Like a fairy tale 110





行政府からの迎えを待っている間には聞いてみることにした。

さっき聞こうと思ったけど、ミリィの勘違いと言う大事件が勃発してしまったため、聞けずじまいだった。

「そういえば、ラスティたちは何で今回のことに協力する羽目になったの?」

ラスティとニコルは顔を見合わせて笑う。

2人は話し始めた。




あの軍事法廷から数日後。

突然ミゲルに呼び出されて何かを渡された。

中に説明があるから、といわれてラスティは首を傾げながらそれを受け取り、家に帰ってミゲルから受け取ったディスクを開けてみた。

そこにはパスワードとそのヒントが書いてあり、ヒントに従ってパスワードを入れると手紙、というかテキストがあり、開くとそれは指令書みたいになっていた。

次の経済界のパーティでこれをある人物に渡せとある。

その人物をラスティは知らない。

が、声を掛けるときにと合言葉のようなキーワードがあり、それで声を掛けてみた。

すると相手は何だかラスティを信用したかのように打ち解ける。

よく分からないものなのにラスティはそれを渡した。



それから2ヵ月後にラスティはホーキンスに呼び出された。

突然の引退を耳にしたときにはラスティは驚き、話をしたいと思っていたのでスケジュールを調節して時間を取った。

「悪いな、呼び出して」と遅れてやってきたホーキンスが声を掛けてきた。

「いえ、」とラスティも首を振る。

2人は久しぶりの再会ということもあって話が弾んだ。

そして、そんな中突然ホーキンスが話を切り出す。

「金出す気ない?」

「いきなり恐喝はやめてください」

ラスティは困惑しながら苦笑した。

突然すぎる。

「まず、何に使うから、とか普通言いません?」

「...本当は巻き込みたくなかったんだけどな」と言い置いての話をし始める。

ラスティは血の気が引いた気がした。

あの軍事法廷を終えたとき何事もなくて良かった、と普通に喜んだ。

何事もなかったのではない。

そうなるように仕向けてくれた、犠牲になってくれた人物が2人も居たのだ。しかも、その2人は自分の恩人で...

「出します。けど、待ってください。もうじき、後継としてお披露目ってやつをされます。それの後のほうが楽に金を動かせる。...けど、タダって訳には」

と言ってみた。

別にタダでもよかったけど、商売する人間がほいほい金を出して良いとも思えない。

ホーキンスはニヤリと笑う。

物凄いカードを持っているんだといわんばかりの笑顔だ。むしろ、悪役面だと思った。

「分かってる。タダとは言わんよ。下手したらお前の会社が潰れるしな」

それくらい危険なことだ。

「オレの人脈、の先代の人脈。それでどうだ?」

ラスティは目を丸くした。

「え、ホーキンス隊長とのじいちゃんの人脈?」

その両方とも簡単に手に入るものではない。

ホーキンスの人脈は彼が今まで苦労して手にしたものだ。

そして、の祖父の人脈もまた、簡単に手にすることが出来ないものだ。

ホーキンスは地のもの。一般人でもまた網の広い人物が多い。彼の知り合いを足がかりとして広げられる人脈の広さは計り知れない。

また、の祖父の人脈は裏社会でも表社会でもエリートと呼ばれる人物が多いと聞く。しかも、噂だが、地球にもその人脈は広がっているとも聞いたことがある。

つまり、2人の人脈があればプラントの主要人物は押さえられるし、地球への足がかりにもなる。

商売をする人間は人との繋がりがとても大事だし、それは本来金では中々買えないものだからのどから手が出るほど欲しい。

勿論、彼らの人脈が全部自分の手に入るかといえばそうでもない。

要は紹介してくれるということだ。だから、その先の人間関係の構築は自分でしなければならないことだが。

それでも、凄く魅力的なことだった。

「良いんスか?」

思わずごくりとのどを鳴らす。

ホーキンスはしっかりと頷いた。

「オレが持ってるもので、たぶんお前にとって一番価値のあるものだ」

ホーキンスの言葉にラスティは頷いた。

「契約、成立です。それで、何をするつもりです?」

ホーキンスの言葉にラスティは絶句した。

戦艦を1隻とMS2機ほど造るそうだ。物凄い入用となる。

「全部出せとは言わないから」とホーキンスが笑う。

そんなの当たり前だ。出せない。

「さ、用事は終わった」と言いながらホーキンスが席を立つ。

「他に!」とラスティが声を掛けた。

「他に、誰が?」

協力している人物を聞いた。

「ニコル・アマルフィ。ミゲル・アイマン。カナーバ元議長にも申し訳ないとも思ったが少し頼み事はしている。まあ、他にもの人脈も多々あるしな。お前の知ってのとおり、オレとの人脈あわせたら凄いことになるんだ」

と笑ってホーキンスが言う。

「じゃ、頼りにしてるぜ。マッケンジーの次期社長」

軽く手を振ってホーキンスは去っていった。




ニコルは配達人として最後の人物だった。

の親戚に渡すように、というディスクを預かった。

ニコルはパーティや何やらでいろんな人と会うことが多い。時々そう言った席でラスティとも会っていた。

そして、今日はの親戚筋。

ニコルはずっと考えていた。

あの軍事法廷の意味を。

最初は困惑してうろたえた。

しかし、それが終わって何事もなかったかのように日常に身をおいているとどうしても納得出来ない。

プラントと地球が条約を締結して1年以上経った今、何故過去の戦争の裁判を開くのか。

意味が分からない。

最高評議会の決定だったからそれに従っていたが、父もおかしいといっていた。

何かある、と思っていたところでこの話だ。

だから、の親戚に渡すときに聞いてみた。

が、彼は何も言わなかった。

ただ、ニコル・アマルフィからディスクを受け取れと言われただけだという。


仕方なく、ニコルはの実家を訪ねた。

彼女は復隊したと噂で聞いた。

彼女の父親はその真相を知っているのだろう、と思った。

前以て連絡を入れずに突撃してみた。

家から出てきたカインは驚き、「どうした」と声を掛けた。

ニコルが話そうとした。

が、それを遮る。何か察したらしい。

「今度、の本家で馬鹿らしいが、パーティがある。その演奏に来てくれないか?」

カインが突然話を振った。

今、この場では話が出来ないと言うことなのだろう。

「分かりました。スケジュールを調整して必ずお伺いします」

ニコルはそう言ってを後にした。









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桜風
09.8.10


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