Like a fairy tale 35






港からエレベーターでコロニー内へと向かう中、テレビのニュースが流れていた。

ユニウスセブン追悼記念式典を前に、クライン議長の声明の発表の様子だ。

...あ、ラクス・クライン。

実は、あのイザークが彼女のファンだと知ったときにはからかって良いものか本気で悩んだことを思い出す。

ディアッカに相談しようか、それとも、ここはラスティに爆弾を投下してもらうべきか。

結局、誰にも言えないまま、今このニュースを眺めている。

「その時代を、今我々は守らねばならん」

ニュースを見ていたため、クルーゼの話を聞いていなかった。

何か返事をしなければならないことかと思ってアスランを見ると思い詰めた表情をしている。

きっと、自分に話を振られたわけではないのだろうと判じてはニュースの続きを見ていた。



評議会での査問会が始まった。

は、やはり自身の機体の説明をするように言われ、同席することになった。

クルーゼから今回のヘリオポリスの崩壊の経緯の説明がなされる。

そして、パトリックから今回のMSの性能、価値についての質問があり、それをアスランに説明させる事が了承された。

アスランの説明後、が自身の機体について報告をする。

評議委員はざわめく。

元々穏健派と急進派が混在するこの議会の中で意見が綺麗に纏まることなどありえない。まして、今回の報告に関しては急進派のパトリックが前以て打ち合わせをしているのだ。

そちらの意見が強くなるように仕向けられている。

因みに、エザリア・ジュールは急進派だ。

意見のぶつかり合うその議会の様子をは少し困惑しながら眺めていた。

その後、パトリックの演説に、穏健派は意見を出すことが出来ず、急進派の意見によりこの査問会は幕を閉じた。



アスランとはドアの外で議員たちを見送るため、先に議場を後にしようとした。

さん!」

声を掛けられてが顔を向けると満面の笑みのエザリアがいた。アスランは先に議場を後にする。

「お久しぶりです、エザリア様」

改めて敬礼を向けると

「やめてちょうだい、そんな他人行儀」

と言っての手にそっと触れる。

「失礼しました」

と手を下ろせば、「ほら、また他人行儀」と指摘されてどうしていいか分からない。

「この後、予定は?」

「いえ、特にありません」

「お父様と連絡は取っているの?」

「いいえ、まだ。恐らく、私がプラントに居る事も知らないと思います。誰かから聞いていなければ、の話ですが」

の答えにエザリアが嬉しそうにポン、と手を叩く。

「では、今日は我が家に遊びにいらっしゃい。イザークが居ないのは残念だけれど...」

「いえ、あの...」

が困っているとパトリックと一緒に居たクルーゼが

。もう、この後は予定がない。休暇だと思って構わないぞ。君には少しプラントに滞在してあの機体の解析とプログラムの移植作業を行ってもらう。
我々は、あの新造艦とMSを撃ちに72時間後に出港することになる。ラコーニとポルトの隊が新に私の指揮下に入る。
なお、君の機体の整備などのスケジュールは本部が管理することになる。いいな?」

と声を掛けてきた。

「は!」と返事をして敬礼をする。

そんなクルーゼの言葉に目を輝かせたのはではなく、エザリア。

「では、このあとお買い物もしましょう?」

その提案には思わず「え!?」と声を上げてしまう。

「ダメかしら?私、娘と一緒にショッピングをするのが夢だったの...」

などと言いながらしゅんとされては、了承しないわけにもいかず、

「い、いいえ。喜んでご一緒させていただきます」

諦めに近い心境でそう返事をした。


エザリアの用事が済むのを待って評議会を後にする。

「さて、どうしましょう?」

に聞いているわけではないが、エザリアがそう呟く。

取り敢えず、シャトルでマティウス市へと向かうこととなった。

その理由が、エザリアの顔なじみのショップが多いから。

「これも任務」と思って今回のショッピングに付き合ってみたものの、終わったときにははヘトヘトで、逆にツヤツヤしているエザリアに尊敬の念を送った。

そして、夕飯はエザリアに言われたとおりジュール邸でいただく事になった。

勿論、泊まりはその時点で決定だった。家に連絡を入れたほうが良いかとも思ったが、今日帰れないのだからまあ、良いかと思って気にしないこととする。

食事が済んだあと、本日購入したエザリアの好みの服を着せ替え人形の如く、は何着も着ることになる。

「着任前のパーティには私も出席したかったわ。とても素敵なドレスを着ていたとイザークから聞いて評議会どころではなかったと心から思ったもの」

何が“素敵なドレス”だ。自分が選んだものだろう。自画自賛!?というか、褒めたのってドレスだけ??

今此処に居ない婚約者に、心の中で色々と毒づきながら笑顔でエザリアと話を続ける。

その後、夜が更けても攻勢を弱めないエザリアを見かねた家の者が彼女を止めては何とか解放された。

シャワーを浴びてゲストルームに案内される。

実家の比ではないその規模に呆れながらも、大きなベッドにダイブした。

ヴェサリウスのベッドとは違って柔らかくて気持ちがいい。

「イザークの、匂いがする」

はそう呟き、まどろみの中へと落ちていった。









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桜風
08.3.3


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