| 実戦演習開始時刻が近づいた。 「いいなー、」 ドックに来たラスティが呟く。 「いいでしょー」 は笑いながら応える。 「ま、じっくり見てやるからな」 この演習はモニタに映し出されるらしい。 ミゲルに促されてとイザークはジンに乗り込んだ。 戦闘を許可された宙域まで出る。 「ま、実弾が無いし。死ぬことはないから安心しろよ」 ミゲルの通信が入ってくる。 「これって、ペイント弾なんですよね?」 が確認すると 「そー。オレ、ちゃんと説明したよなぁ?」 と少し恨みがましく言われた。 「聞いてたけど、確認です」 はそう言って通信を切った。 「大丈夫か?」 今度はイザークか。 「大丈夫。心配ご無用!」 親指を立てて笑顔を浮かべるの言葉にイザークは微笑み、 「分かった」 と返して通信を切った。 の従兄のジョン・は自身の機体にパーソナルカラーを用いることを許可されている。 パーソナルカラーはイエローらしい。暗い宇宙では非常に目立つ。 「派手好き...」 従兄の機体を見てはそう呟いた。 照明弾が上がり、それが開戦の合図だ。 「税金が...」 そう呟きながらは展開する。 黄色の機体が自分に向けて銃弾を放った。 はそれを盾で防ごうとしたが、その弾が何か違うと感じて盾を置いて避けた。 紙一重で避けたそれが当たった盾は大破した。つまり 「ミゲル!何が実弾は使わない、よ!!アレ、当たったら普通に死ぬでしょう!?」 がミゲルに訴えると 「違う!アイツがルール違反なんだよ」 ミゲルの訴えが返ってくる。 動きで分かったのか、ジョンはを執拗に追いかける。 「ねえ、あの機体壊していいのかしら?」 「あ、いや...」 ミゲルが答えあぐねていると 「自業自得だ。やれ!」 イザークが割って入りそう言った。 「だよね」と言ってはジョンの機体に向かって翔ける。 ジョンがビームサーベルを取り出した。 「えー!!」と叫びつつも旋回をしながらはジョン機のカメラをまず狙い撃った。 頭部についているカメラにのペイント弾が命中し、取り敢えず彼の機体の視界は塞ぐことができた。 その隙には機体に近づき、その肩に至近距離でペイント弾を打ち込む。 右アームは動きが鈍くなった。 それでもジョンはサーベルを振り回し、のジンを墜とそうと躍起になっている。 仕方ない、と溜息を吐き、はそのサーベルを持つ手を掴んで握り、回路を断った。 危ないのでサーベルも奪い取る。 今度はセンサーでの位置を把握しているのかライフルで撃ってくる。 は今しがたジョンから奪ったサーベルで頭部を破壊した。これでセンサーも利かなくなる。 そう思って安心したら今度は辺り、敵味方関係なくライフルを向け始めた。 は溜息を吐き、そのままサーベルでジョンの機体の四肢を落とした。 これで、戦う術を持たなくなったジョンはこの実戦演習が終わるまで宇宙にただ浮かんでいた。 結局、演習はクルーゼ隊の勝利に終わった。 「あー、一族の恥ってこういうことを言うのね...」 そう呟きながらは帰港した。 MSから降りる。 自身の機体から降ろされたジョンが睨みつけていたが、はそれを無視して自身の隊舎に向かっていた。 「!」 誰かが叫んだ。 それはのことかジョンのことかは不明だが、は振り返った。 その視界の端に黒く光るものを認める。 はしゃがんで傍に落ちていたレンチを拾い、ジョンに向かって投げた 「お前が邪魔なんだよー!!」 ジョンは傍にいた誰かから奪ったらしい拳銃の引き金を引くために人差し指に力を入れたが、の投げたレンチが銃を打つ。 あらぬ方向へ銃弾が飛んでいった。 銃もジョンの手から落ちる。 駆けて間合いを詰めていたはそれを拾ってジョンの胸に足を当てて彼を仰向けに倒し、そのまま体も乗せて銃口を彼の眉間に当てた。 「いい加減にしろ。そんなに殺してほしいのなら、今すぐ殺してやろう」 が低く静かに言う。 引き金に宛てている人差し指に力が入る。 少し、引き金が引かれた。 ジョンは恐怖に顔を引き攣らせている。 「バンッ!」 は大きな声でそう言った。 は立ち上がり傍にいたラコーニ隊の誰かに拳銃を返した。 気を失っているジョン・を見下ろして溜息を吐く。 「では、失礼します」 はラコーニ隊に挨拶をして少し離れたところから見守っていた仲間の元に駆けて行った。 「な、な...あれって」 ミゲルが呟く。 「何だ。ニコルから聞いていたんじゃないのか、俺たちのアカデミー時代の話」 イザークが言うと皆の視線が集まる。 「パイロットクラス全員でバトルロイヤルをして、最後に残ったのはだ。MS戦も得意だったが、白兵戦の方が向いているかもしれないな」 イザークの言葉に、皆が駆け寄ってくるを見る。 「...何?」 首を傾げて言うにイザーク以外の3人はブルブルと首を振る。 その日の午後に予定されていたとのデザートを賭けてのナイフ戦はキャンセルが相次ぎ、それ以降、が配属されて以来続いていたデザートを賭けての勝負は二度と行われることがなくなった。 そして、誰もが再びあの黄色い機体を見ることはなかった。 |
桜風
08.2.12
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