Like a fairy tale 27





「なあ、さんや」

ラスティの言いたいことは分かっている。だからは返事をしない。

それを気にすることなく

「どんどん下に向かってますぜ」

ラスティが現状を口にする。

「仕方ないじゃない。上はMS戦が始まってるみたいだし。それに、こんなに深く地下に繋がっているのよ。何かあるんじゃないの?有るわよ、きっと」

が勘だけで話をしている。

ラスティは項垂れた。

そろそろ血が足りなくなっているんだけど...

ボーっとする頭と何だか感じる寒気に自身の命の危機を覚えた。

本当に先ほどの言葉が遺言になるのではないだろうか?



暫く歩いて大きな扉が立ちはだかる。

2人はヘルメットのマスクを閉めた。

「益々怪しげな...」

が呟きながらロックに向かう。

「パスワード知ってんの?」

「知るわけ無いでしょ?情報収集出来てないって言ったでしょ!」

そう返しながら端末を操作する。案の定パスワードの入力の必要がある。

「何にするの?運命の女神様に委ねる?オレらの命運」

ラスティが面倒くさそうに声を掛けてくる。

ふと、の頭に浮かんだ単語がある。

“norn”

ピーという音がしてその重々しい扉が開いた。

「何?どうしたの?」

「運命の女神にしてみたの」

以前イザークが口にした北欧神話の運命の女神の名前。“ノルン”。それを入力してみたら開いてしまった。

適当に偶々イザークの趣味のディープな話をちゃんと聞いていたときに出た単語だっただけなのに。

帰れたらイザークに「ありがとう」を言おう...

はそんな事を思ってそのまま周囲に注意を向けながらその部屋に入った。


真っ暗で何も見えない。

暗視スコープ、持って来ればよかったなーと思いながら

「ラスティ、電気つけるから」

と声を掛けて照明を入れた。

そこには白銀色に輝くMSがあった。まだ開発途中のものらしい。

だが、

「隊長の話だと5機、だったよね?」

が確認すると

「5機だったと思う。でも、これって6機目だろう?」

ラスティも情報を思い出しながらも口にした。

「貰っちゃおうか」

が言う。これ以外の脱出方法は無さそうだ。

「動くと良いけど」

ラスティが応える。

ラスティを照明の当たらない影においては目の前にあるMSへと向かった。

コックピットに乗り込む。

OSを立ち上げてみた。

またパスワードだ。

うーん、と悩みながらも“ノルン”の話を聞いたときのイザークの言葉を辿ってみる。もしかしたらヒントがあるかも知れない。

「婚約者の話はちゃんと聞いとくものだな...」

反省しつつも何とか細い記憶の糸を辿る。

たしか、3姉妹だった。過去と現在と未来を司っていて...

だったら、過去ではないだろう。何となく、勘。

自分だったら、どれにするだろう?

少し悩んで入力した。

“skuld”

“スクルド”。未来を司る女神の名前だ。

計器類、全てが作動を始めて起動する。

MSの作りとしては今まで乗った機体とさほど変わらない。

ラスティを置いている傍まで歩いて行き、コックピットのハッチを開ける。

ラスティを回収して上方のゲートを全て開放してモルゲンレーテから脱出した。


脱出した先はコロニーの中だった。

何故か空いている穴からコロニーを後にしては急いで艦に戻った。

着艦前に医療班にラスティの負傷を知らせていたためドックまで彼らが来ていた。

情報のなかった機体に皆は驚き、特にメカニックたちは興味を示す。

「私もまだよくわからないけど、ちょっと見てくれる?」

近くに居たメカニックに頼んでは一度パイロットの控え室に向かった。


控え室のソファにドカッと座る。

「もう帰って来ないかと思ってたぜ?」

ディアッカが軽い口調で言った。

「やめて。お父様の老後の面倒見ないといけないんだから」

の返事にディアッカが声を上げて笑う。

「お前、真顔でそれはないだろう」

イザークも半眼になって言葉を口にする。

「あっつー...」と言いながらパイロットスーツの前を寛がせるとヘルメットが飛んできては慌ててそれを受け止めた。

危うくおでこにたんこぶが出来るところだった。

「イザーク!」

そのヘルメットを投げた人物を睨むと向こうの方がもっと睨んでいてはたじろぐ。

「ちゃんと前をあわせておけ!」

「はあ?!」

が反論しかけると

「下着が、見えます」

とニコルが助言をくれた。

ちょっと考えては静々と前をあわせる。

そういえば、アンダーシャツは脱いでたんだ...

「大変の見苦しいものをお見せしました」

にこりと笑うと

「サービス精神旺盛だと感心してたんだけど」

とディアッカが言えばイザークの鉄拳を頭に食らう。



は取り敢えず不便なため、更衣室へと向かう。

アンダーシャツは着ておこう。

部屋を出る前に「あ、」と思い出す。

「イザーク」

に呼ばれて振り向くと

「ありがとう、助かったわ」

と一言だけ言われた。

それについて何の解説もないままは控え室から出て行く。

「お前、何してあげたの?」

声を掛けられてイザークは首を傾げた。

全く何も身に覚えがない...









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桜風
08.2.15


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