| 「、貴様ぁーーー!」 食堂に大きな声が響く。周囲の人間がその声に注目した。 名前を叫ばれた当の本人は全く気にせずに食事を続けている。 「何故、俺に声を掛けない!」 何のことか分かっては取り敢えず口に含んでいる食糧を飲み込んでイザークを見上げた。 「じゃあ、聞くけど。私がイザークと一緒に着任するようにってどこかに書いてあったかしら?任命書に何か書いてあった?ザフトの規律にそう書いてある?私にはそんな注意書きが見えなかったのでひとりで来ました」 そう言って食事を再開する。 イザークの隣に居るディアッカが天を仰ぐ。火に油を注ぐな... 因みに、の目の前には昨日共に着任したニコルとアスランの姿がある。 「じゃあ、こいつらは何だ?!」 ニコルたちを指差してイザークが問い詰めるが、 「偶然出会ったの。ていうか、別に私が誰と一緒に此処に来ても良いでしょ?あと、食事中にすぐ傍で怒鳴るの辞めてね。ご飯がまずくなるから」 と静かに言われた。 「おい、イザーク。少し静かにしたら...」 無駄だろうなー、と思いながらディアッカが声を掛けると「やかましい!」ととばっちりを受けた。 ラスティはちゃっかり自分のトレイを持っての隣に座る。 イザークはそれが益々気に入らないようで、ラスティを睨んでいた。 「、声を掛けてくれたら良かったのに。だったら、オレも昨日着任したのになー」 イザークが言いたかった事をラスティはさらりと言う。 さらに腹立たしい。 お前も火に油注ぐな... ディアッカは溜息を吐きながら心の中でラスティに訴える。 「でも、ほら。当分ご家族と会えないでしょう?だったらゆっくりしたほうがいいと思って声を掛けなかったの」 はラスティに向かってそう言い、イザークを見上げる。 だから、イザークにも声を掛けなかったのだと言うかのように。 イザークはふん、と鼻を鳴らして自身の昼食を取りに配膳場所へと向かった。 は自身の昼食は済んでしまったが、此処でいなくなったらまたしてもイザークが騒がしくなりそうなので、自由時間をここで過ごすことにした。 「けど、イザークには先に行くって言っても良かったんじゃないか?」 もぐもぐと口を動かしながらラスティが言う。 「...じゃあ、自分も行こう、とか言いそうじゃない?」 「言うな。言うよなー。、愛されちゃってますから」 からかうようにいうラスティを軽く睨んで 「それが、嫌だったの。ウチは戦場に行くのにしんみりとか全く無縁だから、そこらに買い物に行く感覚で『じゃあ、いってきます』で済むけど。他の家は中々そうは行かないでしょう?」 確かに、とニコルは自分が出発する際の母の表情を思い出す。 「まあ、そう言うこと」 そう言って締めると背後から 「いやぁ、ラブラブですなぁ...」 と声を掛けられては顔を歪める。 ミゲルだ。 「此処空いてる?」とラスティの隣に座る。 「いやぁ、早速の痴話喧嘩。ごちそうさまです」 ミゲルの言葉には眉を顰めた。 「どこが、痴話喧嘩ですか」 「いや、だって。ほら、婚約者同士の喧嘩だろう?痴話喧嘩と言わずして何と言う?」 ラスティは何でこのミゲルがとイザークが婚約者同士ってのをしってるのか不思議に思ったが、に向かって手を合わせているニコルを見て、彼が情報源だというコトに気付く。 「なあ、。午後は射撃だろ?」 ミゲルがそう聞く。 トレイを持って戻ってきたイザークとディアッカが不思議そうにこの光景を見ながらそれぞれ座る。 「まあ、その予定です」 の返答に 「んじゃ、対戦してみない?」 とミゲルが持ちかける。 「対戦、ですか?」 「そ。やっぱりさ。カイン・の子と勝負してみたいわけよ、オレは」 「そういう、ミーハーな勝負の吹っかけ方、やめてくれませんか?」 が面倒くさそうに言うと 「んじゃ。今晩の晩飯のデザートを賭けて。どうよ?オレは手加減しないけど。も手加減無しで。な?」 「射撃の訓練プログラムにあまり時間を掛けるつもりはないんですけど...」 「お?もしかしていい勝負する気?いいねぇ、いいよ。よし、決定な?」 そう言って昼食のトレイの中身を空にしていく。 ラスティは面白そうだと思ってニヤリと笑い、ニコルとアスランは止めたほうが良いのではないだろうかと少し悩む。 イザークはこの話はどういった流れでこうなったのだろうとか考えながらフォークを口に運び、ディアッカは何だか妙な事になっているなと溜息を吐いた。 「ねえ、これやっぱりさ。全部食べたら太るよね」 その日の夕食時。はテーブルの上を見て呟く。 ミゲルに便乗してに勝負を吹っかけた先輩たち全員から頂いたデザートだ。 「お前、結構酷いよな...」 の射撃の腕前を知っているディアッカが呆れたようにいうが 「勝負を吹っかけてきたのは向こうだし、正当報酬だと思うなぁ」 とは応える。 が、正当報酬もこれだけ集まればただの罰ゲームに思えてきた。 「、明日はMSのシュミレーションで勝負だ。そうだよな、オレたちパイロットだし。うん、そうだ。MSで勝ってこそだもんな」 ミゲルがそう言ってめげずに勝負を吹っかける。 は「少し待ってください」と言って立ち上がり、食堂の献立表を見てきて「明後日が良いです」と応えた。 「何で?」 ミゲルが不服そうに言う。 「明日のデザートはあまり好きなものではないので」 とさらりと言うにきょとんとした後「ははは」と声を上げて笑う。 「お前、生意気だな」 「ありがとうございます」 多分褒められていないのにはお礼を言ってにこりと微笑んだ。 「益々気に入った」 ミゲルはそう言ってまた笑う。 そんなとミゲルの様子がちょっとだけ面白くないイザークはふん、と鼻を鳴らした。 |
桜風
08.2.4
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