Like a fairy tale 92





ランデブーポイントに着く少し前に議長が声明を発表し始める。

『流しますよ』というニコルの言葉と共に機内に議長の声が響く。

「今度は、どんなことを言い出す?」

楽しそうにホーキンスが言った。

フレイは振り向いて睨む。

全く...もっと緊張感というものを持って欲しい。

議長の演説にフレイは言葉を失った。

「デスティニープラン...」

ミーアが呟く。

「はっ!」と後方から不快そうな声がした。

振り返るとホーキンスが目を眇めて不機嫌に眉を寄せている。

「またこれは...馬鹿馬鹿しいことを言い出してくれたものだ」

カインも目を瞑る。

『カインさん、ホーキンス隊長。そろそろポイントです』

ニコルの声に反応して2人は立ち上がる。

「お父さん!」

フレイが声を掛けた。

「大丈夫だ。あんなふざけたもの、オレは認めない。が、オーブもきっと同じだ。だから、オーブは攻撃目標になると思う。それでも、行くのか?」

ホーキンスがフレイに問う。

「決めたもの。それに、お父さんが守ってくれるんでしょ?」

ホーキンスは目を丸くして苦笑した。

「こういうときだけ可愛いことを言う。任せろ、オーブについたらすぐに連絡を入れろよ。あの子にゃ悪いが、最終兵器のシルバーレイを開放する」

フレイの傍にやってきてホーキンスはくしゃりと彼女の頭を撫でた。

「ミーアも、大人しくしてろよ。お前たちの生きる未来は、こんな馬鹿げた物であってはならないからな」

彼女の頭も撫でて出口に向かった。

「しっかり頼んだぞ!」と操縦室に声を掛けてホーキンスは客室を後にする。

ミーアは撫でられた自分の頭に手を置いた。

暖かいそれが離れたとき、どうしてか不安になった。

「大丈夫よ」

ミーアの手を取ってフレイが言う。

「私が守ってあげる、なんていえないけど。でも、お父さんはあんなに軽いけど。でも、約束は守る人なのよ。時間以外は」

最後にひとつ正確な情報を付け足してフレイが微笑んだ。

ミーアはその言葉に驚いて、そして笑う。

「ありがとう」

「どういたしまして」

『そろそろ重力が発生しますよ』

ニコルがそう言った。フレイはノルンのほうを見た。

本当は、こんな小さな子にこういうことは良くないのだろうな。

エザリアと目が合う。彼女は微笑んで頷いた。大丈夫、と言われた気がした。




は自室で議長の演説を聞いていた。

「はっ」と笑う。

なんだそりゃ?

人は明日が、未来が分からないから頑張れるし、希望だった持てるのだ。

決まった役割しか持たされない、そんな人生の何が楽しい?

しかも、その役割を決めるのが“遺伝子”だという。

そんなことになればコーディネーターになる人間も増えるが、それが出来ない環境の人だってある。

その人には、もう希望の無い未来しかないというのだ。つまりはそういうことだ、このデスティニープランというやつは。

ふざけんなといった感じだ。

以前、シンから聞かされた話を思い出した。

そのときにも反発心を覚えたが、あの話の具体的な考えがこのデスティニープランと言うわけだ。

そんなクソくだらないもののために自分は戦っているのか。

「そんなもの、私の描く未来じゃない」

の目は昏く光った。

この議長の演説を聞いても父たちが動けなかったら、それはもう手の打ちようが無かったということだろう。

そのときには、諦めて適当なところで負傷して除隊を余儀なくされる状況を作ってみるか...

どのみち、もう議長のシナリオに付き合ってられない。



この議長の言葉にすぐさま異を唱えてたのはオーブとスカンジナビア王国のみだった。

各国は反応に困っている様子だ。

「やっぱ、オーブはこう来ますよねぇ」

情報を拾いながらは呟く。

先ほど部屋から出たらやはりクルーは混乱している様子だった。

艦が動き始めた。

アルザッヘルに動きがあるという。

「オーブを見て、元気になったかな?」

は呟いてブリーフィングルームに向かった。

そこでデータを纏めていると情報が入る。

ダイダロス基地からレクイエムが発射されて、アルザッヘルを攻撃したという。

「やっぱ、無理でも無茶でも。取り敢えず一部だけでも破壊しておけばよかったわ...」

本当に最近は後悔することが多い。

思い通りにいかないことは、歯痒いものだ。

ドックのハンガーに固定されているノルンに目を遣った。

「ねえ、ノルン。早く自由に飛びたいでしょう?もどかしいよね」









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桜風
09.6.29


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