Like a fairy tale 30





隊長室の前でと別れたアスランはトボトボと艦内を歩く。

先ほどからの言葉が頭から離れない。

彼女は間違ったことを言っていない。

しかし、理解は出来るが、簡単に納得できるものでもない。


気がつくと、アスランは医務室の前に立っていた。

ラスティとミゲルの事が気にかかっていた。

ブザーを押せばミゲルの声で返事がある。

ドアを開けて中に入ると誰の姿も見えない。

ベッドの傍に行くとラスティが寝ており、その傍にミゲルが居た。

「おー、アスラン」

ラスティが負傷していないほうの手を軽く挙げる。

アスランは傍にあった椅子を引き寄せてミゲルの隣に座った。

「どうだ?」

ラスティに声を掛ける。

「んー、この通り。でも、のお陰で帰って来れた。は?」

「ああ、えーと。隊長室の前で別れたから...」

歯切れ悪くアスランが答える。

「アレじゃね?持って帰った変なMSが気になってドック行ったんだろう?」

ミゲルが言うと

「あー、そうかもな。あの変なの何だろうな?隊長からの情報もなかったし。コックピットのつくりはジンとかとそんな変わらなかったけどな」

ラスティが応える。

そんな2人の和やかな会話がアスランにはどうにも居心地が悪かった。


「そういや、アスラン」

俯いていると声を掛けられて慌てて顔を上げる。

「何だ、ラスティ」

「ごめんな」

謝られた。

「な、何がだ?」

思いもよらない謝罪に逆にどうしていいか分からない。

「ほら、オレって“これ”だろう?」

“これ”とは、今の負傷してベッドに寝ている状態を示しているのだろう。

「だから、戦線離脱しないといけないんだ。まだ今は作戦中だから本国に帰れそうにないけど、やっぱりこの艦で治療して回復ってのは無理っぽいんだ。ホント、ごめんな?」

少し悔しそうに顔を歪めた。

「オレが、あのとき撃たれたからアスランは機体を奪取するのに少し苦労しただろうし。その機体、今は地球軍が持ってるんだろう?だから、オレがミスったせいで皆大変になるのかなーって。
...オロールとマシューは地球軍に撃たれたって、さっきミゲルから聞いた。特にアスランって責任感ってのが強いから迷惑掛けちゃうなーって思ってさ。さっきも気になって、命令が出ていないのにあの“機体の捕獲若しくは破壊”の作戦に出たんだろう?」

「ちッ...!」

ラスティの言葉に「違う」と叫びそうになった。

先ほどの作戦に強引に参加したのは、あの機体にキラ・ヤマトという自身の親友が乗っている可能性があったから。

彼と話をして、辞めさせたいと思ったから。

それは、全て自分のためだった。

そのせいで、ミゲルがこうして負傷している。ラスティの言ったように、仲間が死んだ。

にそれを指摘されたとき、鈍器で頭を殴られたような感覚に陥った。

それくらいまっすぐで間違いのない指摘だった。

「...オレの方こそ、すまない」

アスランは深く頭を下げる。

ラスティとミゲルは不思議そうにお互いの顔を見合わせた。

「何でアスランが謝ってるんだ?」

ミゲルが聞くが、それに答えずアスランは立ち上がった。

「あとで、また来る」

ラスティにそう言い置いて医務室を後にした。


自室に戻りながらもの言葉がまたしても自分を責める。

『あの機体が地球軍にあることで、私たちはとてつもない不利な状況に置かれるかもしれない。その時、貴方は何を選ぶの?』

きっと遠くない未来にそんな選択を迫られるときがあるだろう。

そのとき、自分は選べるのだろうか?

「クソッ!」

どうしようもなく苛立ちを覚えた。









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桜風
08.2.22


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