Like a fairy tale 91





劇場の外に待たせている車に乗った。

「...増えてるんですけど?」

運転席に座るラスティが振り返る。

何か、一人増えてる。

「ああ、目的も達した。ほら、出せ」

ホーキンスが後ろから運転席を蹴った。

溜息を吐いてアクセルを踏む。

「大丈夫なんですか、こういう予定変更」

「あのシャトルにゃ乗るだろう?余裕があるんだ。みんなで楽しく避難しとけ」

「楽しく、ねぇ...」

溜息交じりにラスティが呟いた。

「あの、本当に...」

何だか歓迎されていない様子だ。ミーアが申し訳なさそうに声を掛けてくる。

「ああ、気にすんな。これくらいで動揺しているのはこいつの能力不足だ。で、お前名前は?」

「...名前も知らない子を攫ってきてどうするんですか。ロリコンの気でもあるんですか?!」

助手席に座っていたカインが喉の奥で笑う。そういえば、ホーキンスはずっとそういう発言ばかりしている。

「うるさい!で、名前は?」

「ミーア。ミーア・キャンベルです」

おどおどとそう応えた。

「オレは、ヴァン・ホーキンスだ。で、その顔は自前か?」

ミーアは俯いて首を振る。

「傀儡にするのには、姿も必要だからな」

カインが呟く。

その言葉に、ミーアは顔を上げた。“傀儡”。確かに、そうだった。議長の望む言葉を望むタイミングでメディアを通じて発信していた。

「わ、私...」

「で、年は?」

動揺しているミーアにお構いなくホーキンスが続ける。

「え、あの...17、です」

「あら、私と同じね」

唯一の女性のフレイが話に入る。

「そうか。ラクスは..18だったか?」

「確か、そうですよ。アスランと同じ年ですから」

ラスティが返す。

「まあ、そうだな。帰る家があるなら、この戦争のごたごたが片付いてから帰ればいい。まあ、顔は戻したほうが良いだろうけど。でも、帰る家が無かったらオレんちの養子になるか?」

「え!?」

流石にこの展開はありえないだろう。

フレイはそう思った。突然何を言い出すのかと思えば...

「ダメか?」

フレイにホーキンスが声を掛ける。

「それは、ミーアが決めることよ。私は別に家族が増えても構わないわよ」

呆れたように言う。

実際、自分はその言葉に甘えてホーキンスの娘として過ごしている。

だから、他人にそのことに対してとやかく言うつもりはないし。ホーキンスの申し出に感謝しているところもあるから簡単に反対できない。

帰る家が無いなら尚更だ。

「ま、そういうことだ。少し考えてみろよ」

ホーキンスがそう言って話を終わらせた。

ラスティは溜息を吐き、カインはまた小さく笑った。強引だな...

「あ、あの...えっと」

「今すぐ出さなくて良いわよ。色々とあるだろうし、気持ちの整理とか。本当に、色々と」

フレイがそう言う。

その言葉に安心したようにミーアは頷いた。



「あれ、増えてますね」

シャトルに乗り込んできた人物を見てニコルが笑った。

「ホーキンス隊長の拾い物」

ラスティはそう言って操縦室へと向かう。

「ランデブーポイントに変わりはないそうです」

カインにニコルが報告をした。

このシャトルに待機しているときも情報収集に努めていた。

「ああ、わかった。手間を掛けさせて悪いが、寄り道頼むな」

カインはそう言って出口に近い席を選んで腰を下ろす。

「さぁて、久しぶりだから少し不安だなー」

コキコキと肩を鳴らしながらホーキンスが楽しそうに呟く。

「また、そういうことを言う」と文句を言ってフレイは真ん中あたりの席を選んだ。

ミーアは所在がなさそうにその場を見渡している。どこに座ったら良いのだろう。

「フレイさんの隣が空いていますよ」

ニコルがそう言ってエスコートした。

「ここ、いいですよね?」

ニコルが声を掛けると「勿論よ」とフレイが頷いた。

ミーアは戸惑いながら腰を下ろす。

「ああ、自己紹介まだだったわね。私は、“フレイ・アルスター・ホーキンス”。普段は“フレイ・ホーキンス”で“アルスター”は略してるけどね。さっきの会話で分かってるかもしれないけど、養女なの」

そう言って微笑む。昔の名前は“フレイ・アルスター”で、ナチュラルだと言う。

ナチュラルだといったフレイにミーアは驚き、怯える。

フレイは驚き、困ったように笑った。

「何もしないわよ。別に、コーディネーターが憎いとか思ってないもの。今は、だけどね。昔は憎かったし、嫌いだった。けど、私に親切にしてくれて、生きる機会をくれたのはコーディネーターなの...あの子」

そう言ってエザリアに抱かれて眠っている子供を指差した。

「私、あの子のお母さんとお父さんに助けてもらったの。だから、その恩返し」

「どこに、行くの?」

「地球。オーブよ。あの子のお母さんは、議長にあの子を人質に取られて思うように動けないの。だから、議長の手の届かないところに」

その言葉にミーアが目を丸くした。

「この議長のシナリオは、開戦前からあったの。あの子のお母さん、は子供と旦那さんと友達の命を守るためにその道を選んだの。だから、もう自由にしてあげる。みんなで恩返しなのよ」

フレイは笑ってそう言った。

『じゃあ、出発しますね』

ニコルの声が機内に流れる。

シャトルは月から飛び立った。









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桜風
09.6.29


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