Like a fairy tale 111





指定された日にの本家へと向かう。

そこにはの一族が揃っていた。と、思う。ニコルもの一族全員を知っているわけではない。

そして、パーティの中でピアノを弾き終えた。

「悪いな、売れっ子ピアニストなのにこんなパーティにきてもらって」とカインが声を掛ける。

「いえ、僕もカイン殿とお話したいことがありましたから」

ニコルは首を振った。

そしてまっすぐにカインの目を見る。

は、何故復隊したのですか?ノルンちゃんもまだ幼いのに」

カインは目を瞑って口角を上げた。

「さあ、な」

「僕、ずっと疑問に思っていたんです。ホーキンス隊長が除隊してすぐにが復隊。いいえ、それ以前にあの軍事裁判の意味」

「少し、外そう」とカインが声を掛けてニコルはそれに続いた。


場所を別室に移し、カインは「肩が凝る」と言いながらジャケットを脱ぎ捨てた。

「それで、ニコル・アマルフィ。君はその真相を知って何がしたいんだ」

カインがニコルを振り返ってそういう。

「僕は、」と少し言葉に詰まった。

「あの軍事法廷。それはきっとを復隊させるために開いたものだと思います。そして、何らかの取引き、まあ、僕たちの無罪と引き換えにが復隊というのが妥当だと思います。きっとそういう取引が行われた」

カインの目を見た。彼はそのまま視線で話の続きを促す。

「そして、はそれに応じた。もし、それに応じなかった場合。僕は何らかの刑罰を受けたと思います」

「何故、君だね?」

カインが問う。

「僕は、もうMSパイロットにはなれません。それは、カイン殿もご存知ですよね?」

から聞いた。カインは頷く。

「だから、一番ザフトの中で役に立たない僕がへの見せしめに」

そう言ってニコルは俯く。力がないとはこういうことだ。

「君は、あのギルバート・デュランダルを信用していないと言うのか?」

「そう..ですね。少し。今回の軍事法廷の事がなければ、今のプラント市民と同様に彼を心から信用していたと思います。けど、違う。僕は気づいてしまった」

「思い込みだとは思わないのか?それこそ、全て想像の産物だ」

カインの言葉にニコルは首を振った。

「僕は、ノルンちゃんが生まれる前からお母さんの顔をしたを見ています。そして、たくさん話もしています」

ニコルは時間が空けば胎教に良いと言ってジュール邸でピアノの生演奏を聞かせてあげていた。

だから、その分と話すことも多かったし、の言葉を耳にする機会もあった。

は、ノルンちゃんを本当に愛しています。だから、あんな小さいノルンちゃんを置いて復隊、というのはどうにも信じられません。イザークには悪いと思うのですが、の子育て計画もたくさん聞きました。が頑固なのは、父親であるカイン殿は良くご存知だと思います」

カインは苦笑して頷いた。誰に似たのやら...

は何があっても自分の思うことを曲げません。だから、今回の復隊が不思議でした。彼女が、あれで復隊するとは思えない。人のそんな言葉で。あの時が戦争中だったらそれは確かにあり得ると思います。ノルンちゃんの未来を壊さないために。けど、まだ平和でした」

カインは目を瞑り息を吐く。

「僕の推理とこの言葉の根拠はの行動です。僕たちの中で、一番価値があるのは“”で“シルバーレイ”のです。復隊した名前も旧姓だとも聞きました」

カインはポリポリと頭を掻いた。

「例えば、君の推理どおりだったとしよう。それで、君はどうしたいんだ?」

カインの言葉にニコルが挑発的な笑みを浮かべた。

「僕は、ご存知のようにいろんな人のパーティに出ることがあります。話をするのも得意です。...情報を、集められます」

ニコルの言葉にカインはもう一度溜息を吐く。


「よーし、採用!完璧だ」

不意に聞こえた第三者の声にニコルは勢いよく振り返る。

窓の外にホーキンスの姿がある。

しかし、ここは2階だ。

驚いてニコルは窓際に駆け寄った。

ホーキンスはキャットウォークに足を掛けて立っていた。物凄くバランスの良さと脚力を強要されるそんな姿だ。

「落ちろ」

カインが呟く。

「うわ、ひでぇ!ちょ、助けろ。足がつる」

「もう年だな」

口角を上げてカインがそう言い、本当にそのまま放置する気なのか動く気配がない。

「お前んが年上だ!つか、ニコル。助けて...」

ニコルは慌てて窓を開けてホーキンスを引っ張りあげる。

「サンキュ」と礼を言ってカインに向かっていくホーキンス。

「あの、ホーキンス隊長」

ニコルに呼ばれて「んー?」とホーキンスが振り返った。

「いつから、あそこに?」

「お前らが来る10分くらい前から」

「アホだろう?それなのになんでこいつを慕う人物が多いんだか」

呆れたようにカインが言う。

「はっはっはー。人望人望」

「きっと、類が友を呼んでいるだけなんだろうな」

そんな軽口を叩き合っている2人を見てニコルは目を丸くした。

「じゃ、さっき言ったこと。よろしく。ニコルは元々ジュール邸に足を運んでいたし、ノルンを可愛がっているのは周知の事実だからな。動いてもらいやすい。ジュール邸には盗聴器が仕込まれているが、応接室は別のにすり替えている。あそこで話をしろ」

「じゃあ、エザリア様も?」

「勿論、知っている。フレイもな。けど、イザークは知らないから。一緒にいるディアッカも」

ホーキンスの言葉にニコルは驚く。

「イザークは知らないんですか?」

「敵を欺くには、まず味方から。ってが言ってたし」

さらりとのみのせいにしてホーキンスは答えた。

「ネットワークの構築がまだ出来ていない。何となくもう決めたけど。ネットワークが出来たら自ずとそうと分かるようになるはずだ。それまで、情報収集、頼むぞ」

「はい!」とニコルは敬礼を向けた。

ホーキンスはそれを返して笑う。「頼りにしてるぞ」と。




「じゃあ、ラスティってプラントに戻ると随分手を広げられるね」

話を聞き終わってがラスティに言う。

ホーキンスと祖父のネットワークの広さは聞いているので驚いた。

それを簡単に手放したその2人の行動にも。

「ニコルは、何を貰ったの?」

が聞く。

「いえ、僕は何も。先にに貰ったようなものですし」

彼はそう言ってにこりと笑う。

そして、の隣では不機嫌全開のイザークが居た。

少しだけノルンが怯えている。

それすら気にならないのか、イザークはを睨んでいた。

先ほどのニコルの話の中にあった“敵を欺くにはまず味方から”が気に入らなかったのだろう。

相変わらずの2人の様子にエザリアはそっと溜息を吐いた。









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桜風
09.8.17


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