| 「何飲む?」 に言われて首を振った。 だが、「オレンジジュースね」と言ったがそれを購入して投げてきた。 「要らない、って...」 「付き合いなさいよ、それくらい」 そう言いながらは自分の飲むコーヒーのボタンを押していた。 「眠れなくなるよ」 「私の場合、そうでもないの」 そう言ってプルトップを上げた。 「で?レイになんて言われたの?」 一口飲んでが問う。 シンは渡された缶を握ったまま俯いた。 「弱いままでは、何も守れないって...」 「じゃあさ。シンは私って強いと思う?」 が不意に聞く。 シンは渋々頷いた。ヘブンズベースでのは本当に、強かった。 が、は笑う。 「けど、そんな私は自分の思うとおりに思うものを守れないのよ。これでも苦労人なんだ。しかもね、あんまり強くないの。不思議よね」 と言う。 シンが驚いてきょとんとしている。 は手を伸ばして乱暴にシンの頭を撫で回した。 「全部が全部最初っから守れることなんてないし、全部零さずに守ることなんて不可能よ。これは、私の人生経験を元に出した教訓ね。だから、何を守りたいか、誰を守りたいのか。それを考えなさい。全部、なんて欲張りなことを言わないのよ」 シンは「痛いなぁ!」との手を乱暴に払う。 「シン、優しさは弱さじゃないのよ。それを貫けば強さだからね。優しさは宝物だと思いなさい」 そう言って穏やかに微笑むにシンは思わず赤くなる。 それを見ては笑い、「じゃ、いい子にして寝るのよ」と言ってレストルームを後にしていった。 レイに『優しさは弱さ』といわれ、に『優しさは強さで宝物』と言われた。 真逆の事を言われたけど、きっとそれが真実なんだと妙に納得した。 に渡されたオレンジジュースはもうだいぶ温くなっている。プルトップを上げて一気飲みをした。 シンはそのまま自分の部屋へと戻っていく。 振り返ってドックへと続く廊下を見た。 当たり前だがの姿はない。 「お礼、言い忘れた」 シンはそう呟いた。 翌日、ヘブンズベース戦での功績を称えてミネルバのMSパイロットに勲章が授与された。 例によってはそれを辞退する。 授与は、ジブラルタルの基地内で行われた。もそこには同席している。 そして、議長もその場に居り、ネビュラ勲章の授与の後に別の勲章を出してきた。 “FAITH”の徽章だ。 「議長...」 シンの意外そうな声に「不服かね?」と議長が問う。 慌ててシンは否定して、「けど、..」とを振り返る。 この徽章はシンとレイにと言っている。 「ああ、・はこれすら辞退したのだよ。無理やり押し付けるものではないから、彼女の意思を尊重したんだ。彼女の功績はいうまでも無くザフト中に広まっていることだしね。勲章が無くても正当に評価されるよ」 議長の言葉に室内がざわめく。 シンがもう一度振り返るとは肩を竦めた。肯定したのだ。 何で...!? シンは分からない。何故がこうまで勲章を嫌うのか。 「これは、我々が君たちの力を頼みとしている、という意思の証だ。どうかそれを誇りとし、今この瞬間を裏切ることが無く、今後のその力を尽くして欲しいと思ってね」 今回これを授与する意味を議長は伝える。 だからこそ、要らないんだけど...とは思っていた。 別の機会だったら、もしかしたらFAITHなら受けたかもしれないが、今はそれを受け取ることの意味が気に入らない。 本来なら、彼の思うとおりに動くべきだろうが、何せ彼は油断している。 の弱点がいつまでも自分の下にあると思い込んでいる。 ま、せいぜい思い上がっていてください... は少しだけ口角を上げた。 上官たちはその部屋にそのまま滞在して情報交換でも行うのだろう。 今回、たちが呼ばれたのはこの授与式のためだけなので先に部屋を辞した。 「ねえ、。何でそんなに勲章を嫌がるんだよ。“FAITH”まで」 シンがの後を追う。 「興味が無いだけ。というか、勲章をたくさん貰ったらがんじがらめになるの。そうなった人を知ってるからね」 はそう言って少し歩調を速めた。 それが彼女からの拒絶と分かったシンは歩調を遅くする。 2、3歩が先を歩いていた。 エレベータの前で止まる。シンたちも追いついてきて傍に立っていた。 エレベータが来ないうちに議長たちがやってきたのでたちは階段を使うことにした。 しかし、その途中で議長への報告が入る。ロード・ジブリールの所在が分かったというのだ。 それは、カーペンタリアからの報告だという。 「じゃあ、オーブか」とが呟く。 「何で!」 シンが彼女の胸倉を掴んだ。 「たぶん、そうよ。だって、今。あの国に“アスハ”が居ないでしょう?」 シンは目を見開いていた。 そして、議長に聞かれた士官が応える。 「オーブです」 |
桜風
09.6.1
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