Like a fairy tale 74





シンの新しい機体、デスティニーのOSを見せてもらった後、傍にいたメカニックに頼んでアスランの新しい期待になる予定のレジェンドのOSも見せてもらっていた。

外は雨が降っている。

戻るとき濡れるの嫌だな、と思いながらレジェンドのコックピットに収まっていた。


突然警報が鳴り始める。

「何?」

コックピットから体を乗り出した。

メカニックたちは混乱している。

「...アスラン?」

直感でそう思った。

しかし、今のは下手に動けない。

「アスランも、決めたか。遅いよねぇ、本当に」

呟きながらレジェンドのOSへと再び興味を戻した。



「何なんですか、あの警報は」

不意にしたから声が聞こえた。シンだ。

よく分からんが、スパイだそうだ。連合とザフトが今此処に集結しているから何と言うかごちゃごちゃしていて何が起こってもおかしくないというのだ。

、議長からの出頭命令だ」

保安要員に付き添われてそのまま議長の部屋へと向かう。

「失礼します」と部屋に入ると議長が「やあ」と声を掛けてきた。

「写真なら、シンから受け取りましたが?」

の言葉に議長はニヤリと笑う。

「アスランが、裏切ったよ」

「...は?」

「君に、彼の追撃をしてもらいたくてね」

は一瞬言葉に詰まった。

だが、すぐに気を取り直して「了解しました。あの警報はアスランですか」と応える。

議長は満足げに頷き、「本当に君はすばらしい戦士だな」と賞賛した。

嬉しくも無いその言葉に「ありがとうございます」と返す。

「ところで、彼を見つけたときは捕獲ですか?それとも...」

が言葉をにごらせた。

「脱走兵は銃殺刑と決まっているだろう?MSで逃げたら、追撃の後、爆破というのが妥当ではないかね?」

つまりは撃墜をするようにということだ。

しかし、敵軍の捕虜を逃がしたシンも似た様な罪状だったはずなのにな、と思いつつも敬礼を向けた。

「了解しました。脱走兵、アスラン・ザラを追撃します」


丁度、アラートが基地に鳴り響く。

が部屋を後にしたとき、議長宛に通信が入った。

「議長、」と通信が入った。

「レイ、君はいい。シンにもそう伝えてくれ」

通信の相手はレイだ。それだけ確認して部屋を後にし、は走った。

「どういうことですか?」

「シルバーレイが出てくれるのだよ」

議長の言葉にレイは驚く。

「彼女が、ですか?しかし、彼女は...」

「大丈夫。彼女は私を裏切らないよ、絶対に。それに、慣れないレジェンドやデスティニーが出るより、歴戦を潜り抜けたノルンが出たほうが確実だ。彼女の腕は、君も保障しているだろう?その機体は君のものだ。調整をしたまえ」

レイは「はっ」と敬礼をして、今の議長の言葉をシンにも伝えた。

本当はレイは議長ほどを信用していない。

だが、彼にとっては議長の言葉が絶対なのだ。

もし、彼の期待に反してが裏切れば、アスランもろとも彼女も滅すれば良いだけの事だ。




はノルンを駆って基地を出た。

すぐにアスランの奪取したグフが目に入る。

「アスラン!」

は通信を入れた。

アスランはその回線を開く。そして、一瞬固まった。

メイリンはが何をしているのかが分からず、アスランを見る。

は、クルーゼ隊に居たころの手信号を向けていた。ブラックボックスには音声しか残らない。

「アスラン、何でこんな馬鹿なことを!」
<言葉では私の言葉に返して。手信号は絶対に使わないで、ノルンの記録に残る。言いたいことは私の言葉に合った感じで返して。後は頷くとかそんな感じで。アスランが大根なのは知ってるけど、良いわね?!>

!」

目が了解と言っている。

「あなたは何でそんなに馬鹿なの!!」
<一応、今のところ私だけが追撃を任されている。けど、さすがに逃がすわけにはいかないの。だから、此処で死んで>

「何を!こそ、何故こうも議長の言葉に!!」

<グフは爆破しないと私も言い訳が立たない。悪いけど、アスラン。メイリンの運を当てにして。アスランって運だけは悪いからね。当てに出来ない>

それなりに裏切り者と追撃者の会話を続ける。

その間、は手信号でアスランに伝える。

まず、ノルンがグフに向かっていくからアスランがノルンのメインカメラを壊す。

そのお陰で目測を見誤ったノルンがグフの左側をそぎ落とす。

ノルンが体勢を立て直す間にそのままコックピットから海に飛び込んで欲しい。

ノルンはそのままコックピットをビームサーベルで爆破させる。

悪いけど、これはアスランとメイリンの運だけが頼りだ。文句は、今度また会ったときに聞く。メイリンにもそう伝えて欲しい。

この通信を自分が終わらせてから5秒後に始めよう。もの凄く無責任で悪いけど、幸運を祈る。

アスランが小さく頷いた。

「アスラン、どうしても戻れないというのね!」

!君こそ、どうしてそんなにザフトにこだわるんだ。どうして!」

「...何を言っても無駄のようね。茶番はお終いよ。此処で楽にさせてあげる」

そう言っては通信を切った。

アスランはログを弄ってコックピット内の記録を停止して手早くメイリンにさっきのとの通信を伝え、「すまない」と謝る。

5秒経ち、ノルンがサーベルを手に突っ込んできた。

グフがノルンの頭部のメインカメラを破壊する。

その体制を崩したままノルンがグフを切りつけた。

アスランはシートベルトをはずしてメイリンを抱きしめてその衝撃に耐え、一緒に海に飛び込んだ。

ノルンは体勢を直してそして、コックピットのあった場所にサーベルを刺して距離を取り、コックピットのハッチを開けてライフルでエンジンを撃ち抜いた。

大きな爆炎が上がる。

すぐにハッチを閉めたため、爆発したMSの破片を受けることは無かったが。ノルンは意外と傷が多くついた。

「アスランの馬鹿...」

センサーで基地の方向を確認してそちらへノルンを向けた。

戻ったら、ルナマリアに何て言おう...

妹を殺した仲間と一緒に戦うのは彼女にとっては辛いだろう。

憂鬱な気分を抱きながらはジブラルタルの管制官へと連絡を入れた。

逃走犯を撃墜した、と。









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桜風
09.5.20


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