| アカデミー卒業生、来賓が揃い、パーティが始まる。 評議会はまだ終わらないらしい。 司会者が何か言い、そして、何故かの父、カイン・に挨拶をなどと話を振っていた。 周囲からは期待をこめた拍手が送られ、カインは回避不能となる。 思い切り溜息を吐き、仕方無しにマイクの前に立った。 「だから、ザフトの会合は嫌いなんだ。が、来てしまったものは仕方ない。そして、突然話を振られて正直何を話したらいいのか分からない」 一言そう言って一度目を瞑る。 「生きろ、か?」 ざわり、とホールの中で動揺の色が広がる。 「君たちは、アカデミーを上位の成績で卒業した。それは必然的に周囲からの期待も大きいものとなるだろう。 だが、そんなの気にするな。君たちがザフトで、本格的に戦闘に加わり、そして守るものはこのプラントではない」 とイザークは顔を見合わせる。 他の人物も多少なりとも困惑しているようだ。 一番困っているのは、ザフトの、このパーティの主催だろうが。 「君たちが守らなければならないのは、君たち自身の未来だ。未来を守るために戦うのに、命を捨てるのは矛盾だろう?意味がないことだ。 地球軍の捕虜になるくらいなら、死んだ方がマシ?はっ。生きてるほうがマシに決まっている。 君たちが引き金を引くのは、自分の未来を守るためだけにしておくといい。兵士は人ではない。が、ただ私怨のために人を殺せばただの殺人者だ。地球軍、ナチュラルも我々と同じく命を持って生まれて来ているんだ。 命は全て、平等だ」 カインの演説はまだ続きそうだったが「ありがとうございました」と司会者が話を締めくくった。 カインは意外そうな表情を見せたが、その近くでホーキンスは深い溜息を吐いた。 「なんだ、もう良いのか?」 「はい!本当にためになるお言葉、ありがとうございました!!」 司会者はカインにしゃべらせないようにするために必死だ。 かわいそうに思えてきてホーキンスがカインを回収した。 「可愛そうに。あいつ、減俸とか食らうんだろうな。下手したら降格だ」 カインはふん、と鼻を鳴らす。 「オレは、ザフトの会合は嫌いだと公言しているんだがな」 「ああ、大丈夫だ。もう二度とお前に演説を頼むザフトは居ない」 ホーキンスの言葉に「そいつは重畳」とカインは呟いた。 「なんか、すげーな。色んな意味で」 ディアッカが呟く。 は苦笑するしかなかった。 あれは父がいつも言っていた言葉だ。彼自身、その精神に則りMSで宇宙を駆っていた。部下にもそう言い聞かせていたらしいが、それを素直に聞くことが出来ない血気盛んな部下が地球軍を深追いし、寸でのところで帰らぬ人となったらしい。 彼は生きている。が、もう軍には戻れない体となり、そして、それを助けに行ったの父も、パイロットとして戦場を駆ることは出来なくなった。 帰ったときには、守ろうとしていた未来はもうなかった。最愛の妻が、死んでいたのだ。それも、1年前に。 誰も連絡を送らなかった。 違う。 祖父はその知らせを送ったが、父の元にまで情報を送らなかった。軍の本部が。 だから、父は軍に未練を残すことなく辞める事ができた。 父は退役してもザフトや国防委員会から色々と声がかかってきていたが、全て蹴っている。 今までザフトにもたらした功績により、退職金が莫大あると言っていた。 だから、躍起になって働かなくても生活は出来るし、ザフトや国防委員会以外での働き口やコネくらいあると言っている。 は、父の決める事だからと思って口を出さない。 「お前さ。今、ここにパトリックがいたら殺されてたかもしれないんだぞ?」 ホーキンスが声を潜めていう。 パトリック・ザラ。 国防委員長で、血のバレンタインによって妻を失った。そして、と同じくトップでアカデミーを卒業したアスラン・ザラの父親だ。 そして、彼は血のバレンタイン以降、執拗にカインを国防委員会に勧誘してくる。 「アイツ、最近少しおかしくないか?」 カインの言葉にホーキンスが眉を顰める。 「パトリックか?まあ、最愛の妻を核で殺されたんだ。ナチュラルに。少しは、おかしくなるだろう?お前は、そうじゃないのか?だって、そのためにザフトに入ったんだろう?」 ホーキンスの言葉にカインは首を振る。 「は、母親の死にナチュラルが関係しているとは知らないさ。誰も、教えていないのだから」 「...ブルーコスモスだって聞いたぞ?」 さらに声を潜めてホーキンスが言う。 「らしいな」と皮肉っぽく笑った。 「オレだったら、さっきのお前のような演説は出来ないぞ」 その言葉に自嘲気味に笑う。 「確かに、ブルーコスモスが妻を殺した。が、その後ザフトは妻の死をオレに知らせなかった」 「そりゃ、戦局が激化していて...」 そう言ったが、カインの視線を受けて思わず口を噤む。 「わるい」 「いいや。お前はオレと一緒に戦った戦友だ。一緒に最前線でMSに乗っていたんだ。お前には全く非はないよ。けど、オレはザフトもブルーコスモスも同じくらい嫌いだ」 カインの言葉にホーキンスは何も言えない。 「だけど、の未来はのものだ。あの子がザフトに入りたいと言えば止めない。実際、オレはあの子に体術やら射撃やらを教え込んだしな。ただ、..ザフトで隊長をやっているお前の前で言うものどうかと思うが..」 そう言って一度言葉を区切る。 「言えよ」 「あの子は、オレのように“ザフトの・”ではなく、“・”であり続けてほしいと願うばかりだよ」 ホーキンスは俯いた。 「けど、世間がそうはさせてくれないぞ。何せ彼女は本物の“”、カイン・の娘なのだからな」 カインの胸にホーキンスの言葉が鋭く刺さった。 |
桜風
08.1.28
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