| 娘の安全が確保された今、は自分の信じる道を進める。 センサーに反応があり、その攻撃を避けてそのMSを蹴り上げてまっすぐ自分の壊すべきものの元へと向かった。 「あんなもの。必要ない」 は呟き、迎撃するザフトのMSを無力化させていきながら駆けた。 ノルンの行く手を阻める者は、居なかった。 「!」 ミネルバのブリッジから通信が入った。 「あなた、何をしているのか分かっているの!」 「ええ。レクイエムを破壊します。あれを使って簡単に大勢の人間の命を奪った議長に私は従えません。やっていることは、自分たちに従わなない者の命を奪っていたロゴスと同じでしょう?!それに、信頼を寄せていただいていた艦長には申し訳ありませんが。元々、娘の安全を確保するまでの時間稼ぎだったのですから」 「そのためだけに、あなたはたくさんの人を殺したというの!」 グラディスがそう責める。 「はい。私は私の守りたい未来のために引き金を引いています。今までも、きっとこれからも。それはどうしようもなく自己中心的な考えと言うことは分かっています。それでも、あの議長が人類存亡を賭けて、と発表された政策には頷けません。そんな未来、私は子供たちに渡せません」 「だけど!」 「艦長は!...艦長は、艦長の守りたいもののために戦ってください。その制服を着ると決めたときのままに、自分の信念を貫いてください。私は、私の守りたいもののために戦います。私にとって、この制服を着ている意味はそれしかありません」 そう言っては通信を切ってそのままステーションワンに向かった。 「ザフト全軍に告ぐ。レクイエムの中継施設の守備を放棄しろ」 ホーキンスと同じく国際オープンチャンネルで通信が入った。 「オレは、カイン・。かつて連合に“白銀の死神”と呼ばれた“シルバーレイ”だ。 お前たちは何のためにそれを守っている。何のために、その制服を着ている。振り与えられた役割のみを演じ、それ以外を許さないという世界に何がある。戦争はなくなるかもしれんが、それは別の死を意味する。そう思わないか。 ザフトの誇りとは何だ。 世界に生かされるよりも、もがき苦しんで希望を見出して歩く世界でオレは死にたい。オレはその方が良いし、この先、自分の愛したものたちにもそういう世界を残したい。 重ねてザフト全軍に告ぐ。 それを守るというならオレはお前たちを落とすことを厭わない。オレは、今のシルバーレイのように優しくはない。 覚悟があるなら、自分の信念を貫いてそのステーションでもレクイエムでも守っていろ」 は久しぶりに聞く父の声に思わず笑みを零す。そして戦闘を展開しているステーションワンを見た。もうひとつ、白銀の光が伸びている。先の戦いでも目にした、オーディンにそっくりだ。 「お父様!」 何となく勘でチャンネルを開いてみた。 「。待たせて悪かったな。ノルンは、今のところ無事だ」 「どこに...?」 「オーブだ。フレイの知り合いが匿ってくれると言ってな」 は絶句した。 「...物凄く安心できない場所ですね」 言い難そうにが返す。 「そういうことだ。気を抜くな。補給はユグドラシルで行え。座標は今転送する」 送られてきた座標を確認してはその場から離れた。 「議長」 レイに声をかけられてデュランダルははっとする。 まさかこんなことになっているとは思っていなかった。あのヴァン・ホーキンスは意外とやり手だったらしい。 戦後の処理の事を聞いてはいたが。結局はザフト内の事しか出来なかったのだろうと高をくくっていた。 彼が隊長になった時期は遅く、だからパトリック・ザラの友人ということによるコネだったのだとも思っていた。 実際、第二次ヤキン防衛戦での彼の功績はそう目に留まるものではなかった。彼の副官を勤めていたハイネ・ヴェステンフルスの方がよほど多くの戦果を挙げていた。 「ああ、すまない。少し、驚いてね」 「あの、議長。今の映像...」 何か言いかけたシンをレイがにらむ。 「議長!」と新たな声が加わった。 「どうした」とデュランダルが返すと 「ミネルバからの報告です。・が離反しました」 その言葉にシンが驚く。 