Like a fairy tale 120





「ただいま」と玄関を開ければ廊下を駆けてくる音が聞こえる。

多いな、と思って家の中に入るとまずはフレイが走ってきてに抱きつき、その後方でミーアが頭を下げ、一番小さくて歩幅が短いノルンが一生懸命駆けてきた。

「ママ!」

「ただいま」とフレイが離れたはノルンを抱き上げる。

「もうおしごとおわったの?」

「終わったよ。ずっと一緒に居られるよ」

ノルンは嬉しそうにの首にぎゅっと抱きついた。

の後方にはニコルとラスティが立っていた。


エザリアが奥から出てきてを労う。

彼女を送り届けてくれた2人にも時間があるなら食事でも、と誘った。

2人は残念ながら仕事があるといって食事は辞退する。

ただ、お茶だけでもと誘われてそれには頷いた。

さん、昨日は本当にお疲れ様でした」

エザリアの言葉には深く頭を下げる。

話を聞くとどうやらフレイはすぐにこちらに移ってきたようだ。

カナーバ家へとも思ったらしいが、エザリアの勧めもあったしと思い出して訪ねると歓迎された。

ミーアについては最初からホーキンスがエザリアに頼んできたという。

ハロとノルンはお友達になっているのでノルンは喜ぶし、全く構わないということでこのジュール邸で生活をしている。

そんな話をしている間中ずっとノルンはの膝の上から動かなかった。

ハロが周りを飛び跳ねてもノルンはの方が良いようで、少しは心が揺れていたようだが、結局ハロとは遊ばなかった。

「イザークっていつ帰ってくるの?」

ラスティが聞くと「わかんない」とが返す。

その言葉に彼は苦笑した。

「愛する夫の帰宅が待ち遠しくないのかねぇ」

その言葉には笑う。

「いずれは帰って来るんだし。でも、条約締結するまではきっと無理だろうとも思うけど」

「そうかもしれませんね」とニコルが同意した。

やはり、今回も中々帰って来れそうにないだろう。

「パパはまだおしごと?」

話が少し難しいと思うノルンはとりあえず、此処にない人物について聞いた。

「うん、まだお仕事」

が応えると残念そうに俯いていた。



翌日、の本家へと向かった。

ノルンが一緒に行きたいと駄々を捏ねたため、ノルンと一緒だ。

「甘やかしすぎは、良くないわよ?」

エザリアに釘を刺されては頷いた。

確かに、その通りだ。


に着くとすぐに先代、の祖父の下へと案内された。

ノルンは直接彼に会うのは初めてだ。

正しくは、生まれて間もない、記憶のないときには何度か顔を合わせているのだが。

部屋に入って除隊の報告をした。

「頑張ったな」と祖父の大きな手が頭を撫でる。

それだけで何だかは泣きそうになった。

俯くと下からノルンが心配そうに見上げてきている。

「ママ、どこかいたいの?」

は微笑んで緩く首を振る。

「痛くないよ。心配してくれてありがとう」

ノルンの頭を撫でる。彼女は嬉しそうに微笑んでが撫でた頭に手を置いてはにかんでいた。

「そっくりだな」

が振り返る。

「お前の幼い頃、そっくりだ」

「イザークにも言われました」

の言葉に祖父が声を上げて笑う。

ノルンはそれに驚いて目を丸くしていた。

そんな表情を見せる曾孫が可愛くて頭を撫でる。

曽祖父の大きな手て撫でられてノルンは目をぱちくりとしていた。

「可愛いなぁ」

「お祖父様、頑張ればノルンの子供も見れるかもしれませんよ」

最近は随分元気になったという話も耳にしている。

「頑張ってみるか」

「期待しています」

そんな会話をして2人は笑った。母が楽しそうなのでノルンも嬉しくて笑う。

が帰ってきて嬉しいな?」

ノルンに声を掛けるとノルンは勢いよく頷いた。

「そういえば、人見知りするって聞いていたのに。お祖父様、泣かれませんね」

「人徳だ」と言って祖父は嬉しそうに笑った。


祖父とそのまま話をしているとドアがノックされた。

ノルンはの後ろに隠れる。

入ってきたのはジョンだった。

は椅子から立ち上がり頭を下げる。

「お久しぶりです、ジョンお兄様」

ノルンはとジョンを交互に見遣って首を傾げていた。

「ああ、」と短く返してジョンが祖父を見る。

「お呼びだと伺いました」

その言葉に祖父は深く溜息を吐いて

「お前が継げ」

そう短く言った。

現在、の権力は再び先代に戻っているとエザリアから聞いた。

とにかく、あの当主はダメだという判断に依ったらしい。

何せ、カインたちの暗躍を評議会に密告しに行こうとしたそうだ。

そのため、当主だったの伯父は監禁されたという。

だから、今の祖父の言葉は父の代わりにお前がの当主になれ、ということだ。

流石にそれは唐突で、ジョンもすぐに声が出なかった。

「最初は、の子にでも、と思ったがな。お前も中々どうして。まあ、合格だ」

「ノルン、を思っておられたのですか?」

「いいや。どうせもう1人2人生まれるだろう?」

何故...?!

はそう思った。

顔に出たらしく、祖父が声を上げて笑う。

その理由は結局教えてはもらえなかった。



での話を終えてはノルンを連れて墓地へと向かう。

「ここどこ?」

墓石がいっぱいに並んでいるその風景をノルンは初めて見る。

「お墓だよ」

はノルンの手を引いて端の方まで歩いた。

「“おはか”ってなぁに?」

「大切な人が死んじゃったら、こうやって眠る場所を作るの」

「だれかしんじゃったの?」

「私の、お母さん。あとで、イザークのお父さんのお墓も行こうね?」

よくは分からないがノルンは頷いた。

花を供えて膝をついて胸に手を当てる。

ノルンは見よう見まねでがしたように胸に手を当ててぎゅっと目を瞑っていた。時折を見ては、まだだと思ってまた目を瞑る。

1年間の出来事を母に報告をした。それが終わって立ち上がる。

「ノルン、行こう」

が手を伸ばし、ノルンがその手を握る。

次はマティウス市に戻ってイザークの父、ヴィンセント・ジュールの眠る墓地へと向かった。









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桜風
09.9.7


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