Like a fairy tale 105





イザーク、ディアッカ、はオーブに降りるエターナルに移動した。

今回も、隊長が長く留守にするため、ジュール隊はハイネが預かることになった。

このことに対してハイネはぶつくさ文句を言っていたが、その言葉は誰にも届かずにひたすら大きな声の独り言に過ぎないものになっていた。


ザフトの軍服でオーブに降りるのは流石に今の情勢ではまずいだろうということから私服に着替えての任務となる。

1年、軍服以外に袖を通していないはどうにも落ち着かなくなっていた。

それをイザークに言うと彼は困ったように笑った。



「ジュール隊隊長、イザーク・ジュールです」

「同じく副官のディアッカ・エルスマンです」

「同じく、です」

敬礼をして艦長のバルトフェルドに挨拶をする。何故か、アークエンジェル艦長もブリッジに居た。

ニヤニヤと面白いものを見るような目でバルトフェルドは彼らを見た。

「ジュール隊の諸君、歓迎するよ」

「お久しぶりですわね」と声を掛けられて振り返るとラクス・クラインが居た。

敬礼を向けると、彼女も笑顔でそれを返してきた。

「カイン・様が臨時の国防委員長に就任されたと伺いましたわ」

は頷く。

「最高評議会の強権が発動されたらしいです」

その言葉にバルトフェルドが眉を上げる。

「何ですか?その評議会の強権、とは」

「プラント市民の自由を奪うことが出来るんだよ、評議会は。勿論、クリアしなくてはならないものがたくさんある。それをクリアして、今回の父親が臨時の国防委員長の椅子に座らされたんだ」

余り知られていないその制度にマリューは驚いたようでを見た。

「逃れられないの?」

「一応、手はありますよ。“プラント市民”に対しての強権なので、プラント市民でなくなればいいんです」

「ま、亡命とか。そういう手だな」

バルトフェルドが継ぎ、は頷いた。

「しかし、今回のカイン・殿はそれが出来なかったんだろう?」

「亡命する場所がありませんしね。今は、まだ」

マリューがそう言いながら頬に手を当てる。

「まあ、それもあるが。もし、カイン殿が何とかしてそこから逃げたら、今度白羽の矢が立つのはだからな」

バルトフェルドの言葉にイザークが反応した。

「何故!?」

「『何故!?』じゃないだろう?だから、彼女はデュランダルにも目を付けられた。な?」

そう言ってに同意を求める。

はチラリとバルトフェルドを見遣って沈黙をもって同意とした。

「どういうことですか」

「...あの状況では仕方ないとはいえ。ジュール隊はザフトを離反した。脱走とも言うだろう?ザフトで、脱走兵の処遇といえば?」

イザークの言葉に仕方ないと言った感じにバルトフェルドが応えて同席していたアスランに質問する。答えを知ってる質問だ。

「...銃殺、ですね」

言いにくそうにアスランが応えた。

自分はこうして生きているのだが、と言いたいのかもしれない。

「そういうこと。それをちらつかされては撥ね退けることが出来るか?」

は頷かない。

イザークも、それは分かっている。

「ま、その場合。国防委員長にでもなって、ザフトを掌握した方が話が早いですしね」

は自嘲気味にそう言った。

イザークは俯いて拳を硬く握る。

「けど、それからお父様は守ってくれたのよ。たぶん、もう当分はあの椅子から降りられないっていうのが分かっててね」

はそう言ってイザークの顔を覗きこんだ。

「大丈夫よ。ホーキンス隊長がついてるし。もう、ジュール隊の離反は白紙になったんでしょ?」

「...ああ」とイザークは頷いた。

エターナルのクルーは元々ザフト兵だからプラントの情勢の事を聞くと何となく想像できる。

あの、伝説の英雄がザフトの頂点に立った。

先の大戦ではちょっと方向を間違っていたようだが、事なきを得た。

そして、今回の戦闘でのあの言葉。

ザフトはやっと変わるかもしれない。



暫くブリッジで話をしていたらメイリンが声を上げる。

「所属不明ですが、通信を向けられています」

「どこからだ?」

「...オーブ、です」

「行政府か?」

「いいえ、周波数が違います。どうしますか?」

少しだけブリッジに緊張が走る。

「開いてくれ。オーブからなら、そう悪いことにはならんだろう」

メイリンは返事をしてモニタに繋ぐ。

そこにはドアップのラスティが映し出された。

たちは驚いて少しだけ後ずさる。

「お、映ったぞ!が居るぞ、ほら!」

他にも誰かいるようで、振り返ってそう言った。

「何でラスティが一番にモニタに映るんですか!」

その声はニコルで、ラスティが何者かに足蹴にされた。

というか、きっとニコルだ。

フレームアウトしたラスティも「ニコル、ひでー!」と叫んでいる。

「エザリア様、どうぞ。繋がったようです」

フレームの外からそのままニコルが声を掛けている。

「ええ、」という返事が聞こえてエザリアが映し出された。

その胸には小さな子供を出している。

「ノルン!」

は思わず声を上げた。

ノルンは首を傾げて暫く考え込み、「マ..マ?」と舌足らずに言葉を口にした。

の目には涙が浮かび、声を上げて泣き始めた。

ブリッジに居る者皆が驚き、困惑する。

ただ一人、イザークだけは落ちついて「ノルンは無事だ。頑張ったもんな」とか優しく言いながらの頭を優しく撫でていた。

が、そのすぐ後、イザークも慌てることになる。

モニタの向こうのノルンの表情が崩れて途端に泣き始める。

「な!?は、母上!!??」

イザークが困ったようにエザリアを見た。

「あらあら。さんが泣いちゃったから...」

困ったようにエザリアがノルンをあやす。

どういうことか説明を求めると

「お母さんが泣いてしまったから子供も泣いてしまったのよ。母親の感情にはとても敏感なのよ、子供って」

そういう。

!泣き止め。泣くな!!」

えぐえぐとイザークの言葉に頷きながら深呼吸を繰り返して自分を落ち着かせる。

モニタの向こうのノルンも段々泣き声が小さくなってきた。

「お前ら、本当にそっくりだよな...」

呆れたようにディアッカが呟いた。

ジュール邸を訪ねてノルンと遊んだことも何度かある。

ノルンは幼いのに。まだまだ赤ん坊なのに、をフラッシュバックしたことが何度もある。

そのたびに何だか可笑しかった。子供って本当に親に似るんだと思った。

「あの、母上。今オーブのどちらにいらっしゃるのですか?迎えに行くように命じられて此処に居るのですが」

を宥めながらイザークはモニタの向こうの母に問う。

「フレイさんのお友達の、ナタルさんのお宅よ」

「は!?」

何人かの声が重なった。

「な、ナタル..ですか?」とマリュー。

「何でまた。フレイがそんな情報を知ってるんだ?」とバルトフェルド。

「というか、フレイも降りてたの!?」とこれまた何故かいるキラ。

「大人数でそんなご迷惑を...」と

最後の一言には皆の視線が注がれる。

さん、って天然?」

キラがアスランに耳打ちをする。

「いや、天然じゃなくて。マイペースだと思う」

アスランの言葉にキラは数回頷きながらの背中を見つめた。

この人が、あの機体に乗っていた人物だとは...

イザークとエザリアが話しているその横で、キラはしきりに首を傾げていた。









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桜風
09.8.3


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