Like a fairy tale 73





暴徒と化した民衆がロゴスの組織メンバーを次々に殺していく。

それを止めるような演説をデュランダルが行っていた。

はそれを聞きながら思わず鼻で笑う。

そう仕向けたのは自分だろう?

モニタを切って射撃場へと向かう。

ちょっと、最近慣れない役回りが多すぎてストレスが溜まってきたようだ。

「ディアッカって、意外と凄かったのか...」

よく、アスランとイザークが喧嘩、というか、イザークがアスランに突っかかっているとディアッカが止めていた。

煽るときもあったけど、その煽った後は大抵イザークは大人しくなっていた。きっとディアッカなりの止め方だったのだろう。

「今度『尊敬してます』って言ってみようかな。イザークの前で」

その後、ディアッカの辿る運命は容易に想像できる。イザークに無意味に怒鳴られるのだ。

「やっぱ、私はこっちのほうが得意なんだよな...」

エレベータの中で一人は一人呟いていた。




ジブラルタルへ入港した。

レストルームに行くとアスランを除くパイロットが揃っていた。

部屋の中を見渡すと「アスランは居ないわよ」とルナマリアが声を掛けてくる。

ついでに、缶コーヒーも飛んできた。

「ああ、まあ。そうでしょうね」

部屋の中にシンがいるのだ。顔を合わせづらいだろう。

「気にしてんの、

シンが聞く。

は、間違ったことを言っていないと思うが...?」

レイも続けた。

「いや、それでも。ヘルメットで頭を殴ったのだけでも謝らないとね。向こうは素手で、こっちは道具ってアンフェアでしょ?」

「そこぉ?」とルナマリアが抗議の声を上げた。

は肩を竦める。

「これ、ご馳走様」

はそう声を掛けてレストルームを後にした。



出頭命令が出ていたシンが格納庫から戻ってきての部屋を訪ねる。

「どうしたの?」

珍しい客だ。

「これ、議長から預かった。話をする時間が取れないかもしれないからって」

そう言って差し出された封筒の中身は、きっと娘の写真だ。

「ありがとう」

は無造作にそれを受け取った。また釘を刺された。

「うん..あの、さ」

封筒を渡したシンはまだ何か話があるように言葉を探した。

「...入って」

が促し、シンが躊躇った。

「大丈夫よ。シン相手に間違いはないから。欲求不満になったら銃をぶっ放しているし」

と言って笑うにきょとんとしてその後何のことかが理解できたシンは真っ赤になる。

「アンタって人は、本当に!!」

「ほーら。部屋の前で立ち話ってのもね?私は気になるの」

が促してシンは仕方なく足を進めた。


「で?どうしたの?」

シンは先ほどの議長とアスランの話をした。アスランの頑なな態度がどうしても解せないのだ。

「『人は、自分を知り。精一杯出来ることをして役立ちて満ちたりて生きるのが一番幸せだろう』って議長は言ったんだ。オレもそう思う」

「けど、アスランは頷かなかったんだ?」

の言葉にシンは頷いた。

「私も、それには頷かないよ」

の言葉にシンは驚いて顔を上げる。

「私の適正は、たぶん兵士よ。MSパイロット。今いる場所が一番自分の力を発揮できるところだとは思ってる。けど、幸せは感じていないよ。誰に褒められても別に嬉しいとも思わない。正直、最近は子育てに勤しみたいしね。写真でしか娘を見られないって、どうよ?って思ってる。今度帰ったときに『おばちゃん、誰?』とか言われたら私家出するわ」

そんな事をいうにシンは溜息を吐いた。

「じゃあ、何で。アンタはここに居るんだよ」

「物凄く矛盾なんだけどね。出来ることがあるからよ。私にしか出来ないことがあるから。守りたいものがあるから。前に言わなかったかしら?」

「聞いたけど...」とシンは納得いかないようだ。

「まあ、今はこの服を着ているからロゴスと戦うとかそういう命令にも従うし、今地球に降りてきた議長の命じる“敵”とも戦うわよ。安心して。あんまり頼られると疲れるけど、適当になら頼ってもらっても構わないわ」

の、守りたいものって何?」

暫く沈黙していたシンが問う。

「家族よ。ノルン、イザーク。お父様やエザリア様。私の家族が穏やかに笑顔で過ごせる世界、未来が私の守りたいもの。私の描いた未来にジェネシスは要らないと思ったから壊したの。前の大戦の時にはね」

穏やかな表情を浮かべてが言う。

「ふーん...」

「私は、私のエゴでザフトのパイロットをしているのよ」

にこりと微笑んでが言った。

「自分の、家族だけ?」

「そうよ。プラント、世界なんて大きなことは言えないわよ。人が出来ることなんて本当に物凄く少なくて、小さいことなのよ」

「でも、」とシンが反論する。

「でも、議長がしようとしていることは世界の平和のために。そのためにこの戦争を終わらせる戦いをって」

「そうね」

は頷いた。

「あいつは。あの人は何のために戦ってるんだろう...」

シンは呟く。

「きっと、今は彼自身にも分からないのよ。だから、あんなじたばたしてるの」

困ったようにが微笑んだ。

やはり納得いかないといった表情でシンは頷き、

「ああ、そうだ。オレまた格納庫に戻るよ。新しい機体のOS見る?」

と声を掛ける。

は躊躇い、それでも気にはなるため頷いた。

シンと共に格納庫へと向かっていった。









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桜風
09.5.20


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