Like a fairy tale 75





が帰投し、議長の詰めている指令本部へと向かった。

。出頭いたしました」

「ああ、ご苦労。それで...」

ふと見れば艦長までもいる。

「ご命令どおり、撃墜してまいりました。今は海が時化ているので確認は取れないとは思いますが、おそらく、両名とも生きてはいないと思います」

!」

艦長が彼女の名前を呼ぶ。

「あなた!」

の傍にやってきてキッと睨んだ。

は感情のない表情を艦長に向ける。迷いの無いその瞳に艦長が怯んだ。

「そうか、ご苦労だった。君は休んでくれたまえ。彼らの捜索はこちらのほうで手配しよう」

の退出を促して議長はその場にいる者たちへ指示を出す。


部屋を出ては息を吐いた。

ぎゅっと拳を握る。

「イザーク、怒るだろうなぁ...」

あの議長の事だからきっとイザークにこのことを伝えるだろう。ピンポイントで。

誰に罵られるよりもイザークに罵られるのが一番堪える。

あまり、本気で罵られたことが無いから分からないけど、たぶんそうだ。

はノルンの元へと向かった。





ボルテールの自室にいると、オペレータから通信が入った。

本部から暗号電文だそうだ。

開けてみてイザークは言葉を失った。

「何故...」

丁度書類の配達に来たディアッカが顔色を失ったイザークを見て慌てる。

に何かあったのか?!」

イザークの顔色をこんな風に変えるのは彼女しかない。

「見てみろ」とイザークは椅子から離れて後方のベッドに寝転んだ。

どういうことだ、一体...

「アスランが、脱走。その追撃に向かったのがノルンで、撃墜。まさか!」

ディアッカが振り返ってイザークを見る。

「俺も今見た。信じられん。アスランが脱走したこともそうだが、それをが撃墜したというのは...」

イザークの言葉にディアッカは何も返せない。

は命令に従っただけだ。

その命令をしたのは誰だ?

きっとギルバート・デュランダルだ。今、地球に降りて指揮をしている人物で、とアスランが同期で友人だということは知っているはずだ。

「おい、イザーク。何か添付してあるぜ?」

「何だと!?」

イザークは起き上がり、モニタを覗き込んでいるディアッカを押しのけた。

その添付してあったのはノルンと、アスランが乗っていたグフの戦闘の映像だった。

上空で偵察機か何かが撮ったものだろう。

そして、その映像を見てイザークとディアッカは息を吐く。

上手くごまかしているが、あれはノルンの動きではない。少なくとも、仲間として1年間共に戦ったイザークには分かる。

「けど、それならどういうことだ?アスランはやっぱりザフトから脱走したというのは事実だよな」

「それは、たぶんそうだな。だが、が逃がしてやっている。の信条に反していないと言うことなのか...?」

イザークが呟く。

「...けど、これはアスラン生存説はまずいよな」

の立場が悪くなる。他のやつらがこれを見て気づかないと良いが...」

2人はそれぞれ心配する。の事を。

イザークとディアッカの中ではもうアスランはまだ生きているのは確定したらしい。

暫くイザークはディアッカの持ってきた書類を無視してグフを撃つノルンの映像を眺めていた。

「...それ見ててもの顔は映らないと思うんだけど?」

ディアッカが横槍を入れるが「やかましい」と返してイザークはそのまま映像を見続けた。





翌朝、は改めて議長に呼び出された。

行ってみると何故かシンとレイもいる。

昨日のアスラン逃亡の事を知っているため呼び出されたのだろう。

「すまないね、朝早く」

「いいえ」とは敬礼を向けた。

「昨日は突然大変な任務を命じてすまなかったね」

「いいえ、特に大変とも思いませんでしたから。彼らは、どうですか?」

アスランたちは見つかったのかと聞く。

「いいや、こちらも昨晩から捜索を続けているのだがね。コックピットすら見つからない状況なのだよ」

「コックピットは、見つからないと思います。サーベルで刺した後、ライフルで撃ちましたから。遺体は..残っていないかも知れません」

の言葉にシンが「何で!?」と反応する。

「撃墜を命じられていたのよ。生き残られたら困るから、その命令でしょ?だから、念には念を入れてコックピットの破壊を、とね」

「...ブラックボックスも残っていないと思うかね」

「分かりません。ブラックボックスを気にして撃ちませんでしたから」

の言葉に議長は唸る。

「確かに、君は命令どおり任務を遂行しただけだしな」

そう言ってシンたちに昨日の経緯を説明する。

そして、“ラグナロク”のデータベースへの進入もあったとのことを話した。

「ラグナロク、でありますか?」

シンが聞く。

それは、今回のヘブンズベースを落とす作戦の名前だそうだ。

ノルンに、ラグナロク。同じ神話が集まってしまった。嫌だな、とは素直に思った。

、アスランはどこに行こうとしたと思う?君は彼の同期で友人だ。何か心当たりがあるのではないかと思ってね」

「心当たり、でありますか?アークエンジェルは沈みましたし、フリーダムはシンが討ちました。地球には彼の後ろ盾はありません。かと言って、彼らだけでプラントへ上がることは不可能と考えます」

「そうだな。では、どこだろう?」

「とりあえず、逃げ切って考えるつもりだったのではありませんか?この基地からどこかへ通信が向けられた形跡は無かったのですよね」

「ああ。そうか。君も分からないか...」

今までのアスランの行動について議長が言葉に出しながら思案する。

「もう思い悩まれても仕方の無いことです」

レイが言葉を発した。

「我々がいます。困難でも究極の道を選ばれた議長を、皆支持しています。次の命令をお待ちしています」

そう言ってレイが話を締めくくり、敬礼を向けた。

シンもレイの言葉に共感したように頷き、敬礼をする。

も敬礼を向けて議長の部屋を後にした。









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桜風
09.5.25


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