「何で!?」 「議長」 レイが促した。 「ああ、そうだな。彼女はもう十分に戦ってくれた。が、裏切ったのだな。しかし、あの新しい第四勢力の事は全く情報がない。さて、どうしたものか...」 「議長。ジュール隊長を尋問されては如何でしょう?」 レイが進言する。 「ん?」と議長が聞き返した。 「先日、議長の命で彼はミネルバに来ております。その際、艦長の計らいでと2人で話をする時間を与えています。そのときに何か情報を得たかもしれません」 「レイ!」とシンが責めるように名前を呼ぶ。 「言ったはずだ。議長は正しいのだ。それを邪魔するものを排除するのがオレたちの仕事だ。惑わされるな、シン。彼女は初めからザフトを、議長を裏切るつもりでいたのだ。お前はお前の望んだ未来を守るために戦わなければならない」 「...そうだな、ジュール隊長を捕縛するように命じろ。もし、それに従わなければあの船もろとも落としても構わない。・に対して良い見せしめになる」 その言葉にシンは戦慄を覚えた。 「議長!」 呼ばれてシンを見る。冷たい、何の感情も持たないその瞳にシンの言葉が出なかった。 「君たちも、もう出撃してくれたまえ。期待しているよ」 デュランダルは話を強引に締めた。 レイは「は!」と敬礼を向け、シンも遅れて「はい」と敬礼を向けた。 「艦長、本部からの命令です」 ボルテールでオペレータがそれを読み上げた。ジュール隊長を捕縛の上メサイヤに連行するようにと言うものだった。もし、それに従わない場合は艦に砲撃を向ける、ともある。 「なん、だと...!」 イザークが呆然と声を出した。 「まあ、を捕まえたかったらそれが一番だろうけど」 そう言ってディアッカは腰に下げている拳銃に手を運んだ。 「艦長、どうすんの?」 イザークを庇うようにディアッカが前に出た。 「ジュール隊長を捕縛しなければ、この艦を撃たれる事になります」 艦長としてこの艦を守る責任がある。 「私がザフトに入ろうと決めたのは、我々コーディネーターの未来を、平和を守りたいと思ったからです。が、どうやら議長のこのプランどおりに行けば私は職を失うことになる。せっかく此処まで上りつめたのに、今更別の適性があるといわれても納得できませんね」 ディアッカの口角が上がる。 「ボルテール及びルソーに通達。これから本艦はシルバーレイに続く。友軍から砲撃を受ける可能性も否定できないが、ザフトの誇りと信念を忘れるな」 艦長がそう言って振り返る。 「実は、私。カイン・に憧れていたんですよ」 悪戯っぽく笑って艦長が再び前面に姿勢を戻した。 イザークは呆然と艦長の背中を見る。 ディアッカがイザークの背中を叩いた。 「ほら、指揮しろよ。ジュール隊長」 「あ、ああ...ノルンに回線を繋げ」 ノルンのコックピットに通信が入った。 見た瞬間切ろうとは手を伸ばすが 「切るな!」 と怒鳴られた。 「ご、ごめんなさい...」 取り敢えず、まず謝ってみた。 「あとでこってり絞ってやるから覚悟しろ。...本部から俺を捕縛するように命令が出た」 イザークの言葉を聞いてがつぅ、と目を眇める。 「で、だ。俺を捕縛できない場合は艦を沈めるとも言われている。が、艦長がシルバーレイに続くようにボルテールとルソーに命じてくれた」 「あら、いやだ。どうもご迷惑をおかけします」 はぺこりと頭を下げた。 慌てて艦長も頭を下げる。 ...これが、現役のシルバーレイ? 「旗艦はどこだ?というか、どこの組織だ?」 「分かんない。まだ見てないけど、ユグドラシルの座標は送られてきてる。たぶん、母艦。送ろうか?」 「艦隊を組んだ方が良いからな。送ってくれ」 「了解」とが返してすぐに送られてきた座標に驚いた。かなり近い。捕捉されなかったことが奇跡だとしか言いようがないくらいだ。 「びっくりでしょ?」 「今からそこに移動する」 「援護しましょう」 そう言ってが通信を切った。 |
桜風
09.7.6
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