Like a fairy tale 90





「あぶない!」

ミーアがラクスを庇って前に出る。

銃声が鳴った。

アスランは銃を構えたが、ラクスを狙って引き金を引いた女は倒れていた。額から、血を流して。


「大丈夫か」

不意に掛けられた声に振り返る。

「...ホーキンス隊長!?カイン、殿も」

それぞれ利き手に銃を握っている、ザフトを引退した先輩が立っている。

「アスラン、気を抜きすぎだ。殺さないのなら最後まで気を抜くな。MSが来ていてもパイロットが気付かなかったらただのでっかい置物だぞ。てか、何だこの金ぴか。趣味悪いぞ?目が痛くなる...」

ホーキンスが言って金色に輝く暁を見上げた。

「大丈夫か」とカインが腰を抜かしたらしいミーアに手を伸ばす。

「ありがとう、ございます」

ミーアがカインの手を取って立ち上がった。

「つか、カインの腕は流石だな」

パシパシと親友の肩を叩きながら上機嫌にホーキンスが言う。カインの眉間には深い皺が刻まれる。

「え?」と言いながら眉間に皺を寄せてアスランが首を傾げた。

「銃声、3つしただろう?ひとつはあの女がラクスを殺そうとしたもの。ひとつはオレで、今あの女の眉間に食い込んでるヤツ。最後のは、カインがその女の拳銃から出てきた弾丸を撃ったんだ」

アスランが目を丸くしてカインを見た。

もこれくらいならできてたぞ。まあ、ノルンが出来て、イザークに射撃禁止令を出されて1年以上銃を触っていなかったからもう無理かもしれんがな」

静かに返す。

「んで、また何かやってんだろ、お前等。第3勢力ってヤツだな」

ホーキンスが楽しそうに笑う。


「お父さん!」

キラが驚いて振り返る。

「フレイ!?」

「キラ!」

「何だ、フレイ。コイツと知り合いか?」

ホーキンスが聞くと、フレイはぎこちなく頷く。

「友達、なの。前の戦争のときから。ヘリオポリスのカレッジが一緒だったの。友達が、彼と同じゼミだったし。アークエンジェルのときも...」

フレイの返答を聞いてホーキンスは数回頷き、「そりゃ、フレイが世話になった」と軽く頭を下げた。

「フレイ、『お父さん』って?」

フレイの父は亡くなった。キラが、守れなかったもののひとつだ。

フレイは視線を少し彷徨わせる。

「オーブに帰っても身寄りが無かったし。あまり、帰りたいと思わなかったの。だから...」

の友人というから、まあ、うちに居てもいいぞって話で。戸籍がないと色々と生活をするのに不都合だから戦後のどさくさに紛れて養女にしたんだ。養えるくらいの甲斐性はあったしな」

「フレイ。オーブに帰りたかったら今すぐ帰りたいと言っても良いからな。こいつにあわせてやることは無いぞ」

カインが口を挟む。

「ひでー!」とホーキンスが嘆いた。

「って、違う!ほら、寄り道している時間は無いのよ。急がないと!だから言ったのよ、お父さんは時間にだらしないって!!」

フレイに促されて「へいへい」と適当に相鎚を打ちながらホーキンスは劇場の外へと向かう。

が、途中で足を止めた。

「おい、えーと。ラクスじゃないラクス」

ミーアに声を掛ける。

「一緒に来るか?オレたちは今ある人物の安全を図るために動いているんだ。デュランダルの監視の目が届かないようにってな。どうする?」

「ミーア。あの方は信じられます。わたくしたちと共に戦うと仰るなら歓迎いたします。ですが、それと同時に危険も伴います」

「まあ、うちも全く完璧安全って言い切れないけど。フレイや君は戦場に向かうわけじゃない。一応、護衛もついてるしな」

ホーキンスが補足する。

「でも...」

「ミーア。行ったほうがいいと、オレは思う。あの2人の腕はさっきも見ての通り確かだし。ラクスの言ったように信頼も出来る。この戦いが終わったら、またラクスと話をしたら良いだろう」

アスランもそう言う。

「あの、本当に...」

ミーアがおずおずと聞いた。

「いいって言ってんだろ、来いよ。アスラン、お前らは第3勢力になってるな。オレたちは第4勢力になる。って、バルトフェルドに伝えてくれ。じゃ!」

そう言ってホーキンスはミーアの手を引いて劇場の外に向かった。


「カイン殿!」

ホーキンスと共に劇場を後にしようとしたカインは、アスランに呼ばれて振り返る。

が、助けてくれました」

「ああ、分かっている。映像を見れば、な。あの至近距離だったのに、お前が今此処に居るということは、そういうことだ」

カインが返した。

「はい...」

「お前がノルンの頭部を破壊したように見えるが、あれはが最小限の破損で済むように動いていたし、殺すつもりなら最初にコックピットが開くように側部を切り落とす必要は無かった。お前が海の中に逃げられるように道を作り、あとはもぬけの殻になったコックピットを破壊すれば、生きたお前が発見されないかぎり、死んだことになる。ついでに、ブラックボックスも至近距離で切って撃てば壊れるものだろう?」

「でも、なぜ...?」

は、ずっとFAITHを断っている。それが、理由だ」

カインはそう言ってホーキンスたちの後を追った。

「...今の人は?」

キラが聞く。

「カイン・の父上で、オレの父の親友だ」

カインの背中を見送りながらそう応えた。









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桜風
09.6.29


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