Like a fairy tale 77






ヘブンズベースを落として帰投したはコックピットから一度も出ずに少しノルンの調子を見ていた。

ちょっと無理させたのは自覚している。

「故障の方、どうですか?」

チェックしてくれているメカニックに声を掛けると「軽傷、軽傷」と軽く返されて一安心だ。

は少し休憩しろよ。さっきの戦闘ではまたしても大活躍だったそうじゃないか」

そう声を掛けられて肩を竦めたは「じゃあ、すぐに戻ってくるから」と声を掛けてドックを後にした。


レストルームに着くと、シン、レイ、ルナマリアが休憩していた。

聞いた?」

シンが声を掛けてくる。

「何が?」

「ジブリールがいないって」

「ああ。メカニックの皆さんが噂してたけど、本当だったんだ?」

そう言いながら自販機のボタンを押す。

「基地が降伏する前に、一人だけこっそりと逃げたらしい」

先ほどシンたちにも同じ説明をしたレイがにそう言う。

「絵に描いたような人だねぇ」

笑いながらはプルトップを上げた。

「笑い事じゃないだろう!何のためにオレたちは!!」

ロード・ジブリールはブルーコスモスの盟主で、ロゴスの中心人物だ。

彼こそ、捉えなければならない人物だと皆は思っているし、もそれは知っている。

缶の中身を飲み干したはレストルームを後にする。

「どこ行くの?」

「ノルンの調整。あの子、手がかかるのよ。だから、可愛いんだけどね」

笑っては出て行く。

「宇宙にだけは、来てほしくない人物よねぇ...」

口の中でそう呟く。

あのジブリールがそらに上がってきたら、碌な事にはならないと思う。それだけは、何としても止めたい。

「次は、オーブかな?」

オーブも少なからずロゴスとのつながりはある。というか、世界中どの国も何らかのつながりは持っているものだ。

そして、今の代表の代理をしている人物は戦争上手な政治家だ。オーブ脱出の際の事を思い出す。

「そういえば、アスランは生きてるのかな?」

一芝居うってまで逃がしたのだから、生きていてもらわないと...



ジブラルタルに戻ってからもノルンの調整は続けていた。

ヘブンズベースでのデータを纏めて、それをOSに書き込んでいく。

次の目標が定まっていないため、今のうちにやってしまおうと思ったのだ。

コンコン、と外から音がした。

「はいはい」と手を動かしながら返事をする。

「今、いい?」

「この状態で良いなら、どうぞ?」

暫く沈黙があった。

あら、不満なのかなと少し反省する。

ちなみに、イザークにはこの体勢で聞くといったら引きずり出されたこともあった。

ああ、懐かしい...

「オレって弱い?」

「うん」

は間を置くことなく、悩むことなく肯定した。

「...少しは悩んでくれても」

シンもさすがにショックを受ける。

「弱い人が強いのですよ」

っていつもわかんないことを言うよね」

ふてくされたようにシンが呟く。

「よく言われてた。『変なことを言うな』とか、『貴様が変なのは今に始まったことじゃないが』とか」

誰に言われてるんだろう、と思いながらシンは溜息をついた。

「レイに言われたの?」

「...なんで分かったの?」

「シンにそこまではっきりと言えて、しかもシンが反発しない相手は一人しか居ないから」

の言葉に言葉が詰まる。確かに、そうかも。

「で?いつ?どういった状況で??」

「夢を、見たんだ。たくさん、今まで殺した人たちの」

「ふーん」とは手を止めずに相槌を打つ。

は、夢を見ないの?...アスランとメイリンの夢とか」

やっとの手が止まった。だから、シンはしまったと思った。彼女ももしかしたら傷ついているのかもしれない。

「見ない、とは言わないわね。けど、あのグフを撃った瞬間のものじゃないわよ。一緒にご飯食べたときのとか、シャワールームで話し込んだときのこととか。アスランに至ってはアカデミー時代にまで遡ってるし」

「あの2人を..その...殺して、は平気なの?」

は深い溜息を吐いてコックピットから出てきた。

「レストルームに行きましょう。喉渇いた」

そう宣言しては出口に向かう。

シンは慌てての後を追った。









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桜風
09.5.25


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