| プラントに戻ると早速試練が訪れる。 ステーションでそのままお別れになる予定だった。彼らの護衛に、と保安員が待機している。 だが、ノルンが離れてくれない。の服を握ったまま手を離さないのだ。ジャケットなのでそれを脱げば離れるが、それは可哀想でどうしてもできない。 流石に子供を連れてボルテールにいるわけにもいかない。 「ノルン、早く家に帰れるように頑張って仕事するから」とが宥めても泣いて聞いてくれない。 自分も泣きたい... そんなことを思いながらはイザークを振り返った。 ノルンを抱いているエザリアも困り顔だ。 「ノルン、が困ってるぞ」 「やー!!」 そう言って泣き喚く。 子供の体力は本当に凄い。握力も感心するくらい強いと来たもんだ。 を振り返るとも半泣きだ。 これは早くしなければ、とイザークは考え、ノルンのおでこにキスをした。 ぴたりとノルンは泣き止み、びっくりしておでこを押さえている。 お陰での服を握る手も離れてくれた。 「本当に、ノルンはそっくりだな」とイザークが笑う。 きょとんとイザークを見上げているノルンの頭をイザークが撫でた。 「もう少し、母上と待っていてくれるか?」 ノルンは驚いた表情のままでこくりと頷いた。 「たらし...」 がぽそりと呟いた。 「娘にキスをして、何でそれになる」 イザークが抗議の声を向けた。 ちょっと娘に妬いた自分もどうだろうと思いつつ、は視線をそらした。 イザークは何となくが思っていることに勘付いて苦笑する。 とイザーク、ディアッカは今回連れて帰った者たちに敬礼を向けた。 ラスティとニコルはそれを返す。 随分していないけど、何だか、敬礼をすると身が引きしまる気がした。 エザリアとフレイはそれぞれ「頑張ってね」と声を掛けて保安員に警護されながら本部の中へと向かっていった。 イザークは本部の国防委員長室へと向かう。 今回の任務の報告を済ませると同席していたホーキンスが声を上げた。 「ミーアを置いて来ただと!?」 何だがご立腹だ。 「はい。命令書にもその名前が書いてありませんでしたし、オーブのラクス・クラインが話があるといっておりましたので」 緊張しつつもそう応えた。 「書いてなかったから、だと!?アレには、“協力者”と書いていただろう。だったら、名前がなくても“協力者”だったら連れて帰るのがその命令じゃないのか!?」 イザークの背に緊張が走る。 だが、パカーンと良い音がしてその緊張はどこかに飛んでいった。 目の前には頭を押さえてうずくまっているホーキンスとその少し後方には書類の束を丸めて筒状にしたものを持って立っているカインが居た。 「いい加減、からかうのはよせ。お前と違ってジュール隊長は真面目なんだ」 蹲っているホーキンスに言い捨ててイザークに顔を向ける。 「ホーキンスの言葉は話半分で聞いておくといい。有事のとき以外はな。報告は了解した。別のところからも報告は届いている。先ほど、ステーションでは大変だったみたいだな」 イザークは居心地悪そうに頷いた。 「もう下がっても良いぞ」と言われたがイザークは下がらずにカインに声を掛けた。 「どうした?」 「ノルン、・のMSのことです」 「聞いたのか。破壊する。その方が良いだろう。あれは、ザフトの戦争の象徴になってしまった。ずっと最前線に居たしな。が乗っていたから仕方ないとも思うが、それでも。過去の戦争の象徴はなくしてしまった方が良い」 「ノルンは、成長していく機体です。ですから、OSをリセットすれば...」 壊すまでもないのでは、とイザークは進言した。 しかし、 「のたっての希望だ。分かるだろう?あの子が、どれだけ苦しんでいたか。ノルンに、あの機体にどんな思いを抱いているか。汲んでやってくれ。..と言っても、君はいつもあの子の気持ちを汲んでくれているからあまり強要出来ないのだがね」 と苦笑しながらカインが言った。 「...了解しました。失礼します」 イザークはそう言って部屋を後にした。 「...やっぱ、ノルン破壊するのか?」 蹲ったままカインを見上げてホーキンスが言う。 「言ったとおりだ」 簡潔にそう返すカインにも苦渋の選択だったようだ。少しだけ、声に迷いが見え隠れしている。 「をずっと守ってきた機体だもんな」 呟くホーキンスにカインは応えない。 そのまま踵を返して自身のデスクの上に山積みの書類に手を伸ばす。 ホーキンスも立ち上がり、書類の元へと向かった。 |
桜風
09.8.24
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