Like a fairy tale 88






コンディションレッドが発令された。

敵の制空圏内に入ったらしい。

、大丈夫か」

レイから通信が入った。

「大丈夫よ。むしろ、あの2人を心配したら?」

「タイミング、誤るなよ」

「そっちは自分の心配をして。大丈夫、何かあってもどうにでもするから。それより、今度は逃げられないようにね」

レイは言葉を返さずに通信を終わらせた。


―――忘れるな、俺がいること。

先ほどそんな言葉を聞いたばかりだ。は目を閉じて左手の薬指を触った。

「大丈夫」

口の中で呟き、発進命令を待った。

あれは、もう撃たせない。

ノルンが発進し、そのままスラスターを全開にして飛行する。


まっすぐ、言葉の通りそのまままっすぐ目標へと向かって行った。

目の前に立ちはだかるMSは頭部を撃ち抜き、MAはエンジンを叩き切る。

まっすぐ伸びるその白銀の光を止められるものはなかった。

デストロイ、と呼ばれる連合の最終兵器と言えるMSも出てきた。

それにすらはまっすぐに突っ込んでいく。

足部を切断し、エンジンを撃って動けなくしてそのまま進む。

後続のデスティニーとレジェンド、インパルスは遙か遠くにおいてきた。

「さすがだな...」

レイが感心したように呟く。

シンもの動きには驚いてばかりだ。あんな動き、見せてもらったことがない。

、行けそうね」

ルナマリアが通信を入れる。

「余所見をするな」

インパルスを狙っていたMSをレイが落とした。

レイの言葉にルナマリアは少しむくれたが、気を取り直して敵機を落としていく。


「...あれか」

は目標を見つけて進入していく。

データの通りに飛行してコントロールルームに出た。

はそのまま引き金を引き、コントロールルームの爆破を終了させた。

ついでに、レクイエムの破壊を、と思ったがどうにも今のノルンの火力では足りない。

「どっかに核落ちてないかな...」

呟いて周囲を見渡すが、地球軍の基地と言うのに核が装備されていない。

まあ、こんなところで誘発または暴発したら自分たちがひとたまりも無いのだから当然だろう。

「...地球軍の艦に核エンジンを搭載しているのはないのか?」

格納庫へ向かってみると、デスティニーが破壊活動を終わらせていた。

、コントロールルームは?」

「落とした。これ、シンが壊したの?」

「そう..だけど...何かまずかった?」

作戦に無かったからまずかったかと思ったらしい。少し小さくなっている。

「ううん、いいよ。上がろう。上の方が気になる」

は言って上方へと向かった。


月表面に出てくると、大きな爆発を目にする。

「ジブリール?」

レイに通信を入れた。

「ああ」と短い返事がある。

さて、次は何を敵とするのか...

ロゴスを討った。では、次は...?

は地球のほうを見る。

「オーブ、かな?」

呟いてはミネルバに向かって進路を取った。


ミネルバに帰艦するとメカニックたちに迎えられる。

「たぶん、あまり傷はないと思いますが...」とは声を掛けてそのままドックを後にした。

に何か声を掛けようとしていたメカニックも居たが、何故か声を掛けづらくて皆口を噤んだ。

着替える前にブリーフィングルームのモニタを点ける。

あの中継地点の戦闘の模様だ。被害状況とか何か分かるものは無いのか...

、居る?」

ブリッジから通信が入る。

「はい」

「ジュール隊長は、ご無事よ。安心しなさい」

は息を吐き、

「ありがとうございます」と返して更衣室へと向かおうとした。

「ああ、待って」

足を止めて振り返る。

「ありがとう。あなたが居るのがこんなにも心強いなんてね」

「買いかぶりすぎですよ」

はそう返して今度こそ更衣室へと向かった。




プラントに放送された映像を見て、目を眇める。

月面都市、コペルニクスに居たのはホーキンスだ。

「んー、ノルンの動きは流石だな。現役時代のお前を思い出すよ」

誰も居ない部屋でそう呟いた。

父親譲りのその戦闘のセンス。技術も勿論だが、その勘の良さ。

思わず唸ってしまう。

隣の部屋から子供の泣き声がした。

「どうした、ノルン?」

ホーキンスが顔を覗きこむとぴたりと泣き止む。

「...なんでお父さんは声を掛けただけなのに、ノルンは泣き止むの!?」

不服そうに頬を膨らませるのはフレイだった。

「だって、な?やっぱオレって素敵なオジサマだし?てか、ノルンはオレの事を父親とか思っていないか?」

「...それは、イザークがあまりにも不憫です」

一緒に居たエザリアが苦笑した。

忘れられるだけならまだしも、別の人物を勘違いして父だと思っているとなったら、イザークはどれだけ落ち込むか...

「まあ、今回のイザークは。うん、不憫だな」

ディアッカとセットとはいえ、自分だけが知らされていない事実。それを知ったときイザークはどれほど傷つくか。

って、意外と酷いな」

ホーキンスはニッと笑って娘とエザリアに言う。

「そうですね」とエザリアは頷き、「まあ、今回は仕方ないわよ」とフレイが庇った。









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桜風
09.6.22


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