあ、そうなんだろう。あいつの耳は良い」 ニコル・アマルフィ。プラントでも人気のピアニストだ。元々ザフトに居て、平和のために戦ったということもその人気に一役買っている。 彼も、ホーキンスに力を貸している人物なのか... 「じゃあな」とホーキンスはハイネの家を後にした。 がオススメしないといった理由が分かった。 今までの自分の信じていたものを覆しかねないのが今の状況だ。 だが、ハイネは揺るがない。 ホーキンスがコーヒーを飲み終わったカップをキッチンへと持っていく。 やっと、FAITHになった甲斐と言うものを見出した気がした。 |
桜風
09.5.4
ブラウザを閉じてお戻りください