Like a fairy tale 37





軍本部のメカニックと打ち合わせをし、先日地球軍から奪取してきたMSのプログラムの移植を行うことにした。

はどれがいい?」

より取り見取りだ、と思いながら全機のプログラムを確認する。

と、言ってもノルンが受け付けられるものとそうでないものもある。

が選んだ上でメカニックと調整し、プログラムを構築していくという流れになる。その中で移植できるものかどうかというのがわかるのだろう、というのはパイロットとメカニック両者の一致した見解だ。

が選んだ数種のプログラムをひとつずつ組み込んでいく作業が始まった。



昼の食堂へ向かう途中、は声を掛けられて振り向くとまたしてもホーキンスの姿があった。

「ホーキンス隊長」

「おー、奇遇だな」

そう言いながらに並んで食堂へと向かう。

「明日は外で食わないか?おじさんが奢るぞ?というか、今日の昼飯も奢ってやるよ」

ホーキンスはそう言って笑う。

「いいえ、悪いですよ」

が断ったら

「此処で断るほうが悪いぞ」

と言われてどうしていいか分からず、今回はご馳走になることにした。

「ホーキンス隊長は、今は本部付ですか?」

が問うと

「そ。まー、何ていうか。プラントの守備隊だから、ウチは」

と言う。

「性に合わないんだけどな、パトリックが煩くて」と小声で付け加えられた。

昨日のパトリック・ザラの話が本当なら、確かに大人しくどこかに留まっているのは性に合っていないだろうと何となく納得した。

「そういえば、国防委員長とは同期か何かなんですか?」

昨日のパトリックの話で気になっていた。

「ん?パトリック?同期だな。カインも。あいつとカインはアカデミーでトップ争いしてて、そりゃもう、熾烈だったよ。一方的にパトリックが。それを止めていたのが、オレ。いやぁ、若かったな」

何だかそれぞれの主張が多少食い違っているなと思う。

「ま、オレたちの代では“”は本物だったからな。血筋も確かに関係あるけど、それ以上に教育も影響していると思うぞ。もの凄く厳しい親父さんだったから」

ホーキンスの話には目を丸くする。

「祖父もご存知だったのですか?」

「んー、まあな。あの人に育てられてアイツの兄貴が碌なのじゃない..ってこれ秘密な?まあ、尊敬できる人物でないのは何故だろう?と思うくらいだったし。ま、あの家も色々あったみたいだしな」

何を指しているのかは納得したが、それについては口に出すつもりは無かった。


食堂で流れているニュースを見ては手を止めた。

今朝は早くにジュール邸を後にしたのでニュースを見る時間が無かった。

「何だ、知らなかったのか?」

ホーキンスに聞かれて頷く。

「今朝からずっとこのニュースだ」

ホーキンスが“このニュース”と言ったのは、ラクス・クラインの行方不明というものについてだ。

ユニウスセブンの式典の先遣隊としてシルバーウィンドという船でユニウスセブン跡に向かったきり消息を絶っているという。

「ま、此処だけの話」

ホーキンスはそう言ってひとつ言葉を区切り、

「捜索に向かった複座型のジンが帰ってきていないらしい。何か、面倒くさいことに巻き込まれたのかもしれないな」

の耳元で話をする。

「それって、重要機密事項では?」

「そ。隊長クラスにしか報告されていない。隊長クラスでもさらに選別されているだろうけどな。パトリックから聞いた」

「国防委員長に?」

ホーキンスは頷く。

「たぶん、クルーゼ隊が捜索に出るんじゃないのか?」

ホーキンスの言葉に多少は驚いたが、良く考えればアスランはラクスの婚約者で、それはプラント中が知っていることだ。

ここでアスランがのほほんと休暇を満喫していたら世間がきっと黙っていない。

何せ、ラクス・クラインはプラント中のアイドルだ。

「アスランも大変だ」

が呟くとホーキンスは噴出した。

「軍内部だけの話で言うと、お前たちもそれなりに有名だぞ?」

がぎょっとしてホーキンスを見る。

「まあ、言っても一般兵にはそうでもないが。高官には、な。“”の娘と急進派の“ジュール”の息子だから」

苦笑いを浮かべてホーキンスが言う。

の溜息にホーキンスは笑いながら彼女の肩をポンと叩いた。


昼休憩が終わって只管その地味な作業をしていった。

メカニックのチーフにクルーゼ隊の出航を見送りたいと申し出ていたので、その日の作業はちょっと早めに切り上げられた。

「そのまま実家には帰るのか?」

チーフメカニックに声を掛けられては首を振った。

実家から本部は少し遠い。

「オイオイ、次はいつ帰れるか分からないんだぞ。作業開始時刻を少し遅めにしてやるよ。こっちも今日の作業の周知を整備班全員に行って、打ち合わせとかしておきたいから」

そう言って実家に帰ることを強く勧められては大人しく実家に帰ることにした。

明日、此処に来てみて通うのが大変そうなら、本部内の寮にでも入らせてもらおう。

そんなことを思いながらヴェサリウスが停泊してる軍港へと向かった。









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桜風
08.3.10


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