Like a fairy tale 108





予想通り、ミリィが連れてきてくれたのは以前来たことのあるカフェだった。

「どうぞ」と言われては店内に足を踏み入れる。

「ただいま」とミリィが言っては驚いた。

「ここ、私の実家」

そう言いながら親らしき人に声を掛けてを手招きする。

そのまま住居へと入っていった。


「コーヒー、淹れてくるから適当に待ってて」と声を掛けてミリィはいなくなった。

は手持ち無沙汰に部屋の中を見回す。

写真たてがいくつも置いてある部屋だ。

フレイがいた。まだ幼い。

他にもいくつか写真があり、風景や動物のものもある。

「気に入ったのがあったら持って帰って良いわよ」

ドアが開いてそう声を掛けられた。

「ホント?けど、凄いね。これって、ミリィが撮ったの?」

「そうじゃないのもあるけど。風景は大抵私かな?動物も」

そう言いながらテーブルにカップを置いた。

はその前に座る。

暫くミリィと話をした。同年代と言うこともあるが、何よりも共通の友人がいるので話も弾む。フレイに感謝だ。

少し、話が途切れた。

「...おせっかい。少しだけ焼いて良いかな?」

「本当は全く柄じゃないんだけどね」と言うをミリィはちらりと見た。

「どーぞ?」

コーヒーを口につけながらミリィが言う。


「さっき、ディアッカはイザークに蹴っ飛ばされているって話したでしょ?」

確かにそんな事を言ってた。ミリィは頷く。

「あれね、ディアッカが鬱陶しいまでに落ち込んでいたからなの」

は小さく笑う。

ミリィに目撃されたその瞬間からディアッカは物凄い勢いで沈んでいった。

先の戦争のあと、アークエンジェルがプラントから出航した日に聞いたディアッカの言葉。

それから、今回の戦争が始まるまでの話。

ついでに、アカデミーの頃のディアッカの話。

ディアッカに怒られそうだ、と思いながらもはそんな話をした。


が話し終わったときに、ミリィはポツリと呟く。

「何で、そんな事を話すの?」

少し拗ねたように、困ったように彼女は呟いた。

「んー...ディアッカの友人としてお願いしたいと思ったから、かな?」

がそういう。

「“お願い”?」

ミリィが繰り返し、は頷いた。

「そ。ディアッカにラストチャンス。勿論、ミリィが良いと言うなら、だけど。無理は言わない」

悪戯っぽく笑ってそういうにミリィは盛大に溜息を吐いた。

「良いわ。1回だけよ。ザフト、忙しいの?」

「当分は、そうね。休みは無理でしょう」

はそう返した。

「半年後くらいなら?」

ミリィの言葉に少しだけ考えた。

それくらいになれば、1日くらいの休暇は取得できるかもしれない。異動がなければ、きっとイザークと同じ職場になっているだろうから、イザークにがお願いすれば何とか調整してくれるだろう。

「たぶん。大丈夫、かな?」

が考えている間にミリィはごそごそと何やら探し物をしていた。

それが見つかったのか、今度はマジックペンを探し始める。

「何してるの?」

が覗き込む。何やら日付と時間を書いているようだ。

「これ、あいつに渡して」

そう言った。

「封筒に入れて」

が言うと彼女は封筒を探し始める。

「どうして、封筒が要るの?」と言いながらその紙を封筒に入れる。

「約束は、他の人にはナイショの方が良いでしょ」

覗いておいて言うものどうだろう、と自分で思いながらそう言った。

ミリィはそれを聞いて「なるほどね」と呟いてに「お願いね」とその封筒を渡す。

「確かに、預かりました」とは言いながらポケットにそれをしまった。

そして、ずっと気になっている写真を指差す。

「あれ、貰ってもいい?」

が指差したの写真たてに飾ってあったはオットセイの赤ちゃんの写真だ。ノルンがきっと喜ぶ。

「ああ、それ?良いわよ」

ミリィが写真たての中からそれを取り出した。

「ミリィは、報道カメラマンだっけ?」

の言葉に彼女は頷いた。

「こういう写真も凄く良いと思うよ。あんまり芸術ってのに詳しくないから私が言うのもアレだけど」

苦笑いを浮かべながらはそう感想を口にした。

けど、好きだと思った。

「そうね。平和になったら、少し考えてみるわ」

ミリィは素直に嬉しいと思ってそう返した。


ミリィがナタルの家まで送ってくれると言うので、その言葉に甘えた。

「...そういえば、私あなたの名前。聞いてないかも」

ミリィに言われて、も驚いた。

そういえば、自己紹介してない。

「物凄く今更だけど。・ジュールです。旧姓は“”だけどね」

「ジュール!?って、もしかしてさっきの子供の...」

「成り行きとはいえ。子育て放棄してしまった母親です」

笑いながら言うとは対照的にミリィは驚いて言葉が出ない。

「私も、あなたの名前を知らないのにディアッカがそう呼んでたから勝手に“ミリィ”って呼んでたけど。お名前、教えてくれるかしら?」

「ミリアリア・ハウ。ミリィはあだ名よ」

は驚き、また笑った。初対面なのに勝手にあだ名で呼んでいたらしい。

2人の笑い声が車内に響く。

何だか本当に楽しい時間だった。









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桜風
09.8.10


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