Like a fairy tale 76





議長との話が終わって、はミネルバへと戻った。

レイとシンは新しく受領した機体で戻るため、別行動だ。

ふと、基地の中に見たことがある人物を目にした。

しかし、着ている服はオーブ軍ではなく、地球軍のものだ。は首を傾げる。

確かに、彼はクサナギで見た人物に似ていたのに...

考えても仕方ないのではミネルバへと急ぐ。


軍本部からの正式な発表はもうされている。

つまり、クルー全員が知っていることになる。が、アスランとメイリンを殺したということは。

少しだけ憂鬱に感じながらドックへと向かった。

ヴィーノのに向ける瞳に剣がある。そういえば、彼はよくレストルームでメイリンと話をしていた。仲が良かったのだろう。

それを流してメカニックを捕まえて整備状況を聞いた。昨日壊されたメインカメラや付けられた傷はもう直っている。

ノルンのコックピットに収まり、OSを立ち上げた。

昨日のアスランとの遣り取りの提出は求められなかった。

だったら消してしまおう。

「せっかくアスランに三文芝居に付き合ってもらったのに...」

ブツブツと文句を言いながらその作業を進めた。


一通り作業を済ませて戻ると、ルナマリアに出くわす。

彼女の目は赤かった。

は何も言わずにすれ違う。

「待って」と彼女に呼び止められては足を止めた。

「本当に、はアスランを。メイリンを撃ったの?」

「本当よ。軍本部から出ている発表の通りよ」

ルナマリアは顔を覆って泣き崩れた。

「悪いけど、謝らないわ。けど、罵声でも文句でも受け付ける。それくらい、お姉さんのあなたには権利があるわ」

「...は悪くないわ。命令に、従っただけだもの。けど、お願いがあるの」

「何、かしら?」

「部屋、交換して。メイリンと一緒に居た部屋に、一人でいることはできない」

ルナマリアの言葉には頷く。

「ありがとう」

そう返されて泣きそうになった。

はグッと奥歯を噛む。一度出そうになった言葉を飲んで「あとで、荷物を持ってそっちに行くわ」と返した。




艦が発進しては少ない自身の荷物を持ってルナマリアの部屋へと向かった。

遺品が整理された後で、もうメイリンの荷物は無い。

「ごめんね、我侭言って」

「いいよ。艦長にはこのことの許可を貰ってるし、手続きは済ませてきたから」

の言葉に視線を落としたままルナマリアは「ありがとう」と返して部屋を後にする。

「やっぱ、同室も嫌だよね」

元々は人数の関係で一人部屋だった。

だから、空いているといったら空いていたのだ。そこにルナマリアが入っても良かったのだが、彼女自身はまだ気持ちの整理が出来ていないのだろう。

きっと、今でもと会話をすることすら嫌だったかもしれない。

は荷物を適当に置いてベッドに寝転んだ。

今度は誰に預けたら良いのだろう?

新しく議長から貰った娘の写真を眺めながら考える。

宇宙の、プラントは今どうなっているのか。

こちらの状況はホーキンスが情報を拾ってくれているだろうが、こちらは向こうの情報が何一つ入ってこない。

あと、どれだけこの服に縛られて命令を受けなければならないのだろう。

暗い考えになりそうだということに気がついてノルンの元へと向かう。

いつ戦闘が始まってもおかしくないこの状況でうじうじ悩んでいるのは体に良くない。


はパイロットスーツに着替えてノルンのコックピットに納まっていた。

それは、ブリーフィングルームに待機しているシンに伝えている。

どうやら、ルナマリアがインパルスに乗るらしい。難しい機体だが、まあ何とかなるだろう。

突然、艦が揺れた。

「奇襲?」

は呟き、現在の状況が判断できる情報を探した。

すぐにコンディションレッドが発令された。

ノルンのコックピットでその戦況の映像を目にする。

プラントのほうからも降下隊があると聞いている。

その中に、ジュール隊の名前を探したが、一応見つからない。イザークは宇宙での任務のままだ。

は安堵の息を吐いた。

だが、安心していられない。こちらもかなりの大ピンチだ。

シンは出撃をせかし、それには議長が応えた。

ミネルバのMSは全機発進となる。

。ノルン、出ます」

は目の前に広がるMSや艦隊の残骸に目をやる。

先ほど、あの基地から放たれた光はジェネシスのそれに似ていた。

スラスターを全開にしてあの巨大MSへと向かっていった。

「図体がでかくて火力もあって?はっ、最強ね!」

敵MSからのビーム砲を潜り抜けてそのメインカメラを潰して両手足の中枢部を撃ち抜く。動けなくして胸の砲門はサーベルで切りつけて潰した。

MSは仰向けに倒れる。もう、攻撃する能力は残っていない。

「次!」とは別の巨大MSへと向かう。

後方にいたシンも何とかやってくる。

「シンは右へ!」

は言ってそのまま左側の1機に向かった。

あれだけの火力を備えていてもノルンは捕らえられない。

全てをかわして先ほどと同じように処理する。

シンも新しい機体、デスティニーのその力を十二分に発揮する動きで敵MSを討っていく。

ノルンの計器、エネルギー残量等を確認しつつ、もう1機、とは駆けた。


その様子を見ていた議長の口角が上がる。

やはり、彼女は使える...

グラディスは奇妙に思った。

はあのベルリンのときにはこんなに動いていなかった。ちょこまかと攻撃を加えてはいたが、ここまでの攻撃力を持っているならあのときももっと上手く動いていたのではないか。

どうして...?

シンもそれは同じ事を思った。そして、レイの言葉が頭をよぎる。は、シンの気持ちを汲んで戦っていた、と。

「本当に...」

ノルンを見る。

3機目に向かっていくその姿に戦慄を覚えた。

強い...!!

今まで戦ったどの機体よりも強いと思ったのは、あのフリーダムだった。

けど、違う。

今、此処で見て、思ったのは...きっと最強の機体はノルンだ。

しか乗せないで不便極まりないその機体に、は信頼を寄せている。機体の限界を知り尽くし、どう動けば機体に負担をかけないか。にとってノルンはあの先の戦争を潜り抜け、今でも共に戦っている戦友だ。

あれは、いつも万全でいられるように調整をし続けてここまでが育てた機体なのだ。

が自分たちのほうへと向かってくる。

彼女は3機目も落とした。

、オレ...」

「凄いわね、シン。あのおっきいの倒したじゃない」

は3機も倒しただろう?」

「壊してないけどね」

そう言って別のMSへと向かっていった。

たしかに、が倒した機体はまだ動く。

四肢がなく、センサーやカメラがある頭部を切り落として仰向けに倒れている。その状態ではもう戦力にはならない。アレだけ大きな機体だから、投げて爆発させる。そういったことも出来ない結局はただの鉄の塊だ。

「やっぱ、凄いよ

呟いての後に続く。

ザフト軍はいつの間にか『シルバーレイに続け』、といった風潮を醸し出している。

その様子を見て、他の国の軍もシルバーレイと呼ばれるノルンに続き始めた。

「これは、一体...」

グラディスが困惑気味に呟く。

「それでも、彼女は勲章を固辞するんだろうね」

デュランダルの呟きにグラディスが視線を向ける。

困ったような表情でモニタを見ているデュランダルの表情はどこか楽しそうだった。










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桜風
09.5.25


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