Like a fairy tale 97





メサイヤに向かう途中、シャトルを発見した。

「こちら、。ミネルバクルーですね。応答願います」

こんな戦闘のど真ん中で移動するのは危険すぎる。

!?」

帰ってきたのは副長の声だった。

「ミネルバが落ちたため、艦長からの退艦命令で我々は脱出した」

「では、艦長は?」

「艦長は...おられない」

ふと見上げるとジャスティスとデスティニーの戦闘が繰り広げられていた。

「ちょっと、待っていてください」

はそう言って上空へと上がった。

「シン、やめなさい」

!あんたも..アンタも裏切った!!アンタまで何故!?」

そう言ってシンがに向かっていく。

「やめろ、シン!」

アスランが止めるが、はデスティニーの頭部とエンジンを撃ってアームを両方とも切り落とした。

「あなたの未来は、本当にあんな希望もないものでいいの?人に勝手に適正だとか決められて、それで幸せになれるの?本当に?」

落ちていくデスティニーを抱えて地面にそっと下ろす。

「アスラン、ジェネシス壊してきてね」

軽くそう通信を入れてミネルバクルーの乗るシャトルへと戻っていった。


「どちらまで?」

戻ってきた瞬間が聞いた。

「ゴンドワナ、だが...」

は息を吐く。

そうだよな...ミネルバクルーはザフトだもんな...

「近くまで送りましょう。ちょっと雑に扱いますけど、我慢してください」

がそう言ってシャトルを抱え、ゴンドワナに向かって進路を取った。




「何、簡単に楽になろうとしてんだよ。クソったれ!!」

響く声に全員が振り返った。

メサイヤの司令室でギルバート・デュランダルがタリア・グラディスに抱えられている。彼の胸からは血が流れていた。

「やあ、ホーキンス隊長」

「ふざけんな。お前のお陰で“隊長”じゃないだろう、今は。ったく、一発ぶん殴って、ついでにの前に連れてきて蹴っ飛ばさせてやろうと思ったのに...」

睨みつけながらホーキンスが言った。一歩一歩デュランダルに近づく。

「ホーキンス、隊長...」

呆然と呟くグラディスにホーキンスが苦笑した。

「ミネルバのクルーはが拾った。たぶん、ゴンドワナの付近まで運んでるだろう。心配すんな。しっかし、その馬鹿のどこがいいんだか...」

ものすごく盛大に溜息を吐きながらホーキンスが言う。

困ったように笑ったグラディスが「ご迷惑を、おかけします」と頭を下げた。

「迷惑ついでに、ホーキンス隊長」とデュランダルが言う。

「何だよ」

吐き捨てるようにホーキンスが返した。本当に、もう何も出来ないのがむかつく。

「レイを、お願いできませんか」

その言葉に泣いていたレイが顔を上げる。

「レイ?お前の子だろう?お前が最後まで親をするのが義務だ、馬鹿」

「はは。見ての通り、もうそれは出来ないようなのですよ...ホーキンス隊長。レイの、テロメアは短いんです」

「...クルーゼと同じじゃねぇか」

ホーキンスの言葉にデュランダルが驚く。

「おや、ご存知で?」

「いや、お前の事調べてて偶然知ったんだ。じゃあ、あいつも?」

そう言ってレイを振り返る。

レイは怯えたようにホーキンスを見ていた。

「...お前、名前は?」

ホーキンスがレイに近づきながら言葉を掛ける。

デュランダルに背を向けているが全く気にしない。

レイが応えないともう一度ホーキンスが「名前、聞いてるんだけど?」と声を掛けながら膝をつく。

「レイ・ザ・バレル」

そう返したレイにホーキンスは「オレは、ヴァン・ホーキンスだ」と言って笑った。

「レイ、この先の事はお前が決めることだ。デュランダルと一緒に死にたいと言うのなら、オレは止めない。が、まだ生きてみようと思うのなら出て来い。この要塞が爆発する寸前まで待っててやるから」

くしゃりとレイの頭を撫でてホーキンスは立ち上がる。

「ほら、お前らももう行くぞ」

そう言って司令室に居るキラとアスランを促す。

「キラ、ヤマト...ラミアス艦長に伝えて。子供が居るの。男の子よ。『いつか会ってやってね』と」

グラディスがそう言うと「分かりました」とキラは頷き、背を向ける。


「レイ、行きなさい」

グラディスが言う。

驚いたようにレイが顔を歪めた。

「あなたにも、明日はあるのよ」

「レイ。先に行って待っているよ。だから、君はもう少しゆっくりしてきたまえ」

「ギル...」

「さあ!行きなさい。私のもうひとりの息子。...頑張ってね。あなたにも、ちゃんと未来はあるのよ」

グラディスに促されてレイは立ち上がる。

一度振り返るとデュランダルは頷いた。

レイは駆けていった。


メサイヤが落ちていく。

「ホーキンス隊長、もう...!」

アスランが脱出を促した。

「オレに構うな!お前は先に出てろ!!」

そう話していると人影が現れた。

ホーキンスが手を伸ばす。

レイはそれを取った。

「早く乗れ」と急かしてテュールに2人で乗り込む。

ホーキンスが発進したと同時にメサイヤは完全に崩れ落ちた。

「もうちょっとごたごたするからゆっくり話は出来ないが、あとでちゃんと話しをしような」

ホーキンスが振り返って声を掛ける。

「はい」とレイは静かに頷いた。









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桜風
09.7.13


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