Like a fairy tale 115





エザリアたちがプラントに帰ってきてから数日経った。

の元に国防委員長から連絡が入る。

「了解しました」

はそう返して通信を切った。

ごろり、と部屋のベッドに寝転んだが何だか落ち着かない。

部屋を出て隊長室へと向かった。



突然のの来訪に驚いた。

「どうした?」

「んーん」と言ってイザークのベッドに腰掛ける。

怪訝に思いながらのその行動を見守っているとブーツを脱いでごろりと寝た。

「おいコラ...」

イザークが窘める。

だが、はそれに応えずそのまま寝ていた。

規則正しい寝息を立てるに嘆息してイザークは立ち上がった。

自分にはいつも上着を脱げと言うくせに、と思いながらもの赤い上着を脱がせてそのまま彼女に掛ける。

まったく、相変わらず何を考えているのやら...

の顔にかかる髪を梳いてやり、イザークは仕事を再開した。



暫くしてディアッカがやって来た。

イザークの後方の赤い塊に驚く。

...?」

そう言いながらベッドの中のを覗き込もうとしたらイザークに止められた。

「何で止めるんだよ。減るもんじゃないだろ?」

「減る。だから覗くな」

イザークがそう言って止めるものだからディアッカは笑った。

「どうしたの、

「さあ、な。突然やって来て寝たんだ」

「何も言わずに?」

ディアッカの言葉にイザークは不満いっぱいの表情で頷いた。

「どうしたんだろうな」

「たぶん、これだろうがな」

そう言って端末に届いたスケジュールを見せた。

「何、これ?」

「ザフトの戦争の象徴になってしまったからな。のたっての願いだったんだ」

イザークも寂しそうに呟いた。

そのスケジュールには“ノルンの破壊”というものがあった。

最初が部屋に来た理由が分からなかったが、このスケジュールが送られてきてやっと理解した。

何故、此処に来たのか。

たぶん、独りになりたくなかったのだろう。

そして、ノルンとのお別れの時間はきっとドックのメカニックが減る夜に取るつもりなのだろう。

本来なら、そういうことは咎めるべきだろうが、そういう気になれない。

「俺は本当にに甘いな」

「今更だな」とディアッカは笑った。



がイザークのベッドで寝て3時間近く経った頃、イザークの後方で人の気配が動く。

「起きたか」

イザークが声を掛けながら振り返るとは手櫛で髪を梳いていた。

の足元には起きた拍子にぐしゃぐしゃになった上着があった。

イザークは溜息交じりに立ち上がり、その制服を手にとって軽く皺を伸ばす。

、起きろ」

まだ覚醒していないの顔を覗きこむ。

は目の前にあるイザークに軽くキスをした。

まだ寝ぼけているようだ...

イザークは、小さく溜息を吐く。

起きていたら絶対に..とは言いきれないが、基本的にこんなことはしない。

「とりあえず、これを着ろ」

そう言って持っていたの赤い軍服を渡して立ち上がる。

コーヒーを飲ませて起こすことにした。


コーヒーの香りが部屋に立ち込めてくるとの頭も段々覚醒してくる。

制服の上着に袖を通して立ち上がり、ベルトも締めてベッドの端に腰掛けた。

「どれくらい寝てた?」

「3時間くらいだな」

の問いにコーヒーを持ってきたイザークが応えた。

「そっか、」と呟いてはそれを受け取る。

「ありがと」

「どーいたしまして」と投げやりに言いながらイザークはコーヒーを口にした。

「スケジュールが来たぞ」とイザークは言う。

何のことか一瞬分からなかったが、は納得して頷いた。

「もう、お別れなんだ...」

イザークはデスクにコーヒーカップを置いての隣に座った。

「まだ、間に合うかもしれないぞ」

の肩を抱き寄せてイザークが言う。

「やだよ。もう、決めたもん」

俯いてそう言うにイザークは苦笑した。

「そうだな」

「...いつも我侭言ってごめんね」

ポツリと呟かれたの言葉にイザークは目を丸くして、やがて噴出した。

「何よ」

不満そうにが言う。

「何だか素直なは気持ち悪いな」

イザークの言葉には頬を膨らませてそっぽを向いた。

「どうせですよー」と小さく呟くの額にイザークは唇を寄せた。

はくすぐったそうに肩を竦める。

そして、すっくと立ち上がった。

「もう行くね。ありがと」

そう一言言い置いては部屋を後にした。



はドックに向かう。

最初に思ったよりも早く足を向けてしまった。

なるべく近づかないようにしていたドックが懐かしく思えてくる。

ノルンのハッチを開けて中に入った。

数日触っていなかっただけなのに、物凄く懐かしい。

OSを立ち上げる。

もうそれの中身を弄る必要がない。

「ノルン、勝手に決めて。ごめんね」

ノルンに何も声を掛けずに破壊を決めた。

勿論、この機体にそういう判断能力は備わっていない。そこまで改造はしていない。というか、プログラムも作れない。

ノルンで夜を明かすことも少なくなかったのではこっそりと毛布を仕込んでいた。

戦闘時に邪魔にならなかったらそれでいい。ノルンのコックピットにの許可を得ずに入る人物は居なかったから誰にも咎められることはなかった。

はこっそり持ち込んでいた毛布に包まった。

OSは落とさずにそのまま眠る。

シートは結局替えてもらえなかった。まあ、自分が言わなかったのが悪いのだが...

硬い、と思いながらもやはり座り慣れたそれに居心地のよさも感じてしまう。

次第に瞼が下がってきた。

さっきイザークの部屋で寝たのに、と思いながらもは自分の脳の欲求に従って眠ることにした。


数時間後、はイザークによってコックピットから引きずり出されることになる。

「ベッドで寝ろ!」と言われながら。









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桜風
09.8.24


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