Like a fairy tale 116





ノルンの破壊の日程が決まった2日後、アスランが上がってきた。

メイリンとミーアも一緒だ。

メイリンもアスラン同様、オーブに降りると決めたらしい。

ミーアは、丁度時間が取れるから、とホーキンス家へと向かった。レイも一緒だ。

ホーキンスが調べたところによると、やはりミーアの家族、親族は全員謎の失踪を遂げていたと言う。


メイリンは実家に帰って家族と話をするため、アスランもプラントに留まることになっていた。

その話を聞いたのは国防委員長からの通信で、その日イザークとディアッカ、そしてに一時下艦許可がおりた。

旧交を温めて来いとかそういうつもりなのかもしれない。

ディアッカはすぐにラスティとニコルにも連絡を入れた。

アスランを引きずって本部を後にした。




「かんぱーい!」とディアッカが仕切る。

「あれ、飲まないの?」

ラスティがのグラスを覗き込みながら言った。アイスティのようだ。

「今、5時間の休暇中。と言うわけで、それ以内にボルテールに戻らないといけないから。流石にお酒の匂いをさせて戻るわけにはいかないでしょ?」

苦笑してが応える。

「そっか」と納得したラスティは自分のドリンクを口にした。車で来ているため、彼もノンアルコールだ。

「けど、お前らよく時間取れたな」

ディアッカが嬉しそうに言った。

2人とも忙しいと言うのは聞いているし、想像もできる。

ノルンの事があって、仕事も量を少し減らしていたというのも聞いていた。だから、今はそれを埋めるように忙しいのではないかと思っていたのだ。

「まあ、無理を言って空けてもらいました」

ニコルが苦笑する。

彼もアルコールが入っていないドリンクだ。

それに気づいたが「もしかしてこの後仕事?」と聞いてみる。

「ええ。だから余り長くは居られないんです」

申し訳なさそうにニコルが言った。


それからは、『アルコールが入っていないのに何でこんなに大騒ぎなんだ?』と言う勢いで皆は楽しんでいた。

イザークはその様子を呆れながら見て、は楽しそうに眺める。

まあ、大騒ぎをしているのはディアッカとラスティなのだが、彼らだけで6人分騒いでいるようだ。

、」と声を掛けてきたのはニコルだった。

「何?」と返すと

「ジュール邸に戻りたかったんじゃないですか?5時間あれば少しくらいノルンちゃんと一緒に居られたでしょ?」

は苦笑した。

「ううん。今帰ってもすぐに本部に戻らないといけないし。また大泣きされちゃうから」

ステーションでのノルンを思い出してニコルも「そうかもしれませんね」と苦笑した。


「...シルバーレイ、明後日破壊するから」

ぽつりとが言った。

前後でそんな話をしていたわけではないのだが、本当に唐突にが呟く。

陽気に笑っていたラスティもそれが耳に入った途端、黙り込んだ。

「...機密事項」

眉間に皺を寄せたイザークが呟く。

一応、極秘という扱いになっている。

それを阻止するザフト兵が出てくるかもしれないから。それだけ、あの機体はザフトにとって大きな意味を持つものだ。

「けど、テレビ中継されるんでしょう?全世界に向けて」

「...どういうこと?」

ラスティが返す。

「あの子の、最後の仕事」

「やはり、破壊するのか?OSをリセットしただけではダメなのか?」

アスランが問う。

「...ダメよ。それだけだったら休めない。私も、あの子も。もう二度と戦争がないように、って政治家が動いているのは知ってる。けど、前の戦争が終わったときもそうやって動いていたのよ、政治家は」

ね?とイザークに向かって同意を求める。「...まあ、な」とイザークは返した。

「それでも、また戦争が起きた。いつ起こるかわからないのよ、あれは。いつでも、戦争が出来るようにってノルンを残しておきたくない。あの子は、ザフトの象徴になってしまった。だから、居なくなって初めて平和のために力になれるの。もう、そんなところにまでいっちゃったのよ、あの子は」

自嘲気味にそういう。

「...明後日、ね。絶対、その中継見てノルンを見送るから」

ラスティが言う。

「僕も、ちゃんと見ますから。ノルンとが居なかったら、僕たちは此処に居ませんでしたし」

ニコルが微笑んだ。

「ありがと」とは呟く。

そんなを見てイザークは溜息を吐いた。



「ミーアさんのご家族は、どうでした?」

アスランが居ると言うことはきっとミーアも戻ってきている。

そう思ってニコルが聞いた。

は首を振る。

「そう、ですか...」

「ホーキンス隊長情報だから、きっと間違いないと思う。今日は、ホーキンス一家大集合みたいよ。隊長の妹さんもいらっしゃるんだって」

「つか、あの人って何者!?」

ディアッカが不思議がる。

非常識と言いかねないくらいの物凄い情報網の広さだ。

「前に話しただろうか」とイザークが言う。

「や、けどさ。それでも、あれって凄くない?」

「...“サイレントガンナー”って聞いたことある?」

が言う。

「ああ、何か本当に有るんだかないんだか知らないけど、奇襲部隊のトップの名前だよな。名前って言うか、あだ名?コードネーム?」

「20年位前のザフトにはシルバーレイとサイレントガンナーがいました。サイレントガンナーはシルバーレイの部隊の任務の下準備をし、そしてシルバーレイが表立って動き、英雄として担ぎ上げられました」

物語を語るようにが言う。

「しかし、サイレントガンナーは全て裏方。目立つことをしていないため、彼の活躍は闇に葬られ、光が当たっていたシルバーレイだけが褒賞を貰い続けていました。シルバーレイは家名も、腕もあったのでザフトとしては担ぎ上げるには丁度良かったのです。
方や、サイレントガンナーは家名があるわけでも、両親に力がある訳でもなく。少し年の離れた妹を抱えている一介の青年でした。
それを見かねた彼の親友はザフト軍を辞めて、国防委員となります。彼を正当に評価できるようにしたくて」

の話の登場人物に名前を当てはめることが出来る。

皆はそう思った。

「裏方仕事だったため、情報が命。そのため、彼はその網をどんどん広げて行き、今では大抵の情報が手に入るまでになりました。
国防委員長になった親友が気を利かせて表舞台に立たせたのですが、本人は逆にそういうのが苦手でした。なので、大きな戦闘があったときに彼は再びサイレントガンナーに戻り、勲章を貰ったのは部下でした」

つまり、シルバーレイがカイン・

国防委員会になった親友が、パトリック・ザラ。

部下がきっとハイネ・ヴェステンフルス。

そして、サイレントガンナーはヴァン・ホーキンスだ。

「前に暇だから、て本人から聞いた話。褒章貰ってないけど、給料は上げてもらったって言ってた。自分はそれで十分だったって。
あと、アスランのお父さんがあの手腕を持ちながら国防委員長になるのが少し遅かったのは、私の母の死の知らせをお父様に届けるように、と主張して当時の国防委員長の反感を買ったからだって。笑いながら『意外と友情に篤いだろ?』って言ってた」

「知らなかった」とアスランは呟いた。









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桜風
09.8.24


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