| オーブが全てのメディアを通じて議長にメッセージを送るといって放送を始めた。 はノルンのコックピットの中でそれを聞く。 彼女の演説の途中でノイズが流れ、次に聞こえたのはラクス・クラインの声だった。 ラクスはあのロゴスを戦ってまで守るオーブの批判を口にした。 しかし、それも演説の途中でまたノイズが流れる。 そして、現れたのは、やはり“ラクス・クライン”だった。 映像を見て、は一瞬思考が停止し、小さく笑いを洩らす。 杜撰な情報管理だ。 あれだけ情報を操って人心を手に入れていたというのに、結局押さえておかなければならないところは押さえていなかったようだ。 気の毒なことに、彼女は本物を前に動揺していた。 本当の自分の意思で言葉を紡ぐ本物と、書かれた言葉を口にする彼女。言葉の重みが全く違う。 「あっはっはっは!」 はコックピットの中で声を上げて笑った。 「さて、どういいつくろうのですか、議長」 ラクス・クラインの言葉の力を利用したつもりで違うラクス・クラインを用意した。 しかし、本物が現れたら今まで、あの彼女が口にしていた言葉が完全に否定された。そして、支持されるのはどちらか... 「よーし、アスハよくやった!」 テレビを見ながらガッツポーズをする人物が居た。その様子を眉間に皺を寄せて見ていたフレイが声を上げる。 「お父さん!」 ホーキンスは振り返る。 「こっちの準備もだいぶ整った。そろそろ、か?」 振り返った先にいるカインを見て言った。 「が、上がってきたら動くぞ」 「りょーかい」と適当な敬礼を向けてその場を立ち去る。 「...君は、いいのか?本当に。カナーバ家に行っていれば、まず安全だぞ?」 カインがそう声を掛ける。 「いいえ、大丈夫です。こんな恩返しが出来るチャンスは滅多にありませんから。それに、私が居ないと話にならないんですよ、今回は」 そう言って肩を竦めたフレイにカインは溜息を吐いた。 「今の時代。年頃の娘さんは強いな」 呆れたように言う。自分の娘もさっさと守りたいものを守るために戦場へと出て行った。 そして、目の前にいるナチュラルの彼女もまた、守りたいからと言って奔走している。 「無理は、するなよ」 くしゃりとフレイの頭を撫でてカインもそこを後にした。 あるコロニーのカフェテラスで軽い食事を取っていた2人がオーブの演説を見終わって顔を合わせた。 「そろそろ、連絡が来そうですね」 ニコルが呟く。 今度こそ、本物のラクス・クラインが出てきた。 「んー、本当だな。家出の準備できてるか?」 サンドイッチを口にしながらラスティが返した。 「はは、怒られる心の準備くらいならもうとっくに出来てますよ。射撃の腕は、やっぱり落ちてるからそれはラスティを頼ります。よろしく」 笑いながら紅茶を口にする。 「へいへい。お前の手は大切にしないとな。ファンに殺されたくないし、任せろ。けど、シャトルはお前に任せるぞ。普通に飛ばすくらいなら出来るだろう?」 「ええ」というニコルの返事を聞きながらパクパクと残りのサンドイッチも口の中に放り込んでカフェオレで流し込む。 「んじゃ、まあ。に助けられた友の会会長として、頑張りますか」 「...なんですか、そのネーミング」 呆れながらニコルが立ち上がる。 ラスティも立ち上がった。 最近は全く警戒されていない。 ずっと静かに我慢していたのが良かったのか。 それとも。自分たちが気付いていないだけなのか... どちらにしても、連絡があればいつでも出られるように心の準備だけはしっかり出来ている。 「姫を護衛って、オレらってナイトじゃん?」 「...まあ、そうですね。ああ、シャトルの中ではあんまり、言わないほうがいいと思いますよ。これ、僕からのアドバイスです」 ニコルの言葉に首を傾げてラスティは頷いた。 本当に分かってるのかな、と思いながらも、まあ他人事だしと思ってニコルは念を押さずにそのカフェを後にした。 本物が現れてから、今までラクス・クラインを演じていたミーアは議長に身を隠せと指示された。 悪いようにはしない、と彼は言うが恐怖が消えない。 以前、アスランが言っていた。 議長は、自分の望んだ役割を演じるものしか認めない、と。 ミーアはラクス・クラインを演じ続けることが出来なくなった。つまり、議長の認められない存在だ。 そして、議長にとって都合の悪い、認められない存在の行く末は目にした。 アスランと同じく、簡単に殺される。 議長はミーアに感謝の言葉を口にした。 サラ、と呼ばれる女性がミーアの護衛として一緒に行動することになった。彼女に引きずられて彼女は身を隠すために月に向かう。 どうしようもなく、不安だった。 |
桜風
09.6.8
ブラウザを閉じてお戻りください