Like a fairy tale 103





アスランたちをエターナルに送り届けてはボルテールに帰艦した。

しかし、停戦後の異動と言うものは物凄く居場所がない。

レストルームに向かっても、顔は知っているが話したことのないクルーばかりだし。

何より、居場所がなくて暇をもてあましているのはだけなのでそれも居心地の悪さが増す原因にもなっている。


「コーヒー飲みたい」

呟いたは隊長室を目指した。

仕事の邪魔をしないようにして、部屋に置いてもらおう。



ブザーが鳴った。

今度はさっきのような失敗はしにぞ、とイザークは思って「誰だ」と返す。

です」

何かあったのかと思い、ドアを開けた。

「どうした。何かあったのか?」

「コーヒーが飲みたくて」

の返答に溜息をつく。

「そんなもん、レストルームでも飲めるだろう」

イザークの言葉には拗ねたように口を尖らせる。

「だって、居心地悪いんだもん」

イザークは再び溜息を吐いた。

そして「」と名前を呼ぶ。

コーヒーを淹れに足を進めていたが振り返った。

「そこに座れ」

と言ってベッドを指差す。

「...それは隊長命令ですか?」

面白そうにが聞いた。

「夫の我侭だ」

イザークがそう返すとは笑って「じゃ、仕方ないよね」と言いながらベッドに座る。

「上着だけは脱ぐように」

椅子から立ち上がったイザークにが言うと「分かってる」と少し面倒くさそうな声を返された。

ハンガーに掛けることはせずにそのまま椅子に適当に掛けてベッドに座った。

「ブーツは言わないのか?」

「イザークのベッドだし」

の言葉にイザークは肩を竦めて「なら、」と言ってごろりとそのままベッドに寝転んでの足に頭を乗せる。

「イザーク、ずっと休んでないんでしょ?」

「ああ」と短く応えてすぐに寝息が聞こえてきた。

はイザークの髪を梳きながらその寝顔を眺めていた。



ブザーが鳴って返事もしてないのに「イザーク」と名前を呼びながら人が入ってくる。

彼はデスクにイザークが居ないことに驚いたが、そのすぐ後ろにが居て、そのひざの上にイザークの頭が乗っていることに苦笑した。

は人差し指を口に宛てて笑っている。

「寝てんの?」

声のトーンを落としてディアッカが覗き込んできた。

は笑いながら頷く。

「へー」と言ってイザークの顔を見ると、驚くほどに穏やかな表情を浮かべていた。

ディアッカはイザークの椅子に腰を下ろした。

「こんな顔してるイザーク見るの初めて」

その言葉にが驚く。

「ホント?だって、クルーゼ隊のとき、その前のアカデミーのときから同室でしょ?」

ディアッカは頷く。

「けど、眉間に皺を寄せてることの方が多かったしな。寝てるときも何か不機嫌だったし」

思い出しながらディアッカが笑う。

「知らなかった」と呟いてはイザークに視線を落とした。

「で、は何でここに居るの?イザークに膝枕しろって呼び出されたのか?」

「コーヒー、飲みに来たらこうなった」

の返答を聞いてディアッカが立ち上がる。

「んじゃ、オレが淹れてやるよ」

ディアッカはコーヒーを淹れるべくその場を少し離れる。

少ししてコーヒーの香りが漂ってきた。

カップ2つ持ってディアッカが戻ってきた。

「熱いから気をつけろよ」と声を掛けてにカップを渡す。

洗いたてって感じで流しにおいてあったのできっとイザークはさっき飲んだのだろう。

だから、もう1個は自分の分だ。

「あー。何か物凄く久しぶりに飲んだ気がする」

「マジで?あ、でもそうだよな。オレもそうだわ」

ディアッカが笑いながらまた一口飲んだ。

「そういえば、宇宙はどうだったの?」

が聞く。

ずっと地球に居たから宇宙がどうだったのか全く情報が分からなかったと。

「小規模な戦闘はそれなりにあったってのは聞いたけど」

「小規模、ね。まあ、さっきのに比べたら小規模だけど。被害がゼロなんてことはなかったからな。ジュール隊も」

困ったようにディアッカが笑った。

「そっか。イザークも大変だったね...」

そう言ってがイザークの髪を梳く。

「貴様ほどじゃない」

目を瞑ったままイザークが声を出した。

「何だよ、起きてたのか?」

ディアッカが声を掛けて顔を覗きこむ。

イザークは寝返りを打ってに顔を向けてそのまま腰を抱き寄せる。

「起きないの?」

「...やかましい」

イザークの言葉にとディアッカが顔を見合わせて苦笑した。ジュール隊長は今仕事がしたくないらしい。

「仕事、しようぜ。書類持ってきたし。何か、新しい命令のようなんだけど?なあ、イザーク」

ディアッカがそう言って1枚の紙を取り出した。

「...貴様が読み上げろ」

ディアッカは大仰に溜息を吐いてその文面を読み上げた。

驚いたは立ち上がり、イザークを落とす。

床に落とされることだけは何とか免れたイザークが不機嫌な表情を浮かべているが、は気にせずディアッカの手にあったその命令書を取り上げて自分の目で確認する。

「しかし、それは意外だよな」

ディアッカがイザークに目を向けると彼も頷いた。

内容はこうだ。

イザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、3名は明日1300にオーブへ帰還するエターナルに同乗し、今回の作戦に協力したエザリア・ジュール、フレイ・ホーキンス、ニコル・アマルフィ、ラスティ・マッケンジーの護衛をして48時間以内に帰還するように。

つまりは、オーブに降りて、ノルンを迎えに行けと言うのだ。

はそれに間違いないかと数回読み直して、何度読み直しても文章が変わることがなく、間違いないと安心した。

「つか、何?姫さんってオーブに居たの?」

ディアッカはノルン・ジュールの事を時々“姫”と呼ぶ。

生まれる前から女の子だと言い張っていたイザークの話を聞きながら、絶対にどこの姫さんだと聞きたくなるくらいイザークが物凄く可愛がると予想できた。だから、生まれる前から彼らの娘のことは“姫さん”と呼んでいた。

「らしいよ。だから、私はレクイエムを落とすのに躍起になったのです。けど、オーブのどこに居るんだろう?何か資料ない?」

の言葉を聞いてディアッカが持って来た書類を探してみるが、それらしいものはない。

「ま、行けと言われたんだ。分かるようになってるんだろうな」

イザークはベッドから降りて椅子に掛けていた上着を着た。

仕方なく仕事を再開するようだ。

ベッドから落とされかけたので、諦めがついたらしい。

ディアッカは椅子から立ち上がり、場所を譲った。

持ってきた書類の説明をイザークに始める。

「本当に隊長と副官みたい」

がぽそりと呟く。

「「本当に隊長と副官なんだよ」」

語調は違えど異口同音でそう応えたイザークたちには笑った。

何だか此処はもの凄く居心地がいい。









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桜風
09.7.27


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