Like a fairy tale 85




たちが出て行ったドアを呆然と眺めているミネルバクルーに苦笑をして「艦長、話を始めても?」とディアッカが声を掛けた。

「え、ええ。お願いします」

ディアッカが話し始める。

最新鋭の戦艦であるミネルバにはFAITHが3人も居て、さらにシルバーレイが居る。当然に最前線だという意見は一致していた。しかし、ミネルバは他艦隊とは合流せずに現ポイントで待機となっている。

補給は地球でしてきたばかりだからすぐには必要ないだろう。取り敢えず、多方面に動ける艦を配置しておきたいと考えたようだ。

ただ、そのブリーフィングで話が出たのはそれだけだった。それ以外具体的なことは何一つ決まっていない。

まだ揉めている事は沢山ある。あのラクス・クラインの存在もその揉め事のひとつだ。

「ま、皆さんも思ったでしょうが。何も具体的なことは決まっていないんですよ。それなのに、この艦へ我々が派遣されて、皆さんの時間を割いたことは申し訳ないと思います」

ディアッカがそう言って締めた。

「いいえ、参考にはなったわ」

グラディスが返す。そして、チラリとクルーたちを見た。ディアッカに対して興味津々の視線を向けている。

注意しようと口を開くと

「いいぜ。あの2人はアカデミーのときから知ってるし。教えられることなら教えてやるよ」

とディアッカが許可をした。

驚いた表情でグラディスがディアッカを見る。

ディアッカは肩を竦めてルナマリアを見た。最も興味津々の視線を送っている。ちなみに、次点は副長のアーサー・トラインだ。その状況には溜息を吐きたくなる。

「あの。ジュール隊長とは昔からああだったんですか?」

「まあ、な。“ああ”だったよ」

そう言ってディアッカが話す。イザークがどれだけの世話を焼いて口やかましく色々と言っていたか。

ブリーフィングの5分前にの姿がブリーフィングルームに居なかったら部屋まで迎えに行き、たたき起こして時間に間に合って部屋まで連れてきていたこと。

ノルンにかかりっきりになって、朝昼の食事に来ていなかったと食堂のクルーに聞くと夕飯は引きずってでも食堂へ連れて行っていたこと。

メカニックから2日連続でほぼ徹夜していると聞けば、その日の夜は強制的に部屋に閉じ込めて廊下で見張りに立っていたこと。

などなど...

「オレがザフトを離れて、あいつらに再会したとき。イザークの隣にが立っていて。それは凄く安心した」

「そんなにだらしないのに?」

今までそんな人だとは思っていなかった。シンは聞く。

「まあ、船の中ではイザークがの面倒を見てる感じだけど。船の外ではがイザークのフォローをずっとしてきてたからな」

懐かしそうに目を細めた。

突っ走るイザークに文句を言いながらは必ずフォローを入れていた。

「オレらが居なくなって。アラスカではサイクロプスに巻き込まれて死にそうになったけどフリーダムとアークエンジェルに助けられて助かったし。その他も、あの2人はずっと同じ場所にいたんだ」

「ちょっと待って」とグラディスが話を止める。

「今、“フリーダム”と“アークエンジェル”って言ったかしら?」

「ええ」とディアッカは頷く。

「どういうこと?」

「サイクロプスの件でアークエンジェルが地球軍から離反したのはご存知ですか?」

グラディスは首を振る。

「たしか、それが直接の原因だったはずです。そして、ザフトの大半はあのアラスカに集結していた。クルーゼ隊も例外ではなく。そんな中、サイクロプスの爆発が起こった。たちが居たところはその爆発の範囲内にあった。だから、はデュエルを連れてそこから離脱しようとした」

しかし、2機分を支えるのが精一杯のノルンの推進力ではサイクロプスの爆発に巻き込まれることは必至だった。

イザークに手を離せといわれた。だけでも助かるように、と。それでも、はデュエルを離さなかった。

そして、寸でのところでフリーダムが手を貸してくれてその空域を脱することが出来たそうだ。

「じゃあ、にとって、フリーダムとアークエンジェルは恩人のようなものなんですか?」

「ああ、そうだな。けど、ちゃんと借りは返したぜ」

ディアッカの言葉に驚く。

第二次ヤキン防衛戦の折に、アークエンジェルに向けてドミニオンが放った主砲の軌道を変えて艦を助けたという。

「だから、借りが有るとかそういうのはは考えないし、艦長も心配することはありませんよ」

がフリーダムに助けられたという話を聞いてから厳しい表情を浮かべていたグラディスにディアッカが言う。

それを聞いて「そうね」と彼女も頷いた。彼女は先のオーブ近海であのフリーダムと互角に戦っていた。心配は無い。

「そういえば、って。食事、取らないんですか?」

思い出したようにルナマリアが言う。

「そ。ノルンの調整に集中し始めるとな。ん?けど、知らないってことはちゃんと食べてたんだな。感心、感心」

ディアッカ頷いていると「そうでもないのよ」とグラディスが苦笑しながら口を開く。

「一時期ずっと寝ないし食事も取らないってのがあったの。すぐにそれは解消されたけど。アスランが来てからは、彼が気にかけてくれていたみたいなのよ。彼女のそう言ったことを知っていたから」

“アスラン”という単語にクルーたちは沈む。

が、

「へー。自分がイザークの代わりをしようとか思ったわけね。荷が重すぎただろうなぁ。って結構我侭なところあるみたいだし」

とディアッカは苦笑しながら呟く。

が、彼を討ったことは...?」

聞きにくいことだけど、というようにグラディスが聞いた。ディアッカがアスランと同期なのは知られていることだ。

「ええ、本部の発表は聞きました。けど、仕方ないですよね。脱走は銃殺ものですから。って、この私が言うものどうかと思いますけど」

皮肉っぽく肩を竦めてディアッカが言う。

「イザークもかなり驚いていたけど。が選んだことだから仕方ないって」

「“仕方ない”、でありますか?」

シンが問う。

「ああ、仕方がない。軍人ってのは組織の中にあって、そして自分の信念を持っているものだと思う。プラントを守りたい、とか。家族を守りたい、とか。お前らもあるだろう?」

皆は頷く。

にもある。あいつは、自分の信念の下に引き金を引くと決めている。だから、外野が何を言ってもダメなの。それに、アスランも分かってただろう。脱走の先に待っているのが何かなんて」

重い空気がブリッジに広がった。










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桜風
09.6.15


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