| はナタルの家を後にして走った。 しかし、地理的に周囲の状況が全く分からない。 とりあえず、自身の勘に従って坂を下っていると車が止まっている。窓が開いており、そこにいる人物が知り合いだと気づいた。 「マリューさん!」 「あ、あら。、さん...」 彼女はぎこちなく微笑んだ。 「あの..ミリィさん、見ませんでしたか?お知り合いですよね」 「ああ、お嬢ちゃんならこのまま坂を下って走ってったぜ?」 一緒に乗っていた人物、ムウ・ラ・フラガが代わりに答えた。 「ありがとうございます」 は頭を下げて坂を下り、カーブを曲がった。 「...行ったみたいだぜ?」 の背中を見送っていたフラガが声を掛けた。 「ありがとう、ございます」 車の中で小さく丸まって隠れていたミリィが体を起こして頭を下げた。 「あの、何があったの?」 聞きにくそうにマリューが優しく問う。 「いえ。別に...」 「だったら、逃げないで欲しいですよね」 開いている窓から顔を覗き込んでが言った。 「うわぁ!」と声を上げてフラガが体を反らす。 「坂、下ってったろう?!」 「こんなところで不自然に車が止まっていて。しかも、乗っている人が彼女の知り合いなら、まず疑うべきでしょう?」 がそう言って車の中に顔を入れた。 「せ、狭いんだけど。お嬢ちゃん...」 フラガの苦情は無視してそのままの姿勢を続けた。 「ミリィ、さん?何であそこで飛び出すの?」 が聞いてみた。 「何か、ちょっと。びっくりしたの。ディアッカに子供が居たなんて」 「ええ!?」とマリュー。 「へー!やるね、坊主」とフラガが言うとマリューにきつく抓られた。 は深く溜息をつく。 「あの、ね。その子って、さっきディアッカが抱っこしていた子のことでしょう?」 の言葉にミリィは観念したのか、頷いた。 「あの子、ディアッカの子じゃないよ。というか、全くディアッカ要素はないよ」 褐色の肌をしているわけではない。 金髪でもないし、くせっ毛でもない。 瞳の色はすみれ色でもない。 うろ覚えの先ほどの子供を一生懸命思い出して何となく納得した。 「じゃあ、さっきのは...」 「ノルン・ジュール。お父さんはイザークよ」 「え!?」 「お嬢ちゃん、そろそろ出て...」 姿勢が辛いのか、フラガが訴える。 は仕方なく車の中に乗り込んでいた上半身を起こした。 「ねえ、せっかくオーブに来たんだし。案内してよ」 が中のミリィに声を掛けた。 彼女は困惑気味だったが、何やら決心したらしく、頷く。 車から降りてきた。 「じゃ、マリューさん。そういうわけだから、イザークに伝えておいてください」 「ええ、でも。いいの?その...仕事で来ているんでしょう?それに、久しぶりに娘さんに会ったんでしょう?」 は微笑んで「大丈夫です」と応える。 「仕事、と言ってもノルンを迎えに来ただけですし。イザークとディアッカが残っているから何かあっても対応できます。ニコルとラスティもいるし。ノルンとは、ザフトを辞めたらずっと一緒に居られます」 そう言ってはマリューに頭を下げてミリィと共にその場を後にした。 「あの...さっきはめんね」 ゆっくりと坂を下りながらミリィが言う。 「ううん、大丈夫。ま、ナタルさんの家にはくらーく沈んだディアッカが残ってるから。それがちょっと邪魔だろうけど。今頃イザークに蹴っ飛ばされてるはずだわ」 ―――そう言ってが笑っている頃。 「いい加減、鬱陶しいわ!!」と本当にイザークがディアッカを蹴っていた。 勿論、ノルンはフレイに預けて別室に連れて行ってもらっている。 教育上良くないことくらいは自覚している。 からからと笑うにミリィは小さく笑った。 「ねえ、前からアークエンジェルに乗っていたの?」 「そうよ」と言うミリィの言葉を聞いて納得した。彼女が、ディアッカが言っていた『何となく良い感じになった子』だ。 それから、ディアッカの浮いた噂や話を聞いていなかった。 だから、もしかしたらこの子と上手くいきかけていたのかもしれない。 「込み入ったことを聞いていい?」 「あいつの事?」 “あいつ”が誰を指しているのか理解したは頷く。 「あんまりにも口うるさいから、ふっちゃった。フリーのカメラマンなんて危ないから辞めろ、とかさ」 軽い口調で『ふっちゃった』と来たもんだ... ミリィはエレカ乗り場からエレカに乗ろうと提案し、はそれに頷いた。 ミリィの運転でオーブを走る。 「あれ...?」 が呟いた。 「どうかした?」 ミリィが声を掛けてくる。 「ここ、知ってる」 前にナタルとノイマンと共に走った道だ。 「ホント?オーブは初めてでしょ?」 「初めてでもない、かな?観光っぽいのは2回目だけど」 そう言ってミネルバで寄港したときの話をする。 「ああ、そういえば。ミネルバも来た事あったわね」 ミリィも頷きながらハンドルを切った。 |
桜風
09.8.3
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