Like a fairy tale 72





帰艦するとシンはメカニックたちから大絶賛を受けていた。

「本当にやったのか、フリーダム」をと茶々を入れるクルーにも笑顔で応えている。

「気持ちわる...」

突っかかってばかりのシンがこんなにも穏やかに笑顔を浮かべているとは。

はノルンから降りた。

今回、は殆ど何もしていない。

戻るときに海上を見たが、浮遊物が少なかった。逃げ切ったのかもしれない。

フリーダムは破壊されたが、パイロットは生きている可能性もある。

何と言っても、あのストライクの爆発で生きていたパイロットだし、MSが爆発したからと言って必ず死ぬとは限らない。

今では立派にプラントでプロのピアニストをしている人物だっているのだ。



とっととその場を去ろうとしたを見つけてレイと握手を交わしていたシンが声を掛けてくる。

「お疲れ様」

が返すと

「宿題。正解だろう?」

と笑顔で返してきた。

確かに、の思ったとおりの展開になった。

「そうね。ええ、正解よ」

はそう返してその場を去ろうとした。

シンが誰かを見つけてそちらへと向かう。

アスランだ。

「何だって、此処まで来てるかなー...」

は呟く。


アスランはシンから視線を逸らして背を向ける。ドックを後にしようと足を進めると

「仇はとりましたよ、あなたのもね」

アスランがシンの胸倉を掴む。

溜息を吐いてはその2人へと向かった。

「アスラン、やめなさい」

「キラは、お前を殺そうとはしていなかった。いつだって、あいつはそんなこと!それをお前はぁ...!何が仇だ!!」

「何を訳の分からないことを言ってるんです。やめてくださいよ」

慇懃無礼にシンが返す。

「あいつを討てた事がそんなに嬉しいか。得意か!何故あいつが...!」

アスランの言葉にシンが返す。

強い敵を討てて嬉しいのは当然ではないか、と。それの何がいけないのか。

じゃあ、どうすればいいのか。泣いて悲しめというのか。祈れというのか。

それとも、シンが討たれればよかったというのか、と。

アスランは激昂してシンに拳を向けた。

だが、それはの手で止められる。


突然出てきたの手にアスランは驚いた。

は溜息を吐いてアスランの頭をヘルメットで殴った。中々良い音がドックに響く。

「いい加減になさい。見たくないなら出て行けばと言ったでしょう?あなたの着ている服は何?これは、組織の決めたことなの。国が、評議会が。それに従うのが、この制服を着ている人間の仕事でしょう?八つ当たりはやめなさい。みっともないから」

頭を押さえて呆然としていたアスランがを睨んだ。

「うるさい!だが!!あいつは、殺していなかっただろう!誰も、何も」

「...ミネルバの主砲が撃たれて、どれだけの犠牲が出たか、知らないとかは言わせない。海に墜ちたMSパイロット。全員が助かっていると思うの?確かに、彼は直接は誰も殺していない。シンの、インパルスのコックピットも狙っていない。けど彼の砲撃で死んだ人間はたくさんいるわ。MSが墜ちて爆発して死んだパイロットもたくさん居るの。
ねえ、アスラン。いい加減、現実を見て。
...以前、私は感情でものを言うなとカガリさんの事を言いましたが、あなたも感情でものを言うのはやめてください。FAITHのアスラン・ザラ」

の言葉にアスランが俯く。

「やりたいことがあるのに、力があるのに何も出来ない。それが今のあなたよ。あなたは何をしたいの?何を考えて、どう感じているの?今のあなたは、“アレックス・ディノ”と何も変わっていないわ」

はそう言ってドックを後にした。




ステーション待機のイザークはディアッカを伴ってステーション内を歩いていた。

議長が示した対ロゴスの政策により、ザフト内も混乱していた。

廊下を歩いていると談笑している副官クラスの人物の言葉が耳に届く。

その内容があまりにも馬鹿馬鹿しくてイザークは切れた。

「笑い事ではないわ!」

後ろに控えていたディアッカは少し慌てる。

イザークが、突然見知らぬ人間を怒鳴り始めてしまった。

「実際大変なことだぞ、これは!ただ、連合と戦うより遙かに」

「イザーク」とディアッカがなだめるように名前を呼ぶが聞かないのがイザーク。

「少しは自分でも考えろ。その頭はただの飾りか!」

そう言って鼻を鳴らしてまた歩き出す。

ディアッカは怒鳴られた副官たちに視線を向けてまたイザークの後を行く。

「お前の頭は、今に爆発するぜ」

揶揄すると「うるさい!」と怒鳴られた。

「地球の駐留部隊も、混乱してるんだろうな。もしかしたら、此処以上じゃないのか?」

ディアッカは呟いて、しまったと表情を変える。

足を止めたイザークが振り返った。

ディアッカをキッと睨む。

が、肩の力を抜くように息を吐いた。

怒鳴られると構えていたディアッカにはその行動が意外で拍子抜けだった。

「逆に、此処よりは落ち着いているだろう。本部ではないのだから」

そう言ってイザークは先ほどよりは少し歩調を遅くして歩き出した。

「ま、まあ。なら大丈夫だって」

「そんなこと、貴様に言われるまでもなく分かってる」

イザークの返した言葉にディアッカは肩を竦めた。

どうせ、言葉とは裏腹の表情を浮かべているに違いない。

後ろにいる自分には見えないが何となくそう思ったディアッカは溜息を吐いた。

そろそろ、に会わないとイザークも限界かも...

早くミネルバが戻ってこないか。

そればかり最近考えるようになっている自分に苦笑を洩らしてイザークの後に続いた。









Next


桜風
09.5.20


ブラウザを閉じてお戻りください