Like a fairy tale 83





「いつまでそうしてむくれているつもりだ?」

イザークが溜息混じりに声を掛けてきた。

「べっつにー」と言うに再び溜息をついて、

「今、此処で。始めてやろうか?説教を」

というとは大人しくなる。まあ、不満顔は浮かべているが。

「部屋はどこだ?」というイザークに「こっち」と言ってが案内する。

「というか、何で本当に来ちゃったのよ」

「仕方ないだろう。これも命令、仕事だ。...は、俺に会いたくなかったのか?本当に」

は振り返ってまた前を見る。

イザークは小さく息を吐いた。

「馬鹿なことを言わないで」と目が言っていた。これで「ええ、その通りよ!」とか言われたら少々どころではない衝撃が自分の胸に突き刺さっていただろう。

を前に、イザークが後ろを行く。

すれ違ったクルーが小さな悲鳴を上げた。怖いとかそういうのではなく、黄色い感じの。

振り返って数ヶ月ぶりのイザークの顔を見る。

さっきまでは後ろめたさで中々直視できなかった。

「ん?」と首をかしげるイザークに「なんでもないよ」とは返した。

性格はアレだけど。確かに、顔は整っているしなと納得する。


「ここよ」

ドアを開けて部屋の電気を点ける。

イザークはに続いた。

「2人部屋か。まあ、そうだろうな」

「でも、この部屋の住人は私だけ。実質一人部屋よ」

の言葉にイザークが眉を上げる。

「もう一人、パイロットが居ただろう?赤い髪の」

ブリッジにはこの艦のパイロットが全員集まっていると道すがら副長が言っていた。

「あの子、前までオペレータの妹と同室だったのよ。で、その妹が居なくなって私と部屋を交換。だから、前は此処が彼女の部屋だったの」

の言葉に「そうか」と返した。

戦艦で人が減ったということは、その原因はあまり良いものではないだろう。しかも、オペレータだったら尚更だ。


「ちょっと待っててね」と言ってが部屋を出ようとした。

「どこに行く」

イザークは反射的にの腕を掴んでいた。

「え、いや。レストルームでドリンクを買いに。この部屋、コーヒーとか淹れられないからさ」

そういうを引き寄せてイザークは力いっぱい抱きしめた。

手を伸ばして部屋のロックも掛ける。

「ちょ、と..イザーク?」

突然の抱擁には困惑した声を上げる。

「黙ってろ」

そっと囁かれては大人しくなった。

ゆっくりと自分の腕もイザークの背に回す。

暫くしてイザークの体は少しを自由にした。

そして、彼は目の前にある彼女の額に唇を寄せる。

はくすぐったそうに肩を竦めた。

瞼に、頬に。

目に入るところに次々とキスをしていく。それがくすぐったくては体を捻ったがイザークの腕はを離そうとしない。

唇にも暫く啄ばむようなキスをしていたが、それは次第に深くなっていく。


長い時間重なっていた唇が惜しむように少しだけ離れる。

ふと気がつくと上着が着崩れている。

「待て待て待て...!」

は慌ててイザークの胸を押した。

の首筋に唇を寄せていたイザークは顔を離して眉間に皺を寄せる。

「イザーク、何しに来たの!?」

の言葉にチッと舌打ちして彼女から離れた。物凄く不機嫌だ。

、此処に座れ」

そう言って指差したのはベッドだ。しかも、が使っていない方の。

はそこに座ろうとして足を止めた。

「上着、皺になるから」と手を伸ばす。

イザークは渋々上着を脱いでに渡した。

「ブーツも脱いでね」

「こっちは使っていないだろうが」

と文句を言いつつも面倒くさそうにブーツを脱いだ。

がベッドに腰掛、イザークがの脚を枕にしてごろりとベッドに寝転ぶ。

「硬い...」

「筋トレしてますから〜」

軽い口調でが返した。

イザークはチッとまた舌打ちをした。

はイザークの髪を梳き、頬も撫でる。イザークはくすぐったそうに顔を背けた。

「何でそんなに体はボロボロな感じなのに、髪と肌はすべすべなのかなぁ?」

が呟く。

は、思い切り顔に出るからな。疲れとか、そういうのは」

「...この艦の誰にも気付かれていないけどね」

苦笑しながらが応える。イザークはその言葉に少しだけ胸を痛めた。









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桜風
09.6.8


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